長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

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解決 二

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 「そりゃ良かった。これにて一件落着だな。あとは、姉姫の離婚をさっさと済ませないとな」

「それも今日、話を進めてきた。奴の実家に、四人で行ってきたんだ」

 勇一郎が食べていた饅頭を喉に詰まらせ、山上が背中を叩く。

「あぁ、やべぇ。あの世に行くとこだった」

「閻魔様が追い返してくれるだろうよ」

「俺にはまだやり残したことがある。ってか?」

「良いように取るなよ。

 続けてくれ」

 山上に促されて、隼人は再び口を開く。

「実家の一室に引き篭もってやがった。

 俺だけだったなら居留守を使っただろうけど、さすがに元帥を無視するわけにはいくまい。第一本人からしてみれば、面識の無い元帥がなぜ自分を訪ねてくるのか不思議だろうからね」


 

 『手短に話を済ませよう。

 三日以内に離縁の手続きを済ませるよう命令する。もしも異議があるなら今申すが良い』

 育夫はガタガタと震えながら、必死に頷いた。隣では母親が心配そうに、育夫の手を握っている。

『今までの詫びとして、それなりの金額を二人に差し出す必要があるのは理解しているだろうな?』

 すると勇敢にも、育夫は反論を始めた。

 金の話になると人が変わるのは想定内だったが、浅ましさに隼人は呆れ、圭の目はつり上がった。

『待って下さい。僕は今まであの連中にどれだけ金を使ってきたか。その上まだ、取り上げるつもりですか?』

『伯爵家の為に出せと言っているのではない。芙由子姫と百合子姫に差し出せと言っているのだ。理由はわかるだろう?

 分からないというのなら、ここで詳しく説明しても宜しいが』

 育夫が母親を横目で見た。どうやら母親に自分のやっていたことは知られたくないらしい。

『わ……わかった』

『では、離縁の手続きと金の用意ができたら、こちらに電話を頂こうか。

 申し訳ないが、私もそれなりに忙しいので、早めの連絡を頂きたい。できる限り早く』

『は……はい……』

 手に縄を掛けられた犯罪者のように、育夫は項垂れた。元帥が立ち会うとなれば、適当な金額で済ませるわけにはいかないだろう。

 オロオロする母親に、自分で説明するように。と、冷たく言い放って元帥は、出されていた珈琲に口を付けもせずに席を立った。「元帥が関わっていちゃあ、あの男も伯爵家にちょっかい出そうなんざ思わんだろうな」

「元帥は随分とお怒りのご様子だね」

「そりゃあ、腹が立つわな。

 あ、そうだ圭ちゃん、前に元帥の家の傍で会った記者を憶えてるだろ?」

「はい」

「あいつが圭ちゃんを取材したいってさ」

 圭の表情に疑問符が浮かんだように見えた。

「一体私の何を取材しようと?」

「十五歳にして、両親を亡くし、爵位を返上した少年の……」

「お断りします」

 にべも無い言葉に、勇一郎は、おぉ。と軽く答える。

「断っとく」

「あっさりしたもんだな」

「ん? ま、本音は圭ちゃんに会いたいだけなんだって。

 圭ちゃんに会って以来、ちょこちょこ顔見せるようになってさ、下心見え見えだって」

 圭がウンザリした風で溜息を吐いた。

「そいつに言っておけ。今後圭君に近づいたら、ただじゃおかないってな」

 一難去ってまた一難。

「もちろん、言っておく。

 圭ちゃんも遠慮無く銃をぶっ放してやりゃ良いから」

「そうさせて頂きます」

 冷静な圭の言葉に、背筋が寒くなった。
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