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東都日報 二
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「どうしたもこうしたも、大臣閣下の呆れた所業を今日、新聞で読んだものだから」
「あぁ、あの記事……母さんあんな新聞読んでるの?」
例の三流新聞、東都日報である。
圭がいない間に数日分と今日付けの新聞三紙に目を通したが、大臣の醜聞を報じたのは東都日報一紙だけであった。
大臣の醜聞とは、地井文部大臣が最近起こしたと言われる、二歳の女の子への猥褻事件であった。
「読みますよ。お上品ぶった新聞より、東都日報の方が面白いですからね」
正子らしいと言えば、らしい。
地井と言えば、家族を大事にする男の代表とも言うべき人物で、婦人からの人気が特に高い。
事件の詳細はこうである。
四日前、地井は友人の経営する宿にお忍びで泊まっていたらしい。
昔の宿屋で、鍵の無い、襖だけで出入りできる、大臣閣下が泊まるには警備上問題の多い宿ではあるが、学生時代から何度となく利用しており、いわゆる庶民の姿を見ることのできる場として、地井は年に三四度一人で泊まりに行っていたそうだ。
その日、父親の還暦を祝う為に、六人家族が泊まっていた。
夜八時頃、二歳の娘がいなくなり、探していたところ、大臣が自室に連れ込み、裸にしているのを見つけたのだとか。
「正子さん、あの記事は少々おかしいと、俺は思うけど」
食堂の扉が開くと同時に、勇一郎の声がした。実家に行く。との置手紙を見て、来たのだろう。
「あら、中里さん、いらっしゃい。まぁ、山上さんまで」
正子の声が一転、弾んだ。
「山上さん、私のお友達のお嬢さんとお見合いをする気はありません? とても可愛らしいお嬢さんなの」
山上は困った顔をしたが、勇一郎が気を利かせたのかどうなのか、顔の前で手をヒラヒラと動かした。
「あら、もしかして、とうとう」
「あと二年、待ってやってくれないかな? 英和は秘密主義だから」
「心を動かすお嬢さんが出現したのね。残念だけど、諦めましょう」
「ここにも独身男がいるけど」
山上が勇一郎を指さす。
「失礼だけど、お嬢さんの好みに合っているとは言いかねるわ」
ごめんなさいね。と、正子は嫌味なく言うと、勇一郎は、納得とばかりに笑っている。
「そうそう、話の腰を折ってごめんなさいあの記事のどこがおかしいのかしら?」
勝手に座り、珈琲を一口啜ると、肩を竦めた。
「あぁ、あの記事……母さんあんな新聞読んでるの?」
例の三流新聞、東都日報である。
圭がいない間に数日分と今日付けの新聞三紙に目を通したが、大臣の醜聞を報じたのは東都日報一紙だけであった。
大臣の醜聞とは、地井文部大臣が最近起こしたと言われる、二歳の女の子への猥褻事件であった。
「読みますよ。お上品ぶった新聞より、東都日報の方が面白いですからね」
正子らしいと言えば、らしい。
地井と言えば、家族を大事にする男の代表とも言うべき人物で、婦人からの人気が特に高い。
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四日前、地井は友人の経営する宿にお忍びで泊まっていたらしい。
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その日、父親の還暦を祝う為に、六人家族が泊まっていた。
夜八時頃、二歳の娘がいなくなり、探していたところ、大臣が自室に連れ込み、裸にしているのを見つけたのだとか。
「正子さん、あの記事は少々おかしいと、俺は思うけど」
食堂の扉が開くと同時に、勇一郎の声がした。実家に行く。との置手紙を見て、来たのだろう。
「あら、中里さん、いらっしゃい。まぁ、山上さんまで」
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「あら、もしかして、とうとう」
「あと二年、待ってやってくれないかな? 英和は秘密主義だから」
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「ここにも独身男がいるけど」
山上が勇一郎を指さす。
「失礼だけど、お嬢さんの好みに合っているとは言いかねるわ」
ごめんなさいね。と、正子は嫌味なく言うと、勇一郎は、納得とばかりに笑っている。
「そうそう、話の腰を折ってごめんなさいあの記事のどこがおかしいのかしら?」
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