7 / 126
事件 二
しおりを挟む
運転手は手の甲で汗を拭うと、こっちへ来いとばかりに手を振る。
「何があったのですか?」
運転手の落ち着きの無さに、不安がよぎる。
「は、はい。社長が大変な事に」
義礼?
隼人は有朋の叔母を捜索するはずだが?
と考えはしたものの、運転手はそれ以上説明をしようとせず、と言うよりも、答える余裕は無さそうなので、手帳や万年筆を仕舞っている鞄を手にすると、運転手の招きに応じた。
「高林さんに、何が起きたのですか?」
「警察に、聞いて頂けますか?」
隼人の質問に答える余裕もないらしく、運転に忙しい。
(警察ってことは、事件? 事故?)
昨日の義礼を思い出せば、もしや。と思わないでも無かったが、運転手は、死の一言は出していない。
道の、整備されていない下町を抜け、暫く走ると、突然、塀の並ぶ、屋敷町が姿を表した。
初めて訪れる。二人で出掛ける事はあったが、互いの家を訪ねた事はない。
古いが美しい和舘の奥に、和洋折衷の新しく、大きな屋敷が見えた。
「こちらです。どうぞ」
運転手に付いて屋敷に向かっていると、強面の警察官が、こちらに向かって来るのが見えた。
屋敷に入る人間を監視しているのだろうか?
「誰だ」
「探偵さんです。相馬様に頼まれて、迎えに参りまして」
運転手はビクビクと、体を縮めて掠れ声を出す。
「探偵が何の用だ」
問いたいのは隼人の方だった。
一体いつ、自分は探偵になったのか。
「相馬君を呼んでくれませんか? 自分も詳しい説明を受けていないので」
融通の利かなさそうな警察官を、見下ろし、威嚇する。
運転手はオロオロしながらも、屋敷に向かった。
隼人を睨みつけながらも警察官は、文句を言えないらしい。
権力を笠に着た連中からしてみると、名を馳せる実業家の秘書を呼びつける相手に反論するのは難しいのだろう。
警察官は言葉にはしないが、隼人をただ、憎たらしそうに睨め付ける。
鬼瓦のような厳つい顔が、更に、恐ろしい顔になっている。
その執念深さには、怒りを通り越して、呆れてしまった。
「長瀬さん」
挨拶も無しに、有朋の声が隼人を呼ぶ。
「じゃ、失礼しますよ」
目の前を通り過ぎようとする隼人に、警察官の低い声。
「ふん、異人めが」
「何があったのですか?」
運転手の落ち着きの無さに、不安がよぎる。
「は、はい。社長が大変な事に」
義礼?
隼人は有朋の叔母を捜索するはずだが?
と考えはしたものの、運転手はそれ以上説明をしようとせず、と言うよりも、答える余裕は無さそうなので、手帳や万年筆を仕舞っている鞄を手にすると、運転手の招きに応じた。
「高林さんに、何が起きたのですか?」
「警察に、聞いて頂けますか?」
隼人の質問に答える余裕もないらしく、運転に忙しい。
(警察ってことは、事件? 事故?)
昨日の義礼を思い出せば、もしや。と思わないでも無かったが、運転手は、死の一言は出していない。
道の、整備されていない下町を抜け、暫く走ると、突然、塀の並ぶ、屋敷町が姿を表した。
初めて訪れる。二人で出掛ける事はあったが、互いの家を訪ねた事はない。
古いが美しい和舘の奥に、和洋折衷の新しく、大きな屋敷が見えた。
「こちらです。どうぞ」
運転手に付いて屋敷に向かっていると、強面の警察官が、こちらに向かって来るのが見えた。
屋敷に入る人間を監視しているのだろうか?
「誰だ」
「探偵さんです。相馬様に頼まれて、迎えに参りまして」
運転手はビクビクと、体を縮めて掠れ声を出す。
「探偵が何の用だ」
問いたいのは隼人の方だった。
一体いつ、自分は探偵になったのか。
「相馬君を呼んでくれませんか? 自分も詳しい説明を受けていないので」
融通の利かなさそうな警察官を、見下ろし、威嚇する。
運転手はオロオロしながらも、屋敷に向かった。
隼人を睨みつけながらも警察官は、文句を言えないらしい。
権力を笠に着た連中からしてみると、名を馳せる実業家の秘書を呼びつける相手に反論するのは難しいのだろう。
警察官は言葉にはしないが、隼人をただ、憎たらしそうに睨め付ける。
鬼瓦のような厳つい顔が、更に、恐ろしい顔になっている。
その執念深さには、怒りを通り越して、呆れてしまった。
「長瀬さん」
挨拶も無しに、有朋の声が隼人を呼ぶ。
「じゃ、失礼しますよ」
目の前を通り過ぎようとする隼人に、警察官の低い声。
「ふん、異人めが」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる