68 / 184
証言
しおりを挟む
娼館に送られたはずの少女がなぜここに?
勇一郎は平静を装ったまま一子への質問を続け、一時間が過ぎた。少女はまだ、同じ場所を彷徨いていた。目的地を目指す人のように、少女は必死に歩き続けている。痩せ細った体で。
「あの子、体が良くないんじゃ」
初めて気づいたように、勇一郎が一子に言う。
「栄養不足なのですわ。何も口にしないのですから」
「医者に」
「診せられません。本人が望まないので」
「しかし」
「心の病なのです。どうかそっとしておいて下さいませ」
望みを叶えたいのは山々であるが、そうもいかぬ。
「あの子、清水女学校の生徒ですよね」
一子の目が、微かに吊り上がった。
「なぜそんなことを……。
いえ、私は存じ上げません。
彼女は門の前に行き倒れていたので、保護致しましたが、以前のことは一切話しません」
「あの子と話をさせてもらえないでしょうか。
駄目だと仰りたい気持ちはわかります。しかし、ある事件にあの子が関わっている可能性があるんです。
加害者じゃありません。被害者として捜しているんです。娼館に売られたのではないかと」
一子に反論の余地を与えず、喋り続ける。
薄く口を開いては閉じを一子は繰り返し、勇一郎が黙った時には、真剣な表情で考えこんでいた。
「彼女を警察へ?」
「いいえ、あの状態でこの場所から連れ出したなら、大変なことになるだろうとは予想できます。
ただ、犯人とされている人物に罪があるかどうかを、証言してもらえるなら。と」
「私が彼女に質問してまいります。それでよろしくて?」
二人は同時に頷いた。
「なんと問えば」
「百合子さんをご存知ですか? と」
一子は立ち上がり、険しい表情で二人を見ると、問うて参ります。と、低い声で言い残し、部屋を出た。
残されて、二人は動かずに顔だけを外に向け、一子と少女のやり取りを見ていた。
一子が近づくと、少女は動きを止めた。焦点の定まらぬ目だが、一子の方に向けた。三秒ほどして一子が口を開くと、途端に少女は目を見開き、大きく口を開けた。
知っています。と、言ったように見えた。
二人の間に言葉が交わされた後、覚束ぬ足取りで、こちらに向かって来る。
隼人の胸は騒いでいた。少女は何を言うのだろう。
勇一郎は平静を装ったまま一子への質問を続け、一時間が過ぎた。少女はまだ、同じ場所を彷徨いていた。目的地を目指す人のように、少女は必死に歩き続けている。痩せ細った体で。
「あの子、体が良くないんじゃ」
初めて気づいたように、勇一郎が一子に言う。
「栄養不足なのですわ。何も口にしないのですから」
「医者に」
「診せられません。本人が望まないので」
「しかし」
「心の病なのです。どうかそっとしておいて下さいませ」
望みを叶えたいのは山々であるが、そうもいかぬ。
「あの子、清水女学校の生徒ですよね」
一子の目が、微かに吊り上がった。
「なぜそんなことを……。
いえ、私は存じ上げません。
彼女は門の前に行き倒れていたので、保護致しましたが、以前のことは一切話しません」
「あの子と話をさせてもらえないでしょうか。
駄目だと仰りたい気持ちはわかります。しかし、ある事件にあの子が関わっている可能性があるんです。
加害者じゃありません。被害者として捜しているんです。娼館に売られたのではないかと」
一子に反論の余地を与えず、喋り続ける。
薄く口を開いては閉じを一子は繰り返し、勇一郎が黙った時には、真剣な表情で考えこんでいた。
「彼女を警察へ?」
「いいえ、あの状態でこの場所から連れ出したなら、大変なことになるだろうとは予想できます。
ただ、犯人とされている人物に罪があるかどうかを、証言してもらえるなら。と」
「私が彼女に質問してまいります。それでよろしくて?」
二人は同時に頷いた。
「なんと問えば」
「百合子さんをご存知ですか? と」
一子は立ち上がり、険しい表情で二人を見ると、問うて参ります。と、低い声で言い残し、部屋を出た。
残されて、二人は動かずに顔だけを外に向け、一子と少女のやり取りを見ていた。
一子が近づくと、少女は動きを止めた。焦点の定まらぬ目だが、一子の方に向けた。三秒ほどして一子が口を開くと、途端に少女は目を見開き、大きく口を開けた。
知っています。と、言ったように見えた。
二人の間に言葉が交わされた後、覚束ぬ足取りで、こちらに向かって来る。
隼人の胸は騒いでいた。少女は何を言うのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる