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潔白
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「勝司さんの潔白を証明する為にも、正直に話さないわけにはいきません。
高子さんは、息子を可愛がってくれる反面、憎んでもいたようです。あの子が生まれた為に、高子さんは跡取りではなくなりましたから。
高子さんはとても、模範的な少女でした。お勉強も頑張りましたし、お料理やお裁縫、ピアノや日舞の習い事にも一生懸命で、お行儀も良く、人に気遣いもできる、本当に良い子だったのです。富山男爵家の跡取り娘として、世間に恥ずかしくないようにと、自分に完璧を強いていたのです。
それなのに、弟が生まれた途端、彼女は自由に生きる園子さんと立場が同じになりました。それが許せなかったようです。
自分の頑張りを認めなかった父親への復讐として、運転手や庭師、屋敷に出入りしている人を見境なく誘ったようです」
自慢の娘が、ふしだらな女になる。これ以上の復讐はあるまい。
「誘いに乗った人は皆、富山の怒りに触れて、屋敷から出されました。
それは仕方がありませんわ。富山は元々、使用人も大事にしていましたから、二重に裏切られたのですもの。
今、富山は抜け殻のような状態です。高子さんを失って、使用人に裏切られて……。
私達、富山には内緒で参りましたの。園子さんを放っておくこともできませんし、かといって、どうすればよいのかわかりません。
富山は、もう、これ以上娘を失いたくない一心なのですわ。
でも、園子さんなのに高子さんとして生きるのが、園子さんにとって良いことだとは思えません。罪があるなら、それ相応の罰を受けてから、もう一度やり直すべきだと思うのです。
園子さんもそう考えて、私に手紙を見せてくれたのです。
どうかお願いです。富山と園子さんを、助けて下さい」
二人が帰った後、続いた緊張を緩めるため、甘い物を食べていた。甘い物が好きな隼人は常に、日持ちのする羊羹を切らさない。
近所の菓子屋の絶品羊羹を齧りながら、渋いお茶を啜ると、やっと深呼吸できた気持ちがした。
「今日は緊張の一日だな。
圭ちゃんも元帥閣下のお屋敷で、気が張っただろう?」
「忘れてました」
圭が少々呑気な声を出した。
「結婚披露宴ですが、長瀬さんと中里さんも招待して下さることになりました」
「やった! ありがとうな、圭ちゃん」
高子さんは、息子を可愛がってくれる反面、憎んでもいたようです。あの子が生まれた為に、高子さんは跡取りではなくなりましたから。
高子さんはとても、模範的な少女でした。お勉強も頑張りましたし、お料理やお裁縫、ピアノや日舞の習い事にも一生懸命で、お行儀も良く、人に気遣いもできる、本当に良い子だったのです。富山男爵家の跡取り娘として、世間に恥ずかしくないようにと、自分に完璧を強いていたのです。
それなのに、弟が生まれた途端、彼女は自由に生きる園子さんと立場が同じになりました。それが許せなかったようです。
自分の頑張りを認めなかった父親への復讐として、運転手や庭師、屋敷に出入りしている人を見境なく誘ったようです」
自慢の娘が、ふしだらな女になる。これ以上の復讐はあるまい。
「誘いに乗った人は皆、富山の怒りに触れて、屋敷から出されました。
それは仕方がありませんわ。富山は元々、使用人も大事にしていましたから、二重に裏切られたのですもの。
今、富山は抜け殻のような状態です。高子さんを失って、使用人に裏切られて……。
私達、富山には内緒で参りましたの。園子さんを放っておくこともできませんし、かといって、どうすればよいのかわかりません。
富山は、もう、これ以上娘を失いたくない一心なのですわ。
でも、園子さんなのに高子さんとして生きるのが、園子さんにとって良いことだとは思えません。罪があるなら、それ相応の罰を受けてから、もう一度やり直すべきだと思うのです。
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どうかお願いです。富山と園子さんを、助けて下さい」
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