長瀬萬請負 其の二 祈れる乙女達

岡倉弘毅

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毒 二

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 「もし何かおかしな物が出てきたら、どこで手に入れたかを話さなければならなくなる。できればその前に、睦月会の人間と話をしたい。

 あぁいった組織に、疑いを持ちたくはないのだけれど……」

 頭の隅には、百合子の項垂れた姿があった。いいや。と、頭を振る。そんなはずはない、考えすぎだ。と。

「とりあえず、父に聞きたいことがあるから、実家に行こうと思う。一緒に行こう」



 父、紀夫はまだ戻っていなかったが、母、正子は大歓迎してくれた。高林家の事件が解決してすぐ、圭を紹介したのだが、孫が増えた気持ちらしい。

 中学に戻ることを紀夫と共に勧めてくれたのだが、圭は頑なに拒絶し、隼人が家庭教師をすることで一応の解決を見せたのだが……。

「ちゃんと勉強を見てあげているのでしょうね」

 五人の孫、女学校一年の幸子、中学一年の幸一、小学校四年の美希、二年生の真希、二歳の沙希と共に座って、おやつの時間を楽しんでいた。

 いや、楽しんでいるのは五人だけで、隼人も圭も、コック手作りのスイートポテトを美味しく頂いてはいたが、気持ちは落ち着かない。

「毎日、教えて頂いてます。私の為に時間を使わせてしまって、申し訳ないくらいで」

「いいのいいの。圭君は隼人の仕事を手伝ってくれているのだから」

 長瀬夫人。というよりは、女将さん。といった風な正子は、人見知りな圭でも、すぐに親しめるようになった。隼人の前では背伸びしようとするけれど、正子の前では圭も、子供らしい様子を見せることが多い。

 父、母と呼んでいるが実の関係は伯父とその配偶者である。紀夫の妹である隼人の母親、織江おりえが英国人男性と恋に落ち、隼人を身篭った。

 英国に帰る際、求婚されたが断り、妊娠を隠したまま別れたのだが、正子は織江を実の妹のように可愛がり、隼人を、自分の息子達の弟として育ててくれた。

 十二歳の時に織江は病で他界したが、隼人の心配をする必要もなく、安らかな眠りに就けただろうと考える。

 実の母親以上に孝行をしなければならない相手なのではあるが……。

 「珍しいな、お前がこんな時間に戻って来るなんて」

 背広を脱ぎながら、戻って来たばかりの紀夫が隣に座った。

「元気そうだね」

 圭に視線を向けると、にこやかに笑いかける。圭も、素直にはい、と返すと、笑顔を向けた。
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