長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

文字の大きさ
26 / 126

開始 七

しおりを挟む
「ただ、社長からは、山科さんとは口を利いてもいけないと言われました。

 喧嘩をしたのかしら。大人気ないな。とは思いましたけれど、僕も山科さんのことはあまり良く思っていなかったので、自然、約束を守った形にはなりましたけれど」

 勇一郎の情報の確かさは、これで確認できた。

「山科さんが、どうかしましたか?」

 詳しい説明はまだできない。答えにつまり、笑って誤魔化す。

 まだ、犯行現場には入れない。警察官が引っ掻き回して遺留品を探しているが、まだ何も出ていないようだ。部屋は荒らされておらず、争った形跡も無い。

「あぁ、そうだ、言い忘れていましたが、僕は近い内に社長の正式な養子になります」

 戻って来たばかりの圭が、興味あり気に有朋に目を向けた。

「映子さんは?」

「突然、副社長が映子さんを嫁にやると言い出したのです。

 それまでは、映子さんに婿を取るのだと、二名の候補まで決めていたのに」

「相馬さんと、映子さんと仰る令嬢との縁組のお話はなかったのですか?」

 大人しく聞いていた圭が、大人びた態度で問う。

「さぁ、少なくとも僕に、そのような打診はありませんでしたね。

 僕は、映子さんのような女性は苦手です。それは、社長も知ってますし」

「随分と、高林氏は相馬さんに気を遣っておいでなのですね」

 無表情だからどう言う意味で問うたのかはわからないが、圭の言うことは一理あった。普通であれば、婚姻は家の為に行われる。

 どのような理由かは分からないが、有朋にとって、義礼は恩人のはずだ。映子が気に入ろうがいるまいが、有朋の側に、拒絶する権利は無いように思われる。

 有朋の、隼人への依頼も、考えてみればおかしい。依頼主は有朋でありながら、金を払うのは、義礼なのだから。

「社長は、両親を知らずに育った僕を、不憫に思っているのでしょう」

「それだけですか?」

「他にどんな理由が?」

 残念ながら、圭に考えられるのは、ここまでだったらしい。小首を傾げて、真剣に考えている。

「相馬さんのお父様と、何かがあった。或いは、お母様が、憧れの君であった。とか」

 思わず、有朋の顔を見る。

 恐らく母親似。さぞかし美しい女性だろうと、簡単に想像できる。

 有朋の目は、笑っていなかった。

 なるほど。と、肯定的な返答をして、口元は笑んでいたが、圭を見る目には、怒りを感じさせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

処理中です...