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令嬢 二
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圭にとっては災難な、隼人にとっては幸いなことに映子も一緒に出て行ったので、義礼と二人きりになることができた。
「麻上さんとは、どういうご関係なのでしょうか?」
義礼が、怯えた声を出す。初対面の時とは全く印象が変わったが、義礼の身に起きた事を考えれば仕方あるまい。
「知り合いの子です。家があまり裕福ではなく、仕事をしたいと本人が言いますので。まだ子供ですが、頭はいい子なので」
「本当に? どういうお知り合いなのですか?」
「どうって、彼が気に入らないのでしたら、次からは連れて来ないようにしましょう」
ややむきになると、義礼は目を伏せて、顔を横に振った。
「すみません。ちょっと、知り合いの子に似ていたものですから」
「どなたですか?」
唇を噛み締めて、義礼は俯いた。
以前も同じだったな。と、隼人は思った。有朋の住んでいた場所を問うた時、覚えていない。と、なにかを隠している表情を見せた。
「ま、それはどうでもいいので、やめましょう。
相馬君から聞いたのですが、彼を養子に迎えて、高林を継がせるそうですね」
義礼は素直に頷いた。
「以前は映子さんに婿を取るのだと、相手まで決めていたそうですが」
「弟が、映子を嫁に出したいと言い出したのです。はっきりとは言いませんが、映子に好きな男ができたのでしょう。仕方ありません」
「そのお相手を婿に取ろうとは考えなかったのですか?」
「長男なのではありませんか?」
どうも、話が進まない。誰も、映子を嫁に出す理由を知らないのか?
疲れた表情の義礼に、いつまでも質問はさせてもらえまい。
「質問を変えます。
相馬君がこの家に来る前、どこに住んでいたか、教えてもらえませんか?」
「思い出せません」
二十数年前のことではあるが、何度か通ったであろう場所、しかも、引き取った子供の生家なら、普通は覚えているだろう。
事件によって、義礼が失った記憶は、一週間程度だと聞いている。
「そうですか。
襲われた前一週間のことは覚えていらっしゃらないと伺いましたが」
「そうです」
「当然、誰が書斎に入って来たかは、覚えていませんよね?」
義礼はきっぱりと頷いた。
(この人は、はっきりと肯定するか、否定するか、あるいは答えないかのどれかだな)
義礼が隠そうとしているのは、一体何なのか。出会って間もない隼人に、分かろうはずもない。だからこそ、探る楽しみもあると言うものだ。
隼人の気持ちを知ってか知らずか、義礼ははっきりと答えつつ、だんまりを決め込んだ。
「麻上さんとは、どういうご関係なのでしょうか?」
義礼が、怯えた声を出す。初対面の時とは全く印象が変わったが、義礼の身に起きた事を考えれば仕方あるまい。
「知り合いの子です。家があまり裕福ではなく、仕事をしたいと本人が言いますので。まだ子供ですが、頭はいい子なので」
「本当に? どういうお知り合いなのですか?」
「どうって、彼が気に入らないのでしたら、次からは連れて来ないようにしましょう」
ややむきになると、義礼は目を伏せて、顔を横に振った。
「すみません。ちょっと、知り合いの子に似ていたものですから」
「どなたですか?」
唇を噛み締めて、義礼は俯いた。
以前も同じだったな。と、隼人は思った。有朋の住んでいた場所を問うた時、覚えていない。と、なにかを隠している表情を見せた。
「ま、それはどうでもいいので、やめましょう。
相馬君から聞いたのですが、彼を養子に迎えて、高林を継がせるそうですね」
義礼は素直に頷いた。
「以前は映子さんに婿を取るのだと、相手まで決めていたそうですが」
「弟が、映子を嫁に出したいと言い出したのです。はっきりとは言いませんが、映子に好きな男ができたのでしょう。仕方ありません」
「そのお相手を婿に取ろうとは考えなかったのですか?」
「長男なのではありませんか?」
どうも、話が進まない。誰も、映子を嫁に出す理由を知らないのか?
疲れた表情の義礼に、いつまでも質問はさせてもらえまい。
「質問を変えます。
相馬君がこの家に来る前、どこに住んでいたか、教えてもらえませんか?」
「思い出せません」
二十数年前のことではあるが、何度か通ったであろう場所、しかも、引き取った子供の生家なら、普通は覚えているだろう。
事件によって、義礼が失った記憶は、一週間程度だと聞いている。
「そうですか。
襲われた前一週間のことは覚えていらっしゃらないと伺いましたが」
「そうです」
「当然、誰が書斎に入って来たかは、覚えていませんよね?」
義礼はきっぱりと頷いた。
(この人は、はっきりと肯定するか、否定するか、あるいは答えないかのどれかだな)
義礼が隠そうとしているのは、一体何なのか。出会って間もない隼人に、分かろうはずもない。だからこそ、探る楽しみもあると言うものだ。
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