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罪人 二
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「ただ、この子の親友の家が、富山男爵と競って負け、破産しましたので、その点に関しては、心に蟠りがありましたのと、育夫と手を組んだことが許せなかった為に、仕返しをしてやろうとの気持ちになりました。
良人は、正体を隠して娼館の使用人として働きながら、ある男の戸籍を買い取り、清水女学校の用務員として勤めを始めました。
学年が変わるのを期に百合子を転校させ、富山男爵の愛娘、園子に近付いたのです。同じ学習院に高子がおりましたが、警備が厳しいですからね。
清水女学校はお堅いですが、華族は園子ひとりでしたから。
百合子は、同じ境遇の少女がいることに気付き、三人の少女を女学校から良人にさらわせました。
その際、良人は娼館でその子達を利用しようとしたらしいですが、私が隠しているお金の在処を教えないと脅すことでどうにか、睦月会の近くの内科医院の前に捨ててくるよう承諾させました。
浅ましいことに三回とも、同じ会話が繰り返されたのです」
叔母様。と、泣き止んだらしい百合子が顔を上げた。
「続きは私が」
「百合子……」
「もう、隠し事は無しに致しましょう。私も覚悟の上で行動したのですもの、自分だけで罪を負うなど許しませんわ」
真っ赤になった目をハンカチで押さえながら、百合子は体を起こした。背筋を伸ばして手を膝の上に置く。
「私、物心ついた頃から、祖父にも父にも愛情を与えられた記憶が一切ございませんの。
代わりのように祖母から、母から、叔母様からは溢れんばかりの愛情で包まれ、自分は幸せだと思っておりました。
人前で裸になるような機会もございませんでしたから、自分が二形などと気付きもしませんでした。
でも、小学生の時に、叔父に玩具にされた挙句、私が普通の少女ではないことを知らされました。お前は女ではない。男でもない。と。
その事実は悲しかったけれど、私は男が大嫌いでしたから、結婚したいなど考えておりませんでした。だから、悲しみはしても、絶望はしませんでした。
叔母様と一緒に睦月会の仕事に関わるようになってからは、女学校を卒業したら正式に睦月会のお手伝いをしようと考えてもいました。
でも、そんな私がこともあろうに、殿方に恋をしてしまったのです」
心臓がゆっくりと速度を上げ始めた。
指先の体温が奪われ始めた。
隼人は百合子の一言で、まるで罪を暴かれる犯罪者のように、息苦しくなるのを感じ始めた。
良人は、正体を隠して娼館の使用人として働きながら、ある男の戸籍を買い取り、清水女学校の用務員として勤めを始めました。
学年が変わるのを期に百合子を転校させ、富山男爵の愛娘、園子に近付いたのです。同じ学習院に高子がおりましたが、警備が厳しいですからね。
清水女学校はお堅いですが、華族は園子ひとりでしたから。
百合子は、同じ境遇の少女がいることに気付き、三人の少女を女学校から良人にさらわせました。
その際、良人は娼館でその子達を利用しようとしたらしいですが、私が隠しているお金の在処を教えないと脅すことでどうにか、睦月会の近くの内科医院の前に捨ててくるよう承諾させました。
浅ましいことに三回とも、同じ会話が繰り返されたのです」
叔母様。と、泣き止んだらしい百合子が顔を上げた。
「続きは私が」
「百合子……」
「もう、隠し事は無しに致しましょう。私も覚悟の上で行動したのですもの、自分だけで罪を負うなど許しませんわ」
真っ赤になった目をハンカチで押さえながら、百合子は体を起こした。背筋を伸ばして手を膝の上に置く。
「私、物心ついた頃から、祖父にも父にも愛情を与えられた記憶が一切ございませんの。
代わりのように祖母から、母から、叔母様からは溢れんばかりの愛情で包まれ、自分は幸せだと思っておりました。
人前で裸になるような機会もございませんでしたから、自分が二形などと気付きもしませんでした。
でも、小学生の時に、叔父に玩具にされた挙句、私が普通の少女ではないことを知らされました。お前は女ではない。男でもない。と。
その事実は悲しかったけれど、私は男が大嫌いでしたから、結婚したいなど考えておりませんでした。だから、悲しみはしても、絶望はしませんでした。
叔母様と一緒に睦月会の仕事に関わるようになってからは、女学校を卒業したら正式に睦月会のお手伝いをしようと考えてもいました。
でも、そんな私がこともあろうに、殿方に恋をしてしまったのです」
心臓がゆっくりと速度を上げ始めた。
指先の体温が奪われ始めた。
隼人は百合子の一言で、まるで罪を暴かれる犯罪者のように、息苦しくなるのを感じ始めた。
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