長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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開始 八

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 ふふふ。と、有朋は笑い出した。

「どうしたのだ?」

「いえ、可愛らしい推理だと思って」

 莫迦にされたと思ってか、圭の目が釣り上がった。

「そこまでくれば、不義を疑うべきでしょう?」

 圭が頬を赤く染めたのを見て、有朋はクックと喉で笑った。

「君、怒ってるのかい?

 決して、高林さんとの不義を疑っているのではないよ。彼の表情を見ればわかるだろう?」

 圭は、自分の失言に気付いたらしく、更に顔を赤くした。

「申し訳ありません。そのような意味では」

「分かっています。

 第一、推理をするのに、枷があってはいけないことくらい、僕だって理解していますよ。

 長瀬さん、僕、怒ったように見えましたか?」

「怒っていないのかい?」

「怒っちゃいませんよ。

 社長が僕に気を遣うのは、僕が他人だからですよ。小さな頃から高林家で育てられて、子供同然ではあるけれど、やはり、他人の遠慮がある。それだけですよ」

「そう。

 君は、養子の件を受けるのだね?」

「勿論」

 そうなると、有朋が犯人である可能性は、零になったも同然だった。養子縁組が終わっていない今、義礼に死なれては困るのだから。

「申し訳ないが、映子さんに会わせてもらえないか」

 応接室で待っていて下さい。と、言い残して、有朋は、義史邸に向かった。

 圭は神妙な面持ちで、黙り込んでいる。

「圭君、気にしなくていいよ。誤解だと相馬も理解しているのだし」

「あ、いえ、気にしているわけでは」

 圭はそう言いながらも、やや俯き加減のまま。どう宥めるべきかと、隼人も悩み、黙り込む。

 結局、有朋が戻って来るまで、互いに黙り込んだままであった。

「男ばかりの中に、令嬢ひとり連れて来るわけにはいきませんので」

「敏と申します」

 若い女中が、映子の隣を陣取っている。賢そうだが、顔色の良くない娘。

 有朋には席を外してもらい、隼人は映子と向かい合う。

 が、映子はどうやら、圭に興味があるようだ。名乗った圭に対して視線を露骨に送るばかりで、自分は名乗りもしない。

「貴方、綺麗なのに男の子なのね」

 相変わらず場の空気を無視している。

「残念だわ」

 何か残念なのか。謎の言葉は無視する。

「映子さんに伺いたいのですが、高林の事業を、相馬君が養子に入って継ぐそうですが、ご存知ですか?」

 映子は、眠そうにも見える目を、漸く隼人に向けた。
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