殺された人形

岡倉弘毅

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ドレス 二

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 洋史本人は、勘当同然の身だと白状している。つまりは、自活しているに違いないのだ。

 有紀は、洋史から具体的に聞いたことはないが、文房具店に行くと必ず、便箋を見る。洋史が描いた物は一目で分かる。

 『ミモザ』で一人、画帳に人物を描いていて、それが、小説の挿絵だと聞いたこともある。画家としての実績はまだ無いに等しいが、仕事は色々とあるようだ。

 なにより、有紀も仕事をしているのだから、さほど気にする必要もない。

 ご機嫌で食事を終えた後、背広の生地を決める為に、男同士で話しを始めたのだが、二人は鉛筆を持ち出し、絵を描き始めた。

 どうやら、有紀が結婚式で着るための背広のデザインを始めたらしかった。

「楽しそうね。行彦さんと洋史さんは共通の話題があるから、仲良くやれそうだわ」

「そうだね。二人とも職人と言えば職人だからね」

「えぇ。そしてなにより、有紀を大事に思っているから」

 里美を見る。娘に対する愛情に溢れた表情に、胸が熱くなった。

 いつか、自分もこんな表情をすることがあるのだろうか。そんな考えは恥ずかしくもあるが、嬉しくもあった。



 翌日、目が覚めた時、思い出した。昨日西洋料理店で見た、美しい女のことである。どこかで見たような気がして仕方が無かったが、夢の中で見たのだと思い出した。

 桜の木に張り付けられたようにして、涙を流していた女である。夢の中で有紀は、三月だと認識していた。顔が似ていたのだ。

 昨日の女の髪が黒々としていて真っ直ぐだった為、雰囲気が違っており、今まで気づかなかった。

「あの女と三月は血縁関係があるのか?」

 兄弟姉妹はいないと聞いている。引き取ってくれた伯母夫婦には子供がいないとも。

 年齢はおそらく、二十代半ば。従姉妹など、年の近い親戚ではないだろうか?

 美しいだけ、三月に似ているだけ。なのになぜ、こんなに気になるのか。有紀は理解できなかった。

 しかしすぐに、女は美しいだけではなかったのだと気付いた。

 異性と高級な店で美味しいお菓子を頂く。甘い場面のはずだが、女の視線は冷たく、愛情の欠片も感じられなかった。男は、女を少なくとも、愛欲の対象として見ているらしかったが。

 今日、洋史は浅草に行くと言っていた。直通が世話になっていた相手を探して、生前の話を聞きたいのだと。

 誰かを幸せにするためにはまず、自分が幸せにならなければ。と。
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