長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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旧友 四

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「叔母さんが赤ん坊を抱いていたからって、従兄弟とは限らないだろう?」

 義礼の狼狽えた声に、有朋は冷静だった。

「そうですね。

 では、叔母の居所に変更して下さい」

 隼人は、驚きの表情を消さない義礼を上目遣いで盗み見しながら、必要な事柄を有朋に問うた。

 母の名、叔母の名、別れた年齢や場所。

「申し訳ないのですが、全く思い出せないのです。

 叔母の記憶もとても朧げで、薄暗い背景に、着物を着た、顔のはっきりしない女が、赤ん坊らしき影を抱いている絵が浮かんでくるだけで、どうしてそれを叔母だと認識しているのかも、我ながら理解できないくらいなので」

 よくもそんな適当な記憶で依頼に来たな。と、心の中で毒づきつつ、義礼に顔を向けた。

「高林様に伺ってもよろしいでしょうか?」

 表向きは冷静にしているが、顔色は正直だった。健康そうだった肌の色は今、青く変化している。何に対して困っているのかは知らぬが、目の玉などじっとしていない。

「確か、相馬はまだ、五歳だったと思います。住んでいたのは」

 言い淀んで、視線を泳がせた。

「覚えていません」

「覚えていないのですか?」

 隼人の責めるような声に、義礼は視線だけを逸して頷いた。

「それでは、相馬君の両親と、高林様の関係は?」

 今にも目眩を起こしそうな様子だった。

「彼の父親と、同じ大学でした」

「僕と長瀬さんのようなものですね」

 有朋は笑んだ。

 それは華やかな笑みでありながら、鋭く突き刺す、氷柱のような冷たさを孕んでいるように、隼人には思えた。

 父子のような関係であり、主従関係である二人。

 しかし今、隼人の目に映るのは、精神的に義礼をいたぶる有朋。


 奇妙な関係に見えた。
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