長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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堕落

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 圭達三人は、応接室で、話しをしていたらしかった。

 隼人を見るなり、有朋は、圭の様子がおかしいと耳打ちした。そう言われて見てみると、目が赤く、顔色も良くないようだ。

「昨夜、眠れませんでした」

「言ってくれれば良かったのに。今日なら勇一もいるし」

「申しわけありません、捜査が気になって」

 体調不良を興味が上回ったのか。子供らしいと言えなくないが。

「勇一を迎えに来させるから、今日は帰るんだ」

 いいえ。と、圭は即座に頭を振った。

「ひとりで帰れます。中里さんのお手を煩わせるまでもありません」

 映子が傍で、隙を狙うような、爛々と光る目で、圭を見ている。環境の良くないことこの上ない。映子の傍にいたせいで、悪化したに違いない。

 電話が掛かってきて、有朋は席を外していた。

 圭を帰らせる為、勝手に玄関に向かうと、小さな声で、敏さんをお願いします。と、映子に聞こえぬように言った。余程気になっているらしい。

 あるいは、それほどまでに、映子の傍にいるのは苦痛なのだと、訴えたいのかもしれないが。

応接室に戻って数分、映子と二人きりでいるのは確かに、苦痛だった。興味津々に見つめられると、奇妙な気持ちにさせられる。映子からすれば、隼人を見るのは珍獣を見るのと変わらないのだろうが。

 戻って来た有朋は、圭がいないのに気付くと、お手洗いですか? と、問うた。

「いや、家に帰した」

 答えを聞くやいなや、有朋は慌て、隼人を非難するような声を出した。

「ひとりで帰らせるなど、危険ではありませんか?」

「もう道は覚えているだろうし、ひとりでも大丈夫だと言うから」

「しかし、あんなに綺麗な子、拐かしに遭ったりしては」

「拐かしって、多いの?」

「そんなこと、今に始まったことではありますまい。ご存知ないのですか?」

 全く、聞いたことはないが、この辺りの事情は、住んでいる有朋の方が断然詳しく、いかにも、隼人の無知を責めるような口調に、不安になった。

 こうしている間にも、山科の魔の手が密かに忍び寄っているのではなかろうか? 昨日も今日も同じ道しか歩いていないから、追いかけるのは簡単だ。

「今日はこれで失敬する」
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