長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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事件 四

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「分かった。

 ではまず、ご家族に話を聞きたいのだけど」

彬子あきこさんは今無理ですが」

「彬子さん?」

「奥さんですよ。

 副社長なら」

「副社長?」

「社長の弟です。名は義史よしふみ。妻は咲江さきえ。一人娘の映子えいこの三人家族です。

 一旦、外に出ます」

 そこ。と、有朋は玄関手前に、右手に続く通路の扉を指さした。

「あの扉の向こうが副社長宅ですが、今は閉じられています」

「同じ間取りなの?」

「はい。線対称になっています」

 外に出る。古い和館が目に飛び込む。本邸らしく見えるが、人気はない。

 義礼の住まいは外から見れば、大きな一つの家に見えるが、扉が二つある、変わった造りであった。

 今、出てきたのと全く同じ扉に向かい、ベルの釦を押した。

「向こうの日本屋敷には、先代がお住まいでした。

 こちらは、副社長の結婚に合わせて建てられたのです」

「豪勢だね」

 扉が開いた。

 使用人らしい若い娘が、怯えた顔で隼人を見、続いて、有朋に視線を向けた。

「社長の件で、皆さんに話を聞きたい」

 はぁ。と、娘は困った様に、再び隼人を見た。

「こちらは探偵さん。

 きっと犯人を見つけてくれるから、安心して」

 有朋の言葉に、娘は微かに口元を綻ばせた。

 どうやら、隼人の容貌に驚いていたのではないらしい。

「よろしくお願い致します。

 こちらへどうぞ」

 中は、義礼邸と線対称ではあるものの、雰囲気は全く違っていた。

 部屋の入り口は、義礼邸は中が見える、硝子を組み合わせた障子。

 義史邸は、西洋風に木の扉である。壁には油絵が飾られ、華やかな花瓶に活けられた生花などが、幸せな家庭を思わせられた。

 隼人達を廊下に残して、娘は一人、扉の向こうに消え、直ぐに戻って来、どうぞ。と、扉を開いた。

「朝早くから、申し訳ありません」

 慣れた調子で入ると、有朋は、ソファに座っている三人に頭を下げた。

「相馬君、探偵とはどういうことかね?」

 よく似ているが、義礼よりも恰幅が良く、年上に見える。

 義史が怪訝そうに、隼人を見やる。

 嫌な感じはしなかった。

 義史の言葉に、探偵に対する警戒は感じたが、隼人の外見に対する差別は感じなかったのだ。

「彼は、僕の大学時代の先輩で、弁護士でもあります」
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