長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

文字の大きさ
54 / 126

記憶

しおりを挟む
 「明日もお出で下さいませ」

 圭を迎えに行くと、彬子は上機嫌で言った。一方圭は、遊園地から戻って来た子供のように、珍しくご機嫌である。

 彬子と楽しい時間を過ごした。等とは到底考えられぬが、二人の機嫌の良さに、有朋は眉根を顰めた。

「ご機嫌だね」

 帰り道、圭に問うと、ふふと笑いながら、面白い事が分かりました。との答え。家に戻ったら直ぐに申します。と。

「彬子夫人と、仲良くなったみたいだね」

「昼食だ、お茶だと言っては、相手をさせられましたが、それ以外は書庫で過ごしました。時々、水をねだりに行くついでに、女中さんに内輪話を教えて頂いたり。

 実は、彬子夫人には正体が知れていました。私の両親と面識があったそうです」

 語尾は口ごもり、聞き取り辛かった。

「照れてるのかい? なにかあったの?」

「私の父が、彬子夫人の初恋の相手だったと伺ったものですから」

 なるほど。と、納得する。先代はまだ、四十になっていなかったはずだ。彬子とは四五歳しか違わない。

「だから彬子夫人は、あんなにご機嫌だったのか。

 君は、父親似?」

「目は、父によく似ていると言われます。全体的には、母に似ているのですが。

 女中さん達からは、相馬さんの親戚かと問われました。似ていますか?」

「俺は、似ているとは思わないな」

 顔の印象は、目が一番強い。有朋は目が大きく、圭は切れ長であるから、雰囲気は異なる。

 それでも互いに整った顔立ちであり、中性的な容姿と言う共通点があるから、端から見れば、そうも思えるのだろう。

 彬子は、華奢な優男が好みなのだろうか。

 念の為に周りに気をつけているが、つけている者はいないらしい。多少力に自信があっても、二人一度に相手にするだけの覚悟はないだろう。

 自宅では、勇一郎が、食卓に新聞を広げて真剣に読んでいた。

「今日、あの警察官がうろついていたらしい。お前も気をつけろよ」

「帳面は、絶対に見つからない場所に隠しておいたから大丈夫だ」

「帳面じゃなく、お前の心配をしてやってんだよ」

「俺がへまなんかすると思うか?」

「思うから言っているのだがね」

 勇一郎は不満そうに唸り、圭は小さく笑った。隼人は寝室に背広を放り込むと、腹具合を問うた。

「食ってきた」

「私も、六時頃頂きました」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

処理中です...