長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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監禁 二

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明治の時代に流行った、派手でクラシカルな洋館である。

 花瓦斯シャンデリアやら彫刻、施しが過ぎて、主の趣味の悪さを物語っているようだ。

 玄関近くの部屋に通された。
 
 赤い絨毯に、ゴブラン織りのソファ。全くもって落ち着かない。

 ソファに体を沈めているのが、山科だった。

 仕事もせず、道楽だけで日々を過ごしているにしては、引き締まった体をしていた。

「お前が脅迫者か」

 珈琲を口に近づけながら、山科は、馬鹿にしたような口調で言う。

「脅迫? 俺が脅迫をしていると言うなら、警察に行きますか? 一緒に」

 ギロリ。と、山科は睨んだ。

 唇の左端が、紫色に腫れている。切れてもいるらしい。

 熱い珈琲なら滲みただろうが、飲んでいるのは、冷やし珈琲だった。

「その傷、いつできたものです?」

 入り口の前で立ったまま隼人は問うが、山科は答えず、視線を逸らす。

「誰に殴られたのです?」

 黙っていても、山科が不快に思っているだろうことは、伝わってくる。

「それでは、二階に監禁している女の子の話をしましょうか。あの子は誰なんです? 

 まさか、自分の娘だとは言いませんよね」

山科が初めて笑った。

 まるで、隼人を嘲笑うかのような、意地の悪い表情で。

「なんのことかね?

 私がどこに、女の子を監禁していると? 

 言い掛かりはやめてほしいな」

「だったら、二階の角部屋を見せて下さい。

 後ろ暗いことが無いなら、構わないでしょう?」

「どうしても見たいなら、警察に行き給え。

 なぜお前のような初対面の男の言うことを聞かなきゃならんのだ」

 子供を別の場所に移す為に、隼人を追い出したいのか。

 いや、まさかとは思うが、既に警察を買収しているのか?

(とにかく、早く逃げなければ、あの初老の男が今頃、仲間を集めているかも知れない)

 隼人が部屋を飛び出すと、突然開いた扉に驚いたらしい女中が、盆の上の珈琲茶碗を落とした。

 背後から、怒声が聞こえる。

 毛足の長い絨毯を敷き詰めた階段を駆け上がり、角の部屋を見つけると、取っ手を回した。

 鍵が掛けられている。追っ手は階段を昇り始めていた。

「扉から離れろ!」

 隼人は足を振り上げると、力一杯蹴りつけた。

 鈍い破壊音が響き、扉は驚くほど簡単に、隼人を部屋の中に招き入れる用意をした。

「金持ちのくせに、安普請だな」
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