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記憶 四
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「あぁ見えて相馬は、自惚れが強い。そんな自信が、女性に対して冷たくいられる理由なのだろうけど、もし、自分の崇拝者が誰かに奪われたら、どんなに態度を示すのかな。と思って」
「どうしても知りたければ、長瀬さんが誘惑なさればよろしいでしょう。
長瀬さんはどうでしたか? 相馬さんのご実家は見つかりましたか?」
隼人は、今日調べ上げた事と、有朋の記憶を報告した。
「圭君が、相馬の親戚と間違えられたって聞いて思ったのだけど、義礼氏が君を見て驚いたのは、相馬の弟を思い出したんじゃないのかな。
思い出したくないことだろうからね」
「そうかもしれませんね」
勇一郎は必死に、万年筆を走らせている。
「問題は、相馬の家から出て行った男二人か。金も奪われていたとなると、父親だけの犯行とは言いかねるってもんだよな。
事件から二十年経っている。相馬はその時、まだ五歳の子供だったってことはつまり、だ、曖昧な記憶を、作り変えたって可能性もある」
「作り変えた?」
「そう。
お前、子供の頃、死にかけた経験は無いか?」
「七歳の時、池で溺れた」
「記憶はあるか?」
「ある、けど」
隼人の記憶と、家族の記憶は一致しない。
隼人の記憶では、助けてくれたのは、父親だった。しかし、隼人は、家族には内緒で友達と行ったので、父親はいなかった。助けてくれたのは、通りがかりの軍人だったと聞いた。
気を失っていた隼人を気づかせる為、軍人は頬を叩いた。内緒で、禁じられていた場所に行っていた為、父親は隼人の頬を強く叩いた。その二つの記憶が混同しているのだろうと、今は考えている。
「それみたいなもんだよ。子供の記憶ってのは曖昧なんだよ。怖い目に遭えば、恐怖を和らげようと、嘘の記憶を創り出す。だから、はっきり言わせてもらうと、信用しない方が良い。本人に騙そうって意志がない分、余計質が悪いってもんだよ。
高林義礼に聞ければ良いんだけど」
「素直に話すとは思えないな」
「奥さんはどうなんだ? 圭ちゃん使って聞き出すって手もあるだろう」
「彬子夫人が嫁いで来る前の話だ。恐らく、知っているとしたら。山科だろうな」
隼人はもう、義礼からなにかを得ることは諦めていた。有朋も信用できない。彬子が知っているとは思えない。
かくなる上は、物言わぬ確実な証拠、事実を地道に探して行くしかない。圭が得る情報が役に立つかもしれない。今は見境なしに、情報を掻き集めるべきであろう。
「どうしても知りたければ、長瀬さんが誘惑なさればよろしいでしょう。
長瀬さんはどうでしたか? 相馬さんのご実家は見つかりましたか?」
隼人は、今日調べ上げた事と、有朋の記憶を報告した。
「圭君が、相馬の親戚と間違えられたって聞いて思ったのだけど、義礼氏が君を見て驚いたのは、相馬の弟を思い出したんじゃないのかな。
思い出したくないことだろうからね」
「そうかもしれませんね」
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「問題は、相馬の家から出て行った男二人か。金も奪われていたとなると、父親だけの犯行とは言いかねるってもんだよな。
事件から二十年経っている。相馬はその時、まだ五歳の子供だったってことはつまり、だ、曖昧な記憶を、作り変えたって可能性もある」
「作り変えた?」
「そう。
お前、子供の頃、死にかけた経験は無いか?」
「七歳の時、池で溺れた」
「記憶はあるか?」
「ある、けど」
隼人の記憶と、家族の記憶は一致しない。
隼人の記憶では、助けてくれたのは、父親だった。しかし、隼人は、家族には内緒で友達と行ったので、父親はいなかった。助けてくれたのは、通りがかりの軍人だったと聞いた。
気を失っていた隼人を気づかせる為、軍人は頬を叩いた。内緒で、禁じられていた場所に行っていた為、父親は隼人の頬を強く叩いた。その二つの記憶が混同しているのだろうと、今は考えている。
「それみたいなもんだよ。子供の記憶ってのは曖昧なんだよ。怖い目に遭えば、恐怖を和らげようと、嘘の記憶を創り出す。だから、はっきり言わせてもらうと、信用しない方が良い。本人に騙そうって意志がない分、余計質が悪いってもんだよ。
高林義礼に聞ければ良いんだけど」
「素直に話すとは思えないな」
「奥さんはどうなんだ? 圭ちゃん使って聞き出すって手もあるだろう」
「彬子夫人が嫁いで来る前の話だ。恐らく、知っているとしたら。山科だろうな」
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