長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

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婚約

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 翌日、皆仲良く朝の十時ごろに目を覚ました。驚いたことに、玄関に重箱が置いてあり、稲荷寿司やら卵焼きやらご馳走が詰まっていた。

 鍵を持っているのは正子ひとり。

 圭と隼人、加えて百合子と加奈子の疲れ切った様子を見て、なにやら勘付いたのだろう。

 電話で礼を言うと、ありがたく頂く。

 忙しすぎて、残りご飯どころかパンもなく、何か買いに行かなければと思っていただけに、助かった。

 台所も昨日、三人で少しばかり片付けてくれてはいたが、まだまだ散らかっている。

 何より、珈琲寒天の器を洗い、乾かしてから返さなければならない。

 一昨日、正子に頼んで集めて貰った食器を、山上と宗一郎に取りに行ってもらい、朝子の協力を得て作った珈琲寒天。

 結果、好評を得て、睦月会を代表するデセールになるでしょう。と、ついさっき、東子から電話があった。

 元帥から何か聞いているのだろうか、圭達がいつの間にやら抜け出していたことについては何も聞かれなかった。

 幸い、パーティーで使った珈琲寒天の器は、睦月会に返され洗ってくれるそうだ。近い内に両方を交換すればよい。

 すっかり台所が元通りになり、朝の残りを食べ、ほっと一息吐いた時、山上が時計を見てそわそわとし始めた。

「ちょっと出かけてくる」

 そう言って、寝室代わりに使っている応接間に入ると、昨日勇一郎が着ていた背広を身に着け、髪をきっちりと撫で付けて現れた。

「どこに行くのだ?」

 これからパーティーに行くのかと思わせる出で立ちであった。

「菊池朝子のご両親と約束をしているのだよ」

 頬を少し赤らめて、しかし、声は堅苦しい。

「なんだぁ、急展開だな」

「いや、その、疚しいことはないとは言え、夜遅くまで引き留めたからには、その、ね、責任ってものをだな」

 夜遅くとは言っても、七時には送り届けた。そもそも、引き留めたのは隼人である。

 謝ろうとして、やめた。山上は機会を探していたのだろう、婚約をする為の機会を。

「それに、やっぱり女の子って、申し込むよりも申し込まれたいものだろう?」

 更に頬が赤くなる。

「そうだね。おめでとう」

「英和の両親も喜ぶだろうな。あんな可愛い嫁さん連れて帰れば。

 その後は正子さんに紹介しないとな。こっちも喜ぶぞ」
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