65 / 126
義史 三
しおりを挟む
「おりますよ。一見優しそうで、魅力的な人が多いのです。お分かりになりませんか?」
有朋は暫く考えていたが、わからないらしく、その心は? と、軽い調子で問うた。
「興味の欠片も持っていないのに、甘い言葉を囁く色男なんて、女性や、娘を持つ親から見れば、とんでもない悪人だとは思いませんか?」
「なるほど、財産を奪うでも、暴力をふるうでもないから、罪は犯していない。
君はずいぶんとませたことを考えるのだね。最初は、大人しいだけの子供だと思っていたけど。
その悪人って、君のこと?」
「まさか。私はさっき、相馬さんが仰ったように子供ですから」
有朋は圭を真っ直ぐ見た。その目には明らかな敵意が見える。
「しかし、彬子さんも映子さんも、君に夢中じゃないか最近の華族は品がなくなってきていると言われるけど、君を見ていると、人によるのだと思うね」
玄関の付近では、竜胆の紫が、近付く闇の為に、人の視界から消されようとしている。黒よりも闇に近い、色鮮やかな暗さを持つ、美しい紫が。
「どなたからお聞きですか? 私は華族だったことは、この屋敷の方に話した覚えはありませんが」
いかにも落ち着いた風を装っていたけれど、一瞬息を止めたことで、有朋がうろたえたのを理解した。
「社長に」
「高林氏とは、面識はありません。彬子夫人は、私の両親をご存知ですけれど」
「社長は彬子さんに聞いたのでしょうね」
苦しい言い訳の後すぐ、魅力的な笑顔を見せた。
「君のご両親は、仲は良くなかったの?」
突然の馴れ馴れしい言葉遣いが、さほど厭な気持ちはしない。
「いいえ、評判の鴛鴦夫婦でした」
「失礼。君の、人への態度が冷たいのは、不仲なご両親を見て育ったからかと思って」
有朋自身の経験によるものだろう。
「私は、生まれ持った性格でしょう」
「僕が嫌いでしょう?」
どういう意味で言っているのだろうかと、有朋を見た。有朋は目を閉じたまま、言った。
「長瀬さんを取られるのではないかと、思っているのでしょう?」
開かれた目は、感情を何も、示してはいなかった。
「逆だよ。君が取るんだ」
どういう意味なのか、問おうとしたが、叶わなかった。
「噂をすれば、影。行こうか」
勝手に、有朋は階段を下りて行く。
圭は荷物を手にすると、彬子にお暇の挨拶に行った。
有朋は暫く考えていたが、わからないらしく、その心は? と、軽い調子で問うた。
「興味の欠片も持っていないのに、甘い言葉を囁く色男なんて、女性や、娘を持つ親から見れば、とんでもない悪人だとは思いませんか?」
「なるほど、財産を奪うでも、暴力をふるうでもないから、罪は犯していない。
君はずいぶんとませたことを考えるのだね。最初は、大人しいだけの子供だと思っていたけど。
その悪人って、君のこと?」
「まさか。私はさっき、相馬さんが仰ったように子供ですから」
有朋は圭を真っ直ぐ見た。その目には明らかな敵意が見える。
「しかし、彬子さんも映子さんも、君に夢中じゃないか最近の華族は品がなくなってきていると言われるけど、君を見ていると、人によるのだと思うね」
玄関の付近では、竜胆の紫が、近付く闇の為に、人の視界から消されようとしている。黒よりも闇に近い、色鮮やかな暗さを持つ、美しい紫が。
「どなたからお聞きですか? 私は華族だったことは、この屋敷の方に話した覚えはありませんが」
いかにも落ち着いた風を装っていたけれど、一瞬息を止めたことで、有朋がうろたえたのを理解した。
「社長に」
「高林氏とは、面識はありません。彬子夫人は、私の両親をご存知ですけれど」
「社長は彬子さんに聞いたのでしょうね」
苦しい言い訳の後すぐ、魅力的な笑顔を見せた。
「君のご両親は、仲は良くなかったの?」
突然の馴れ馴れしい言葉遣いが、さほど厭な気持ちはしない。
「いいえ、評判の鴛鴦夫婦でした」
「失礼。君の、人への態度が冷たいのは、不仲なご両親を見て育ったからかと思って」
有朋自身の経験によるものだろう。
「私は、生まれ持った性格でしょう」
「僕が嫌いでしょう?」
どういう意味で言っているのだろうかと、有朋を見た。有朋は目を閉じたまま、言った。
「長瀬さんを取られるのではないかと、思っているのでしょう?」
開かれた目は、感情を何も、示してはいなかった。
「逆だよ。君が取るんだ」
どういう意味なのか、問おうとしたが、叶わなかった。
「噂をすれば、影。行こうか」
勝手に、有朋は階段を下りて行く。
圭は荷物を手にすると、彬子にお暇の挨拶に行った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる