長瀬萬請負 其の一 〜紅い髪の探偵〜

岡倉弘毅

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帳面 二

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 「二度。この方と父は、面識がありましたので」

「名前と年齢、その隣に男の名前。更に、日付が入っている。でも、圭ちゃんの欄には無い。これから察するに、恐らく、引き渡しの日付だろう。

 拘束する為の紐を用意していながら、使っていないのは、圭ちゃんに傷を付けまいとしたからだ。

 あの男、やっぱり子供を売り飛ばしていたんだよ」

 あまりのことに、現実味が無いのだろうか、圭は冷静だった。

「だとすれば、山科は今、焦っているでしょうね」

 冷静極まりない声。微かに嘲笑が含まれているのに、隼人は気付いた。

「焦っているなんてもんじゃないだろう。この帳面を警察に持って行かれたら、山科の悪事を世に知らしめることになる。最悪の状況を打破する為には、証拠品と共に、圭ちゃんを攫わにゃならなくなっちまったんだ」

「それにしても、どうしてあの警察官が、山科の手に落ちたんだろう」

 首を捻らずにはいられない。昨日までは、ただ単に隼人を目の仇にしていただけだった。それが何故突然、どうして山科の手下になったのか。

「長瀬さんは、高林さんの件で山科を訪ねたのでしょう? 山科は、高林に関われる人間の中で、あの男を選んだのではありませんか? 誰が見ても、金の力に屈する人間だとは、直ぐにわかるでしょうから」

「山科には、監禁している子供について話をしたい。と言って押しかけたんだ。顔の傷はいつついたのかと問いはしたが、義礼氏の件については話していない。

 第一あの男は昨日既に、義礼氏から来なくていいと言われていた可能性が高い」

 とはいえ、隼人を見つけ出すのは、大して骨の折れる作業ではあるまい。東京広しと言えど、こんなに派手な髪の男は、滅多にいない。外見の特徴を手掛かりにすれば、直ぐに居場所は知れる。高林家に関わっている事も。

 そうなれば、あの警察官を使うのは当然の選択とも言えよう。地位や金に弱く、隼人に対して良い感情を持っていないのだから、困らせる為にも、執念を燃やすだろう。

 今頃はこっぴどく叱られているだろうけれど。

「ここに書かれている子の家を探してくる。奴らの目的が少年少女なら、一日でも早く確保しなけりゃならないだろうからな。旬は短いもんだ」
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