長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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犯罪 ニ

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 再び隼人は考える。今度は困ったような表情をしていた。この様子では、お化けの話以上に、女の話はしてはおるまい。

「婦人の話をした記憶は無いな。

 周囲でその手の話をする輩は多かったけど、俺は聞き流していたし、相馬は、低俗な連中として、侮蔑するのに躊躇しなかった。

 俺との怪し気な噂を流された時も、否定するでもなく、超然としていた」

「なぁんか妙に納得。

 なぁ、相馬って自分が一番好きなんじゃないのか?」

「そうかもな」

「相馬さんが大きな事件を起こすとすると、自分を知らしめるのが、目的になるのでしょうね」

 例えば手品。種も仕掛けもありません。と言ったところで誰が信じる?

 それでも人が手品を見たがるのは、騙されたい気持ちを誰もが持っているからだろう。

 勿論、財産が減ったり、体を傷つけられるのは困るが、驚かせられるくらいなら、気持ちいいだけだ。自らが関わらずにいられるなら、完璧な犯罪を称賛する人間も少なくはないだろう。

 圭にしても、その傾向はある。

 お馬鹿さん。と言いたくなるような他愛のない犯罪も、話題にはなるだろう。

 しかし、大きな犯罪は、犯人が死した後も人の口に上る。現に、圭の知らなかった「ラージ事件」なるものが今、隼人と勇一郎の口から漏れたのだから。

「突然、相馬さん犯人説が浮上してきましたけど、長瀬さんは相馬さんを疑っているのですか?」

 隼人はしっかりと頭を振った。

「相馬は、今回の事件を考えると、必ずと言っていいほど顔を出すが、犯人だと決めつけるのは、早急過ぎると思う。

 ただ、動機が皆無では無い以上、調べる必要がある。迂闊に決めつけてしまえば、見えるものも見えなくなってしまう」

 正しい考えだと、圭は思った。

 有朋を疑うのは簡単である。両親の仇を取ろうとしたのだと考えれば、誰もが納得するのではないだろうか。

 考えるのが楽だからこそ、慎重になる必要がある。大事なのは、動機よりも、証拠なのだから。

「関係無いかもしれんが、高林の女中も気になるな」

「敏さんですね」

「茅で手首切るなんて、不自然極まりない。

 田舎の人間がそんな出鱈目な嘘を吐いてまで、なにを隠そうとしてんだ?」
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