179 / 184
集合 二
しおりを挟む
勇一郎の言葉に、元帥の視線は冷ややかだった。
「そうだろうか? 滅多にできない経験だから楽しんでこようか。という雰囲気で現れそうな気がするのだが」
圭が吹き出した。
「中らずと雖も遠からずといったところか」
「ところでなぜ、富山男爵と?」
富山家と安原家の関わりが、皆の疑問であった。
「男爵の会社に、軍がよく我儘を言っているのだよ。あれをいつまでに調達してくれだの、これが幾ら程度で欲しいとか。どんな我儘でも応えてくれるので、ついつい。
そんなわけで香典を返しに来た男爵にまた、我儘を言ってしまったわけだよ」
なるほど。と、皆で納得する。
「男爵は、受け取って貰えなかった香典を、睦月、如月、弥生会に寄付したそうだよ。
本人は何も言わないが、各会の代表者が各々告げ口に来た」
そう言うと元帥は、明るい笑顔を見せた。富山への信頼が感じられた。
元帥が加奈子と話を始めたので、四人は遠慮して離れる。そうすると今度は静子が寄って来た。
「村越君、手紙を書いたそうだね」
静子は悪戯っぽく笑った。
「彼は独逸語は優秀らしいですけれど、日本語は苦手のようです」
圭が微かに反応した。
「なんて書いてあったの?」
「貴女を傷つけたお詫びに、僕は一生結婚しません。って。
結婚できなかった時のいいわけに私を利用しないで。って、中里様に言伝をお願いしました」
圭が小さく溜息を吐いた。宗一郎に対して圭は、溜息で始まり溜息で終わるようだ。
「彼はどうも、状況を読む能力に問題があるようだね」
「結婚しなくて良かった。って思っています」
静子には、根付が見つかったとだけ知らせておいた。頭の良い子だけに、詳しく聞いてはいけないと感じたのか、良かった。と、笑顔を見せただけであった。
静子と勇一郎、山上が手紙の話で盛り上がっているのを傍で聞きながら、複雑な心持であった。
宗一郎は結婚をすまいと考えているのだろうか?
それが静子への詫びになるとの勘違いであれば良いのだが、まだしつこく圭に言い寄るつもりなのではないかと、勘繰りたくもなる。
規則正しい足音が聞こえた。段々と近付いてくる。
足音の方向に視線を向けると、百合子の小さな、白い顔が目に入った。
灰色の清楚なワンピースを身に着けた百合子は、隼人の前で立ち止った。
「長瀬様、少しお時間を頂けません?」
「そうだろうか? 滅多にできない経験だから楽しんでこようか。という雰囲気で現れそうな気がするのだが」
圭が吹き出した。
「中らずと雖も遠からずといったところか」
「ところでなぜ、富山男爵と?」
富山家と安原家の関わりが、皆の疑問であった。
「男爵の会社に、軍がよく我儘を言っているのだよ。あれをいつまでに調達してくれだの、これが幾ら程度で欲しいとか。どんな我儘でも応えてくれるので、ついつい。
そんなわけで香典を返しに来た男爵にまた、我儘を言ってしまったわけだよ」
なるほど。と、皆で納得する。
「男爵は、受け取って貰えなかった香典を、睦月、如月、弥生会に寄付したそうだよ。
本人は何も言わないが、各会の代表者が各々告げ口に来た」
そう言うと元帥は、明るい笑顔を見せた。富山への信頼が感じられた。
元帥が加奈子と話を始めたので、四人は遠慮して離れる。そうすると今度は静子が寄って来た。
「村越君、手紙を書いたそうだね」
静子は悪戯っぽく笑った。
「彼は独逸語は優秀らしいですけれど、日本語は苦手のようです」
圭が微かに反応した。
「なんて書いてあったの?」
「貴女を傷つけたお詫びに、僕は一生結婚しません。って。
結婚できなかった時のいいわけに私を利用しないで。って、中里様に言伝をお願いしました」
圭が小さく溜息を吐いた。宗一郎に対して圭は、溜息で始まり溜息で終わるようだ。
「彼はどうも、状況を読む能力に問題があるようだね」
「結婚しなくて良かった。って思っています」
静子には、根付が見つかったとだけ知らせておいた。頭の良い子だけに、詳しく聞いてはいけないと感じたのか、良かった。と、笑顔を見せただけであった。
静子と勇一郎、山上が手紙の話で盛り上がっているのを傍で聞きながら、複雑な心持であった。
宗一郎は結婚をすまいと考えているのだろうか?
それが静子への詫びになるとの勘違いであれば良いのだが、まだしつこく圭に言い寄るつもりなのではないかと、勘繰りたくもなる。
規則正しい足音が聞こえた。段々と近付いてくる。
足音の方向に視線を向けると、百合子の小さな、白い顔が目に入った。
灰色の清楚なワンピースを身に着けた百合子は、隼人の前で立ち止った。
「長瀬様、少しお時間を頂けません?」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる