長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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事件 六

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 同じ家に住んでいる伯父が殺されかけたというのに、二十歳にもなった娘の発する言葉とは思えない。

「質問に答えて頂けませんか?」

「先に私の質問に答えて」

「お止めなさい。

 申し訳ありません、我儘な娘で」

 母親の叱咤など気にもせず、視線は隼人の髪に向いている。

 常識のない人間に勝つのは難しい。隼人は白旗を挙げざるを得なかった。

「地毛ですよ」

 映子の目が、驚きに見開かれた。

「貴方、異人さんなの?」

 両親の慌てる姿など意に介さず、映子は興味を隠さない。

 大きな目も、少子丸みを帯びた顔も、年齢よりも若く見える。

 生成り地の大人しい柄の着物を着ているが、芙蓉ふようを象った華やかな髪飾り、紅をひいた赤い唇。

 軽々しい性格が、外見に現れている。

「質問に答えて下さい」

「勿論寝ていたわよ、一人で」

 そう言って、含み笑いをした。

「誰も証明できないに等しいですな」

「それが普通でしょうね、この時間なら。

 ところで、奥様は昨日、義礼氏の奥様とお会いになられましたか?」

「いいえ、その、私達あまり、顔を合わせることはありませんの」

 咲江は困惑の表情を見せた。妻同士はあまり、仲は良く無いらしい。

 隼人は、さっき義史が言った、高林を憎む者、妬む者の名の住所をあげさせると、その理由を問うた。

 殺したいと思っているであろう人物。と、制限をつけた為か、名は四人に留まったが、怪我をさせる程度ならば、十倍は居るだろうと言った。

 隼人も、父親が実業家であるから、取り引きやら、金銭の問題やらで、人の恨みを買い易いことは知っている。

 それにしても、四十人は多すぎる。

 義礼は、利益の為なら義理人情も蔑ろにするらしいから、それも仕方あるまい。

 義史邸を辞し、有朋と共に庭に出る。

 広いことは広いが、庭の何処にいても、警察官の目から逃れる術は無い程度だった。

「ところで君は、昨夜書斎を辞してから、どうしていたの?」

「自室で本を読んでいました。勿論、証明してくれる人はいません」

「君の部屋は、二階にあるのだったね」

「はい。

 一階には社長の書斎と寝室、彬子さんの自室と寝室、応接間があり、二階には僕の部屋と書庫があります」

「奥様がいらっしったのはいつ?」

「僕が十六の時だから、十一年前かな」

「結構遅かったのだね」
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