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愚痴 二
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「周りは男ばかりだから、多いのだよ、婦人の話は。
それが妻や娘の自慢なら気持ち良く聞けようが、実際は反対で、気が利かないだの頭が悪いだの、そう言えば男としての恰好がつくとでも思っているのか、耳障りで仕方ない。
挙句の果てには、どこそこの遊郭の誰が良いだの、妾を囲っただの言いたい放題だ。
まぁ、そういう私も、家のことは妻に任せきりで、子供も暇のある時に可愛がるだけで、躾や教育には殆ど関わっていない。偉そうに言える立場ではないだろうがね。
しかし、妻に、ごめん、ありがとうを言うことが、男の沽券に関わるとばかりの部下の態度には、呆れを通り越して怒りを感じるよ」
どうやら愚痴を言いたいらしいと理解し、ようやくほっとした。立場的に簡単に愚痴を言える環境にはないのだろう。
「父が申しますには、結婚と言うのはしっかり者の女房の尻に敷かれているくらいが一番幸せなのだとか」
「それは的を射た言葉だ。御父上とは気が合いそうだ」
元帥は大きく伸びをすると、木々の心地よい香りを吸い込むかのように深呼吸した。
「あぁ、気持ち良いな。たまにはこんなふうにのんびりする時間も必要だな」
隼人には聞きたいことがあった。今は機嫌が良いようだから、良い機会かもしれない。
「あの、百合子さんに制服を奪われた、海軍兵学校の生徒は……」
途端に元帥の顔が険しくなった。
「あの日の九時過ぎに、ようやく自力で紐を解いたらしく、無様な姿で現れたよ」
まさかとは思ったが、本気で助けに行かずにいたようだ。
「孫のひとりなのだが、頭は良い。運動神経も良い。そのせいか他の人間を見下す傾向がある。
軍人は一匹狼ではいけない。広く意見を聞き、最終決定をすれば、後は一人責任を負う。
そう、責任を負うのは一人だが、それまではできる限り多くの人間と関わり合う必要がある。それをあ奴は蔑ろにしているのだ。
正直に言えば、私は感謝している。今までどんなに言おうとも聞く耳持たなかった奴が、私の叱咤に顔も上げられずにじっと黙って聞いていたよ。
何しろ、一人で行動していたがために狙われたのだからね。これから奴は変わるだろう。
さ、戻ろうか。済まない、愚痴の聞き役にさせてしまって」
「いいえ、私で良ければいつでも」
地位が高くなればなるほど、迂闊なことを話せなくなるものだ。元帥は隼人を信用してくれたのだろう。
明日の朝、富山一家と共に百合子達も引っ越す。当分、会うことはないだろう。
これからの生活で更に魅力的になるであろう百合子。次に会う時には、幸せな恋をしていて欲しいと、心から思った。
それが妻や娘の自慢なら気持ち良く聞けようが、実際は反対で、気が利かないだの頭が悪いだの、そう言えば男としての恰好がつくとでも思っているのか、耳障りで仕方ない。
挙句の果てには、どこそこの遊郭の誰が良いだの、妾を囲っただの言いたい放題だ。
まぁ、そういう私も、家のことは妻に任せきりで、子供も暇のある時に可愛がるだけで、躾や教育には殆ど関わっていない。偉そうに言える立場ではないだろうがね。
しかし、妻に、ごめん、ありがとうを言うことが、男の沽券に関わるとばかりの部下の態度には、呆れを通り越して怒りを感じるよ」
どうやら愚痴を言いたいらしいと理解し、ようやくほっとした。立場的に簡単に愚痴を言える環境にはないのだろう。
「父が申しますには、結婚と言うのはしっかり者の女房の尻に敷かれているくらいが一番幸せなのだとか」
「それは的を射た言葉だ。御父上とは気が合いそうだ」
元帥は大きく伸びをすると、木々の心地よい香りを吸い込むかのように深呼吸した。
「あぁ、気持ち良いな。たまにはこんなふうにのんびりする時間も必要だな」
隼人には聞きたいことがあった。今は機嫌が良いようだから、良い機会かもしれない。
「あの、百合子さんに制服を奪われた、海軍兵学校の生徒は……」
途端に元帥の顔が険しくなった。
「あの日の九時過ぎに、ようやく自力で紐を解いたらしく、無様な姿で現れたよ」
まさかとは思ったが、本気で助けに行かずにいたようだ。
「孫のひとりなのだが、頭は良い。運動神経も良い。そのせいか他の人間を見下す傾向がある。
軍人は一匹狼ではいけない。広く意見を聞き、最終決定をすれば、後は一人責任を負う。
そう、責任を負うのは一人だが、それまではできる限り多くの人間と関わり合う必要がある。それをあ奴は蔑ろにしているのだ。
正直に言えば、私は感謝している。今までどんなに言おうとも聞く耳持たなかった奴が、私の叱咤に顔も上げられずにじっと黙って聞いていたよ。
何しろ、一人で行動していたがために狙われたのだからね。これから奴は変わるだろう。
さ、戻ろうか。済まない、愚痴の聞き役にさせてしまって」
「いいえ、私で良ければいつでも」
地位が高くなればなるほど、迂闊なことを話せなくなるものだ。元帥は隼人を信用してくれたのだろう。
明日の朝、富山一家と共に百合子達も引っ越す。当分、会うことはないだろう。
これからの生活で更に魅力的になるであろう百合子。次に会う時には、幸せな恋をしていて欲しいと、心から思った。
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