84 / 152
復讐
しおりを挟む
「それから何度か訪ねたのだけど、一度も会ってはくれなかった」
山上が言い辛そうに口を開いた。
「彼女は、君が好きだったのじゃないのかな」
「もしそうだとしたなら、どうして断る?」
「お前が、触れないと言ったからだろう」
勇一郎らしからぬ、気弱気な声だった。
「この穢れた体……八田百合子もそう考えていたのかもしれない。
お前が、彼女の為を思った言葉が、八田百合子には、穢れた体に触れたくないとの、拒絶に聞こえたのかも……」
なぜか、隼人よりも圭が先に、勇一郎の言葉に反応した。
「私は、百合子さんに対してひどいことをしてしまったのですね」
「圭君」
「婚約者って嘘を吐いたことか? 圭ちゃんは知らなかったんだから、仕方ないだろう」
「でも……」
「それが罪だと言うなら、麻上君はもう、罰を受けただろう」
山上がきっぱりと断言した。
「どういう意味ですか?」
「清水女学校から四人の少女が攫われた。犯行を八田百合子が認めた。にも拘わらず、被害者と思われた少女のひとりは、百合子を命の恩人だと言う。
八田百合子に攫われた少女達と麻上君。違いは何か」
「八田百合子から見て、三人の少女は不幸だった。自らと同じく苦しむ少女を救うために、彼女は攫ってあげたのだろう。
しかし君は、幸せな人間だった。美しく、優しい婚約者までいる。しかもその婚約者は、自分が思っている相手であった」
「だから私を、あんな所に送り込んだのだと?」
「理由はそれだけではあるまいよ。
八田百合子は、他人である男達に乗っ取られ、誇りを失った八田伯爵家を滅ぼしてしまいたかったのだろう。当の男達と共に。
その為には、小さからぬ醜聞が必要だ。令嬢が女学生を娼館に送ったとなれば、伯爵家はお終いだろう」
「でも、こうなると百合子さんが犯した罪とは何なのでしょう」
「君ねぇ、俺が気付いて乗り込んで行ったから被害に遭わずに済んだけど、本物の客が来ていたらどうなったと思っているんだ!
少なくとも彼女は、君がどんな目に遭っても構わないと思っていたことは間違いないのだから、甘いことを考えるのではないよ」
山上が言い辛そうに口を開いた。
「彼女は、君が好きだったのじゃないのかな」
「もしそうだとしたなら、どうして断る?」
「お前が、触れないと言ったからだろう」
勇一郎らしからぬ、気弱気な声だった。
「この穢れた体……八田百合子もそう考えていたのかもしれない。
お前が、彼女の為を思った言葉が、八田百合子には、穢れた体に触れたくないとの、拒絶に聞こえたのかも……」
なぜか、隼人よりも圭が先に、勇一郎の言葉に反応した。
「私は、百合子さんに対してひどいことをしてしまったのですね」
「圭君」
「婚約者って嘘を吐いたことか? 圭ちゃんは知らなかったんだから、仕方ないだろう」
「でも……」
「それが罪だと言うなら、麻上君はもう、罰を受けただろう」
山上がきっぱりと断言した。
「どういう意味ですか?」
「清水女学校から四人の少女が攫われた。犯行を八田百合子が認めた。にも拘わらず、被害者と思われた少女のひとりは、百合子を命の恩人だと言う。
八田百合子に攫われた少女達と麻上君。違いは何か」
「八田百合子から見て、三人の少女は不幸だった。自らと同じく苦しむ少女を救うために、彼女は攫ってあげたのだろう。
しかし君は、幸せな人間だった。美しく、優しい婚約者までいる。しかもその婚約者は、自分が思っている相手であった」
「だから私を、あんな所に送り込んだのだと?」
「理由はそれだけではあるまいよ。
八田百合子は、他人である男達に乗っ取られ、誇りを失った八田伯爵家を滅ぼしてしまいたかったのだろう。当の男達と共に。
その為には、小さからぬ醜聞が必要だ。令嬢が女学生を娼館に送ったとなれば、伯爵家はお終いだろう」
「でも、こうなると百合子さんが犯した罪とは何なのでしょう」
「君ねぇ、俺が気付いて乗り込んで行ったから被害に遭わずに済んだけど、本物の客が来ていたらどうなったと思っているんだ!
少なくとも彼女は、君がどんな目に遭っても構わないと思っていたことは間違いないのだから、甘いことを考えるのではないよ」
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる