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事件
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「疑問は満載だよ。一家六人。父親の還暦祝いってことは、最低でも大人は二人いる。
大人と子供が何人ずついたかは書いてなかったけど、おそらく、還暦の父親、母親、三十代から四十代の娘か息子の夫婦、子供二人。ってのが一番ありそうな組み合わせだろうな。
だとしたら、まだ、眠るには早い夜八時。二歳の子供から目を離すなんざ不自然だ。それがまず一つ。
次に、記事に、子供の泣き声が聞こえたなどとは書かれていなかった。だったらどうして大臣の部屋に、娘がいるとわかったのか。
もう一つ。 宿屋の親父が、以前にも同じようなことがあったと証言しているらしいが、俺ならそんな危険な奴、二度と宿に泊めたりしない。
大臣の権力を振りかざしても、逆に、お前のやったことばらしてやるって言えば、相手も黙るだろうし。
どうしてこんな三流紙が、この事件を嗅ぎ付けたのか。上の人間はおそらく、ことがはっきりするまでは世間に知られぬよう、口止めしていただろう」
「あら、では、事件自体はあったと?」
「事件はあった。今日の夕刊で、一斉に他の新聞も報じたからね」
「大臣の弁によると、襖を叩く音がしたから開けたら、裸の子供が入って来た。
慌てて傍にあった自分の手拭いを肩に掛けてやったら、突然襖が開いて、入って来た男に殴られたって。
つまり、襖は閉まっていたってことだ。中に子供がいるかどうかわからないのに、どうして連中は乗り込んだ?」
「大臣が嘘を吐いているのかも」
「嘘を吐くなら、襖を開けたままにしておいた方が良い。
疚しい気持ちが無いから、襖を閉じてたと言えたんだろうと、俺は思う」
成る程。と思った。
「なんかおかしいんだよな。
つい一週間前にも、やっぱり婦人に人気のある、逓信大臣の女絡みの醜聞を、東都日報がすっぱ抜いてたよな。警察内部に入り込んでるんかな?」
最近は、上流階級のネタを探すために、女中として婦人記者を送り込む新聞社もあるという。あるいは、金を握らせて、使用人に秘密を喋らせることも。
東都日報は、婦人を大事にする職場だと聞く。婦人を悪く書くこともない。それなのに、婦人に人気の大臣の醜聞は、一番に書いている。
いや、だからこそ、婦人の期待を裏切った男が許せないのかもしれない。
(如月会や睦月会と、どこか通じるものがあるな)
大人と子供が何人ずついたかは書いてなかったけど、おそらく、還暦の父親、母親、三十代から四十代の娘か息子の夫婦、子供二人。ってのが一番ありそうな組み合わせだろうな。
だとしたら、まだ、眠るには早い夜八時。二歳の子供から目を離すなんざ不自然だ。それがまず一つ。
次に、記事に、子供の泣き声が聞こえたなどとは書かれていなかった。だったらどうして大臣の部屋に、娘がいるとわかったのか。
もう一つ。 宿屋の親父が、以前にも同じようなことがあったと証言しているらしいが、俺ならそんな危険な奴、二度と宿に泊めたりしない。
大臣の権力を振りかざしても、逆に、お前のやったことばらしてやるって言えば、相手も黙るだろうし。
どうしてこんな三流紙が、この事件を嗅ぎ付けたのか。上の人間はおそらく、ことがはっきりするまでは世間に知られぬよう、口止めしていただろう」
「あら、では、事件自体はあったと?」
「事件はあった。今日の夕刊で、一斉に他の新聞も報じたからね」
「大臣の弁によると、襖を叩く音がしたから開けたら、裸の子供が入って来た。
慌てて傍にあった自分の手拭いを肩に掛けてやったら、突然襖が開いて、入って来た男に殴られたって。
つまり、襖は閉まっていたってことだ。中に子供がいるかどうかわからないのに、どうして連中は乗り込んだ?」
「大臣が嘘を吐いているのかも」
「嘘を吐くなら、襖を開けたままにしておいた方が良い。
疚しい気持ちが無いから、襖を閉じてたと言えたんだろうと、俺は思う」
成る程。と思った。
「なんかおかしいんだよな。
つい一週間前にも、やっぱり婦人に人気のある、逓信大臣の女絡みの醜聞を、東都日報がすっぱ抜いてたよな。警察内部に入り込んでるんかな?」
最近は、上流階級のネタを探すために、女中として婦人記者を送り込む新聞社もあるという。あるいは、金を握らせて、使用人に秘密を喋らせることも。
東都日報は、婦人を大事にする職場だと聞く。婦人を悪く書くこともない。それなのに、婦人に人気の大臣の醜聞は、一番に書いている。
いや、だからこそ、婦人の期待を裏切った男が許せないのかもしれない。
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