長瀬萬請負 其の二 祈れる乙女達

岡倉弘毅

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少年 二

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 「そろそろデセールの出番ですわ」

 東子が踵を返した。

 圭は周りを見渡す。

 隼人は事件のことは忘れて。と言ったが、忘れられるはずがない。

 しかし、隼人の気持ちを無下にするわけにもいかず、パーティーを楽しむ振りで、トミの周りを気にしていた。

 トミの傍に本日の主役東子がいる。その左側に安原元帥、右側に新郎。少し離れて親戚らしい夫婦が数組、男は皆、軍服を身に着けている。

 その後ろに陸軍幼年学校や海軍兵学校の制服の少年達。聞くところによると、東子の二人の弟と、五人の従兄弟、その親しい友人らしい。

 二十人近くいるが、三四人に分かれてお喋りをしている。

 ひとりだけ皆と離れた場所にいる。従兄弟のひとりと思われる。

 彷徨きながら人の会話に耳を澄ませていたら、海軍兵学校の生徒である東子の従兄弟は、成績優秀運動神経良しの優等生だが、協調性に欠ける性格の為、常に離れてひとり行動していると聞こえた。

 軍人としては致命的な性格だと思わないでもないのだが……。

 陸軍に比べて華やかな制服の海軍。細身の白い制服は着ている者をさらにスマートに見せる。

 にしても。と、圭は思う。その人物に制服は少々大きいように思えた。

 まだ成長するからと大きめに制服を作ることはあるが、元帥が出席するようなパーティーであれば、一時的に手を入れて体に合わせるのではないかと思われる。 

 圭の方からは顔は見えない。

 その人物の視線を辿ると……隼人の姿が見えた。
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