殺された人形

岡倉弘毅

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浅草

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 平日にも関わらず、浅草は沢山の人出で賑わっていた。

 着物の柄、最近は洋服のデザインなども頼まれている為、流行を求めて時々訪れはするが、ほとんどモダンな紳士淑女を見るばかりで、見世物小屋には近づいたこともなかった。

 洋装と言えば学生服しか持っていないので、昨日の内に頼んで、体型の似ている友人からインヴァネスを借りた。この温かい時期に上着が必要なわけはなかったが、直通に似た格好をしていた方が良かろうと、考えついたのだ。

 中には学生服を着込んでいるので、少々暑い。

 時々手巾で汗を拭いながら、周りを見渡す。極彩色の幟や看板が刺激的だ。

 毒蛇。と男らしい形の良い文字で書かれた紙がぶら下がっているかと思うと、熊男。と、緑の背景に、熊なのか人間なのか分からぬ絵が描かれている看板が掲げられており、足が竦まないでもないが、気持ちを落ち着けて前を向いた。

 自分だけではない。有紀の為にも克服しなければならないのだ。と、己を奮い立たせる。

 直通が憎んでいた相手が永吾だとしても、洋史自身に罪は無かった。と開き直れるほど、図太い性格ではない。

 生きるのが辛いと思いながら生きていたであろう直通の短かった一生を理解し、墓参りで詫びたいと思うのだった。

 これから、洋史は幸せになる努力をしなければならない。だからこそ、直通を理解し、その上で、離れなければならないのだ。と。

 看板を眺める。どこに直通はいたのだろう。猟奇的な催しの小屋を探すべきか。

 中には遠眼鏡を見せて貰える小屋もあるし、欧州の大都会、花の都巴里のジオラマを俯瞰できる小屋もある。これらならば子供連れでも楽しめそうではあった。

 大きな建物から、どっと人が出て来た。電気館だ。映画が終わったのだろう。

 向こうからは、オペラらしき歌の一節を鼻歌で陽気に奏でている男も見える。娯楽の殿堂だけある。どの顔も楽しそうだ。

 直通はここで毎日、なにを考えていたのだろうか。大勢の他人の楽しそうな様子を見るのは、辛くなかっただろうか?

 ふと、疑問が湧き上がった。
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