133 / 202
大部屋女優
しおりを挟む
「あぁ。いつも鎖をぶら下げてて、その先は懐に潜り込んでてな、一度引っ張り出したことがあったんだ。
懐中時計かと思ったら、首飾りでさ。男がなんでこんなもん。と思ったが、直道が慌てて懐にしまい込んで顔を赤くしてたのが気になった」
「その首飾りは……」
「直道が身に着けてたもんは遺族に渡したって聞いたぜ」
そうなると一番怪しいのは洋史の部屋ということになるが、全てを持ち帰っているわけではあるまい。
「二三枚は名が売れてる頃に売りに出されはしたらしいけど、もう並んじゃあるまい」
「いつ頃です?」
「もう三年にはなるかな?」
三年くらい前なら、平助が持っている可能性がある。平助は芸者や女優の写真が売り出されると漏れなく買っては、作品造りに役立てていた。
小説の挿絵で美人を描かなければならなかった時、何枚か借りたことがある。
「けど、大部屋女優だったから一人で写ってるもんはないと思うぜ」
大部屋女優……どこか悲しい響きがあった。
成功するのは一握りの人間に過ぎない。それは分かっている。脇役でも女優として名が知れたならそれはそれで幸せと言えるだろう。そこまで行くことすらできない人間が大半なのだから。
主役となれなくとも、仕事にできるだけ幸せと思うか、主役でなければ意味がないと考えるかで人生は変わるだろう。
洋史も当然、画家としての成功を夢見てはいるが、現状でも十分生活していけるだけは稼いでいるのでそれなりに満足している。
細々とした活動ではあるが、八木のように自分を見つけてくれる人もいる。一人だろうと二人だろうと自分の絵を好んでくれる人がいれば、幸せには違いない。
これから先もそう考えられるかどうかはわからぬが、蕗子よりは洋史の方が幸せであることだけは理解できた。
「気になるのはしゃあないが、あんま気にしない方がいいぜ。何しろ主義者だ。あんたになにかあっちゃ直通に合わせる顔がなくなっちまう」
「気を付けます。
ただ、直通にとって特別な人であったのなら……」
「直通にとっちゃそうでも、蕗子にとっちゃそうでなかったかもしれん」
「かもしれませんが……」
懐中時計かと思ったら、首飾りでさ。男がなんでこんなもん。と思ったが、直道が慌てて懐にしまい込んで顔を赤くしてたのが気になった」
「その首飾りは……」
「直道が身に着けてたもんは遺族に渡したって聞いたぜ」
そうなると一番怪しいのは洋史の部屋ということになるが、全てを持ち帰っているわけではあるまい。
「二三枚は名が売れてる頃に売りに出されはしたらしいけど、もう並んじゃあるまい」
「いつ頃です?」
「もう三年にはなるかな?」
三年くらい前なら、平助が持っている可能性がある。平助は芸者や女優の写真が売り出されると漏れなく買っては、作品造りに役立てていた。
小説の挿絵で美人を描かなければならなかった時、何枚か借りたことがある。
「けど、大部屋女優だったから一人で写ってるもんはないと思うぜ」
大部屋女優……どこか悲しい響きがあった。
成功するのは一握りの人間に過ぎない。それは分かっている。脇役でも女優として名が知れたならそれはそれで幸せと言えるだろう。そこまで行くことすらできない人間が大半なのだから。
主役となれなくとも、仕事にできるだけ幸せと思うか、主役でなければ意味がないと考えるかで人生は変わるだろう。
洋史も当然、画家としての成功を夢見てはいるが、現状でも十分生活していけるだけは稼いでいるのでそれなりに満足している。
細々とした活動ではあるが、八木のように自分を見つけてくれる人もいる。一人だろうと二人だろうと自分の絵を好んでくれる人がいれば、幸せには違いない。
これから先もそう考えられるかどうかはわからぬが、蕗子よりは洋史の方が幸せであることだけは理解できた。
「気になるのはしゃあないが、あんま気にしない方がいいぜ。何しろ主義者だ。あんたになにかあっちゃ直通に合わせる顔がなくなっちまう」
「気を付けます。
ただ、直通にとって特別な人であったのなら……」
「直通にとっちゃそうでも、蕗子にとっちゃそうでなかったかもしれん」
「かもしれませんが……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
立花家へようこそ!
由奈(YUNA)
ライト文芸
私が出会ったのは立花家の7人家族でした・・・――――
これは、内気な私が成長していく物語。
親の仕事の都合でお世話になる事になった立花家は、楽しくて、暖かくて、とっても優しい人達が暮らす家でした。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【本編完結・番外編追記】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。
As-me.com
恋愛
ある日、偶然に「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言する婚約者を見つけてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃりますが……そんな婚約者様はとんでもない問題児でした。
愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私は他の女性を愛するあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄します!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
番外編追記しました。
スピンオフ作品「幼なじみの年下王太子は取り扱い注意!」は、番外編のその後の話です。大人になったルゥナの話です。こちらもよろしくお願いします!
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』のリメイク版です。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定などを書き直してあります。
*元作品は都合により削除致しました。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
貴方だけが私に優しくしてくれた
バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。
そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。
いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。
しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー
【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる