長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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カミソリ 三

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 隼人は寝台に近寄ると、掛け布団に手を掛けた。映子の鋭い悲鳴が上がる。

 隼人は剥がした掛け蒲団を、寝台の下に放り出した。乱暴な行為に、非難の視線が集まる。

「圭君、俺だから、安心して」

 見覚えのある服装の子供が横たわっている。それもただ、横たわっているだけではない。目隠しに猿ぐつわ、ご丁寧にも、後ろ手に縛り上げられている。

 寝台に腰掛け、口、目を開放し、手を拘束している手拭いを外そうとした時、圭が悲鳴を上げた。どうしたのかと確認すると、左手首に巻かれた包帯に、鮮やかな赤い線が浮かび上がっている。

 少しの我慢だから。と言い含め、なるべく痛い思いをさせまいと、気をつけながら、手拭いを外す。

 寝台の周りでは、皆が息を詰めていた。横目で映子を見ると、親の仇を見るように、隼人を睨みつけている。

 一方義礼は、今にも倒れそうな顔色だった。

 手を解放すると、足を縛る紐も取り払う。

 自由の身となった圭は、寝台から下りると、覚束ない足取りで三面鏡に向かい、凭れ掛かるようにして体を支えると、引き出しを次々開き、一番小さな引き出しを引き抜くと、床に投げた。

 勢いづいて少しばかり滑ったが、中身は溢れず、鈍い銀色の姿を見せた。

「凶器の始末くらいなさってはいかがですか?」

 引き出しの中身を見て、彬子と咲江が息を呑むのが分かった。

 鈍い銀色の正体は、錆びかけたカミソリで、乾いても尚、生々しい血液の痕を見せていた。

「どうして、麻上さんがここにいるとわかったのですか?」

 最も落ち着いている彬子が、解せぬとばかりに口を開いた。

「書庫の床に置いてあった本です。あれは彼が、俺に居場所を教えるために置いてあったのです。

 見出しが、スクリーンでした。

 スクリーンとは活動写真を映す白い幕。映す。は、映子の映です」

「映子さんに、この部屋に来るように言われました。誰にも内緒で。そうすれば敏さんとの約束を教えてくれると。

 内緒と言われたので、なにか裏があると思い、万が一の為にあの本を用意しておきました」

「一人でここに来て、何をされた?」

「背後から首を絞められました」

「映子さんに?」

「いいえ」
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