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毒
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「どうしたのですか?」
自宅に戻って、我慢をしていたらしい圭が手巾を外して、やや緊張の面持ちで隼人に向かった。いつもならお茶を用意するのであるが、今の隼人にはそれだけの余裕がなかった。
「舌が痺れたんだ」
「痺れた?」
「あぁ。珈琲以外の苦みも感じた。
なんと言えば良いのだろう。いつまでも苦みが残り、痺れが伴う……」
「毒? いえ、まさか」
「まさかとは思うが……。
しかし、根付の件を考えると、全く違うとは思いかねる。垣崎さんは根付を圭君の物だと、睦月会で公言していたそうだからね。
睦月会の中には、君や俺を知っている人間がいるのだろう」
「垣崎さんが私を陥れようとしたいたとは思えませんが」
「婚約破棄、実家の破産が重なって、精神的に不安定になっていたのだろう。だから、原因となった君にも腹が立ち、新たな仲間になった睦月会の人達に話したのだというようなことを言っていた。
もちろん、睦月会の人が君を知らないこと前提で口にしたに違いない。
どう考えれば良いのだろう。根付を落としていった人間が君を知っているとしたなら、当然、悪意が存在し、君を犯人に仕立て上げようとしたということになる。
今日、わざわざ俺達を敷地内に招いておきながら、人っ子ひとり姿を見せず、しかし、垣崎さんに珈琲寒天を持って来させた。こちらにも悪意を感じる。そうだろう?」
如月会を訪れたのは日曜日で、子供は学校が休みで、大人もやはりほとんどが休みであったらしく、人の姿は多く見られた。
洗濯や掃除、庭仕事などをしながら、良く晴れた日、太陽の光を体中に浴びている様子だった。
しかし、睦月会にはそういう様子がなかった。平日で、子供は学校に、大人は仕事や勉強に出ていたとしても、人気がなさ過ぎた。
少なくとも責任者である田中某はいたはずだし、学校に上がらぬ子供もいるはずだから、二人があの場所にいた間、息をひそめていたのだろう。
なぜ姿を見せなかったのか、なぜ、珈琲寒天を食べさせようとしたのか。
「あの寒天、調べてもらうことはできませんか?」
「そうだな。大森さんに頼むのは、やめておいた方がいいか。何が入っているかを確認してからでないと。
勇一のつてを頼もう」
「中里さんの?」
「あいつの交際範囲は広いからな。毒物の専門家もいるって言ってた」
自宅に戻って、我慢をしていたらしい圭が手巾を外して、やや緊張の面持ちで隼人に向かった。いつもならお茶を用意するのであるが、今の隼人にはそれだけの余裕がなかった。
「舌が痺れたんだ」
「痺れた?」
「あぁ。珈琲以外の苦みも感じた。
なんと言えば良いのだろう。いつまでも苦みが残り、痺れが伴う……」
「毒? いえ、まさか」
「まさかとは思うが……。
しかし、根付の件を考えると、全く違うとは思いかねる。垣崎さんは根付を圭君の物だと、睦月会で公言していたそうだからね。
睦月会の中には、君や俺を知っている人間がいるのだろう」
「垣崎さんが私を陥れようとしたいたとは思えませんが」
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もちろん、睦月会の人が君を知らないこと前提で口にしたに違いない。
どう考えれば良いのだろう。根付を落としていった人間が君を知っているとしたなら、当然、悪意が存在し、君を犯人に仕立て上げようとしたということになる。
今日、わざわざ俺達を敷地内に招いておきながら、人っ子ひとり姿を見せず、しかし、垣崎さんに珈琲寒天を持って来させた。こちらにも悪意を感じる。そうだろう?」
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洗濯や掃除、庭仕事などをしながら、良く晴れた日、太陽の光を体中に浴びている様子だった。
しかし、睦月会にはそういう様子がなかった。平日で、子供は学校に、大人は仕事や勉強に出ていたとしても、人気がなさ過ぎた。
少なくとも責任者である田中某はいたはずだし、学校に上がらぬ子供もいるはずだから、二人があの場所にいた間、息をひそめていたのだろう。
なぜ姿を見せなかったのか、なぜ、珈琲寒天を食べさせようとしたのか。
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