殺された人形

岡倉弘毅

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ドレス

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 「変わり者の娘で済まないね」

 少々腹が立たないでも無い。一生に一度の事なのに、どういう扱いだろう。と。

「変わり者でも、大事な娘には変わりないんだよ。

 幸せになりなさい。そして、彼を幸せにしなさい。里美さんが私を幸せにしてくれたように」

 行彦の目には、涙が光っていた。

 しんみりしたのは、そこまでだった。

 行彦はよっぽど嬉しかったのか、さっそく花嫁衣装なる物を作ろうと、ドレスの型録カタログを持ち出してきた。

 驚いたのは有紀だ。

「あたしは女の恰好はしないよ」

 食事の用意をしながら、きっぱりと言い放つ。

「なにを言っているのだね? それじゃあ、彼に女の恰好をしろってのかい?」

「それはそれで面白そうだね」

 慌てて洋史が首を振る。

「お義父さん、できれば有紀には、洒落た背広を作って頂ければ……」

「二人して背広姿なのかい?」

 呆れたとばかりの声に、洋史より有紀や行彦の方が常識に囚われているのか。と、驚かせられた。

「せっかく、ドレスを作る良い機会なのにねぇ」

「自分の都合だけで話さないでくれないかい」

「ちょっと先になるけど、姪の結婚式まで我慢して頂戴」

 里美が明るい声で助け船を出す。

「あの子なら三着くらい着替えてくれるでしょうからね」

 娘と姪は違う。と言うのかと思いきや、行彦は笑顔になった。

「そうかい。じゃあ、我慢しようか」

 機嫌を直したらしい。

 しかしそれからも大変だった。いつから一緒に住む? 結婚式はいつ頃にするの? と、行彦の質問攻めに、洋史は落ち着いた態度で応えた。

「正直に言えば、まだそう言う話はしていません。申し訳ありませんが、僕達に任せてはくれないでしょうか?」

「しかし、早くしないと君に別の縁談が舞い込まないとも限らないし」

「僕は有紀以外の婦人には興味はありませんし、お義父さんやお義母さんも好きなので、目移りなどしませんよ」

 行彦は照れたように笑った。

「そうか、有紀を婦人として見てくれる男がいるとはねぇ。ありがたいことだ」

 とりあえず、行彦は落ち着いたらしかった。

 一つだけ感心したのは、洋史の経済状況を聞かなかったことだった。まだ学生であるから、普通の親なら、生活費や学費が親から出ているのか、自分で稼いでいるのか、気になることだろう。
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