40 / 126
帳面 三
しおりを挟む
「頼んだ。
俺は、相馬の過去を探る。相馬の家族と義礼氏の間には、隠された何かがある筈だ。そこに、山科が関わっていないとも限らない。
ところで、相談があるのだけど」
「なんでしょうか?」
「明日から暫く、俺が外に出る間は高林邸にいて欲しい。君を連れて歩くのは危険だ。
そう説明するから、君は怪しまれぬよう、高林家のことを調べて欲しい。お喋りの得意な使用人のひとりくらいはいるだろう」
圭は、心得た。とばかりに、にこりと笑った。
既に、「探偵」との肩書を付けられた隼人に、気を許して話しをする者はあるまい。その点、圭は子供である分、人の気持ちを緩めるにはもってこいの存在だった。一応、助手と言ってはいるが、まだそれらしい行動はしていない。端から見れば、隼人は保護者にしか映ってはいないだろう。
勇一郎は帳面を持って、飛び出してしまった。
殆ど捜査をしないまま高林家を出たので、まだ、昼前だった。
隼人は、万一に備え、麻縄を床下に隠した。
食欲は無いと言う圭に、ご近所さんから頂いたマクワウリを食べさせると、布団に入らせる。度胸があるのか、単に疲れていたのか、直ぐに規則正しい寝息を立て始めた。
『白い秋桜が咲いていました』
勇一郎が出て行って、二人きりになった時、圭が思い出したように呟いた。
『母は秋が好きなので、秋桜を見て喜びました。でも私は、秋桜にとまった烏揚羽が気になって仕方ありませんでした。普段はそんなことはないのですが、白を覆い隠す黒が、とても不吉に見えたのです。
その日、私が帰った時には既に、母は事切れていました。日当たりの良い縁側で繕い物をしていたのでしょう、裁縫道具が出ていました。座敷から、草履を突っかけて、庭に出たのでしょう、庭の真ん中で、胸を赤く染めて。
苦しんだ様子はありませんでした。
一つだけ幸いだったのは、お使いに出ていたばあやが、無事だったことです』
隼人は、その後、どうやって生活していたのかを聞いてしまった。
本当なら気を遣うべきだったのだろうが、圭は相変わらず感情を見せず、淡々と話していたものだから、つい、気になっていたことが口をついて出てしまったのだ。
『所有していた土地は、直ぐに買い手がつきました。その方の好意で、半月ほどはそのまま暮らしていたのですが、突然、土地を人手に渡したと言われました。
申し訳ありません。と」
俺は、相馬の過去を探る。相馬の家族と義礼氏の間には、隠された何かがある筈だ。そこに、山科が関わっていないとも限らない。
ところで、相談があるのだけど」
「なんでしょうか?」
「明日から暫く、俺が外に出る間は高林邸にいて欲しい。君を連れて歩くのは危険だ。
そう説明するから、君は怪しまれぬよう、高林家のことを調べて欲しい。お喋りの得意な使用人のひとりくらいはいるだろう」
圭は、心得た。とばかりに、にこりと笑った。
既に、「探偵」との肩書を付けられた隼人に、気を許して話しをする者はあるまい。その点、圭は子供である分、人の気持ちを緩めるにはもってこいの存在だった。一応、助手と言ってはいるが、まだそれらしい行動はしていない。端から見れば、隼人は保護者にしか映ってはいないだろう。
勇一郎は帳面を持って、飛び出してしまった。
殆ど捜査をしないまま高林家を出たので、まだ、昼前だった。
隼人は、万一に備え、麻縄を床下に隠した。
食欲は無いと言う圭に、ご近所さんから頂いたマクワウリを食べさせると、布団に入らせる。度胸があるのか、単に疲れていたのか、直ぐに規則正しい寝息を立て始めた。
『白い秋桜が咲いていました』
勇一郎が出て行って、二人きりになった時、圭が思い出したように呟いた。
『母は秋が好きなので、秋桜を見て喜びました。でも私は、秋桜にとまった烏揚羽が気になって仕方ありませんでした。普段はそんなことはないのですが、白を覆い隠す黒が、とても不吉に見えたのです。
その日、私が帰った時には既に、母は事切れていました。日当たりの良い縁側で繕い物をしていたのでしょう、裁縫道具が出ていました。座敷から、草履を突っかけて、庭に出たのでしょう、庭の真ん中で、胸を赤く染めて。
苦しんだ様子はありませんでした。
一つだけ幸いだったのは、お使いに出ていたばあやが、無事だったことです』
隼人は、その後、どうやって生活していたのかを聞いてしまった。
本当なら気を遣うべきだったのだろうが、圭は相変わらず感情を見せず、淡々と話していたものだから、つい、気になっていたことが口をついて出てしまったのだ。
『所有していた土地は、直ぐに買い手がつきました。その方の好意で、半月ほどはそのまま暮らしていたのですが、突然、土地を人手に渡したと言われました。
申し訳ありません。と」
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる