長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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地獄 四

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 圭は推理していた。母親を殺したのは、顔見知りの者であると。見知った誰かを思い出しては、あの人であろうか? いや、そんなはずはない。と、思い悩んでいたであろう。

 いっそ、親しくない相手であっただけ、まだ救いはあったかもしれない。

「私は君の母親を……」

 声も体も、震えていた。

「電話をした。お悔やみを述べた後、貴女の息子さんの将来について話をしたいと。

 彼女とは二度ほど会ったことがあった。美しく、優しい人だった。

 どうやら私のことは信用してくれていたらしく、十八日に訪ねるから、二人だけで話をしたいとの願いを、受け入れてくれた。

 お勝手から入ると、驚いたようではあったが、笑顔で迎えてくれた。そんな彼女を、私は……」

「高林さん、どうして山科の言うなりになる必要があったのですか? 事件は既に時効を迎えていたはずです」

「私は追い詰められていた。ニ十ニ年経ち、裁きを受けずに済むとわかっていても、世間から白い目で見られるのが怖かった。

 山科は、協力しないならば、有朋に真実を話すとまで言い始めた。私には、それが何より怖かった。

 ただ、山科は、君を手に入れば良かっただけで、母親を殺せとは言わなかった。決めたのは、私自身だった。君は平民になることを望みながら、母親の望み通り爵位を継いだと知ったから……」

「思惑通り爵位は返上したものの、彼は土地の新しい持ち主の好意で、そのまま住み続けていた。

 すぐに生活の場を失うと思っていたのにあてが外れたため、必要としていない土地を破格の値で買い取り、追い出すことに成功した」

「苦労しました。かなりのお人好しで、彼を随分と心配して、なかなか承諾しませんでした。

 だから私は、今のままでは財産を食い潰すばかりだから、将来に繋げる物を与えなければならないと、説得しました。

 呆れたことに、麻上君が承知するなら。と、条件をつけて、やっと、納得してくれたのです」

 この場に相応しくない笑みを、圭が見せた。

「やはりあの方は、私を騙したりはしていなかったのですね」

 呟きは、義礼の顔色を更に青くした。

「どんな気持ちでした?」

 笑みを収め、圭は義礼に視線を向けた。

「決して殺人を肯定するつもりはありませんが、貴方が殺すべきは母ではなく、山科だったのではありませんか?」
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