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事件 七
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「そうかも知れません」
「奥様の事、訊いてもいいかい?」
伯爵家の令嬢。で、始まった。
「長瀬さんも知っているでしょうね、神岡伯爵家」
「十年位前に、事業の失敗で没落した」
「その直後嫁いで来ました。
夫婦仲は良いとは言えません。彬子さんは気位の高い人だし、社長は仕事一本槍だし」
「子供は?」
「いません」
「奥様の実家には、援助をしているの?」
「はい。生活には不自由しないけれど、馬鹿な事を考えられない程度」
失礼な言い方に、隼人は眉を顰めた。
「僕の言葉じゃありません。彬子さんが言ったのですよ」
悪びれもせす、有朋は言い訳する。
「そう。
話は変わるけど、義礼氏が殴られたのは、頭かな?」
「この辺り」
有朋はほっそりとした人差し指を、隼人の右こめかみにぶつけた。
「右側?」
「はい。
警察が来るまでの間に、間近で確認しました。確かに右側です」
「どんな傷だった?」
「凶器は、女神像で間違いないでしょうね。皮膚が抉れていました」
「しかし、鍵の掛かった屋敷で、遅い時間に犯行が行われたってことは、ごく親しい相手に限られるんだよな。
そう考えると家族が怪しいが、事業の要である義礼氏を殺すのは、不自然だ」
「僕なら、どうでしょう」
「憎む理由があるの?」
「いいえ。
でも、犯行動機が憎しみだけとは限らないでしょう? 存在が邪魔だとか、逆に、愛情故に、自分だけのものにするための殺人だってありましょうし」
「そんなことを言ったら、容疑者が絞れないし、君も容疑者だぜ。
義礼氏が目を覚ませば、犯人が誰かは直ぐに知れるだろう」
「そうでしょうか?」
挑戦的な声。まるで、犯人に挑まれている気にさせられてしまう。
「親しい相手であれば、庇う可能性だってありますよ。
社長はね、仕事に関しては冷酷とも思える判断ができるけど、情に脆い部分もあります」
有朋は、家族を疑うよう、隼人を誘導しているらしく感じた。自らを含めた、高林家の人間を疑え。と。
理由を問うても恐らく、そんなつもりはない。と言うに違いない。
義礼の傍には奥方の彬子も、看護婦もいる。屋敷の内外には、警察官もいる。誰が犯人であろうと、危険はあるまい。
「奥様の事、訊いてもいいかい?」
伯爵家の令嬢。で、始まった。
「長瀬さんも知っているでしょうね、神岡伯爵家」
「十年位前に、事業の失敗で没落した」
「その直後嫁いで来ました。
夫婦仲は良いとは言えません。彬子さんは気位の高い人だし、社長は仕事一本槍だし」
「子供は?」
「いません」
「奥様の実家には、援助をしているの?」
「はい。生活には不自由しないけれど、馬鹿な事を考えられない程度」
失礼な言い方に、隼人は眉を顰めた。
「僕の言葉じゃありません。彬子さんが言ったのですよ」
悪びれもせす、有朋は言い訳する。
「そう。
話は変わるけど、義礼氏が殴られたのは、頭かな?」
「この辺り」
有朋はほっそりとした人差し指を、隼人の右こめかみにぶつけた。
「右側?」
「はい。
警察が来るまでの間に、間近で確認しました。確かに右側です」
「どんな傷だった?」
「凶器は、女神像で間違いないでしょうね。皮膚が抉れていました」
「しかし、鍵の掛かった屋敷で、遅い時間に犯行が行われたってことは、ごく親しい相手に限られるんだよな。
そう考えると家族が怪しいが、事業の要である義礼氏を殺すのは、不自然だ」
「僕なら、どうでしょう」
「憎む理由があるの?」
「いいえ。
でも、犯行動機が憎しみだけとは限らないでしょう? 存在が邪魔だとか、逆に、愛情故に、自分だけのものにするための殺人だってありましょうし」
「そんなことを言ったら、容疑者が絞れないし、君も容疑者だぜ。
義礼氏が目を覚ませば、犯人が誰かは直ぐに知れるだろう」
「そうでしょうか?」
挑戦的な声。まるで、犯人に挑まれている気にさせられてしまう。
「親しい相手であれば、庇う可能性だってありますよ。
社長はね、仕事に関しては冷酷とも思える判断ができるけど、情に脆い部分もあります」
有朋は、家族を疑うよう、隼人を誘導しているらしく感じた。自らを含めた、高林家の人間を疑え。と。
理由を問うても恐らく、そんなつもりはない。と言うに違いない。
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