長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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記憶 三

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 「気分ではないのに、無理矢理勉強させようとしたからだそうです。

 映子さんが部屋から出ていこうとするのを、家庭教師が止めたのに腹を立てて、辞書を振り上げて叩き付けたら当たり処が悪くて、失明したそうです。

 結構な金額を積んで、ご両親が必死に頭を下げたそうですが、映子さんには全く、反省の様子は見られなかったそうです」

「誰から聞いたんだ?」

「女中さんです。女中さん達の間では、映子さんも咲江夫人も人気はありませんね」

「あの奥さんは、ある成金のお嬢さんで、兄弟は、年の離れた兄さんしかいない。甘やかされただろうな」

「もう一つ、もう一月になりましょうか、若い女性の遺体が見つかりましたよね? ほとんどの血が失われていたと、新聞でも大きく取り上げられていました。あの被害者は、映子さんと仲の悪かった女中さんだったそうです」

「高林の女中なんて、聞いてないぞ」

「勤め始めて十日も経っていなかったそうですし、ご家族に、高林の名は出すなと、言い含めていたそうです。

 綺麗な方だったそうで、映子さんと張り合うような態度を示していたので、周りはヒヤヒヤし通しだったみたいです。

 その方が相馬さんに言い寄っていたのは
周知の事実です。相馬さんは、迷惑そうだった。との意見が多かったのですが、二人が親しそうにしているのを見た。と仰る方もひとり」

 事件当日、夕方に姿が見えなくなり、翌日の昼、屋敷から遠く離れた林の中で見つかったらしい。犯人はまだ捕まっていない。

「よく聞き出したな。緘口令敷かれてなかったか?」

「敷かれていましたけれど、人の口に戸は立てられませんよ。言ってはいけないと言われれば言われるほど、話したくなるのが、人です」

「圭ちゃんって一見、人畜無害だもんな」

「一見とは、どういう意味でしょう?」

「大人しそうな顔してるってこと。なかなか強かな性格なのにさ」

 なるほど。と、圭は澄ましている。

「また相馬か。

 ねぇ、彬子夫人を誘惑してみない?」

「お断りさせて頂きます」

「お前、なに言ってんだ? 不道徳過ぎやしないか? 

 面白そうだけど」

「彬子夫人が、相馬に言い寄ってるって聞いたものだから」

「どうして私が、彬子夫人を誘惑する必要があるのでしょうか?」

「相馬の反応が知りたいと思って」
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