長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

文字の大きさ
73 / 126

犯罪 三

しおりを挟む
「自死を目論んでいたんじゃないのか? 左手首だろう? 手首なら太い血管が通っているから、剃刀で深く切れば、死に至る可能性もある。

 でも、かなり痛いから、結局死にきれないんだよ」

「詳しいのですね。経験がおありで?」

「まさか。

 一度だけ、洋紙で誤って手首を切ったことがある。うっすら血が滲んだだけなのに、悲鳴もあげられないほど痛かったよ」

 隼人の言葉に、思わず切り傷の痛みを思い出して片目を閉じた。

「明日、俺が話をしよう。自死を図ろうとしたかと問えば、約束とやらを嫌でも話さざるを得なくなるだろう。

 しかし、問題の多い家だな」

「一人娘がそれじゃあ、親も苦労するだろうな」

「映子さんは叱られたことがないのではありませんか?いけないことはいけないと、言ってくれる大人がいなければ、子供は理解できません」

「俺も随分張り倒されたもんだよ」

「日課だったのではありませんか?」

「三日に二日は」

「の割には、懲りてないみたいだな」

 隼人の皮肉に、今更恐れ入る勇一郎ではない。そうかもしれないな。等と言いながら、豪快に笑っている。

 決して映子が犯人だとは思っていないが、気にするだけの、危険な娘であると言う考えは、三人に共通するものであった。

「明日、義礼氏に話したいことがあるから、昼頃伺おうと思っている」

「おい、隼人、お前もしかして、犯人の目星がついてんじゃないのか?」

 隼人は否定しない。

 肯定もしないがこの場合、否定しないことこそが、答えであろう。

「相馬を庇っているように見えるのも、それが原因じゃないのか?

 ま、犯人教えろとは言わないから、安心しろよ。な」

 同意を求めるように、勇一郎が圭に顔を向けた。

「確実な証拠が見つかってからで結構です」

「鋭いね」

 例え信用している相手であっても、証拠もなしに、あいつこそ犯人だ。と、軽々しく言われるのは困る。尤も、そんな軽薄な人間ならば、弁護士は務まらなかっただろう。

 正直に言えば、犯人は誰かと問い質したい好奇心はあるが、圭は必死に感情を押し殺した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

処理中です...