殺された人形

岡倉弘毅

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大部屋女優

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 「あぁ。いつも鎖をぶら下げてて、その先は懐に潜り込んでてな、一度引っ張り出したことがあったんだ。

 懐中時計かと思ったら、首飾りでさ。男がなんでこんなもん。と思ったが、直道が慌てて懐にしまい込んで顔を赤くしてたのが気になった」

「その首飾りは……」

「直道が身に着けてたもんは遺族に渡したって聞いたぜ」

 そうなると一番怪しいのは洋史の部屋ということになるが、全てを持ち帰っているわけではあるまい。

「二三枚は名が売れてる頃に売りに出されはしたらしいけど、もう並んじゃあるまい」

「いつ頃です?」

「もう三年にはなるかな?」

 三年くらい前なら、平助が持っている可能性がある。平助は芸者や女優の写真が売り出されると漏れなく買っては、作品造りに役立てていた。

 小説の挿絵で美人を描かなければならなかった時、何枚か借りたことがある。

「けど、大部屋女優だったから一人で写ってるもんはないと思うぜ」

 大部屋女優……どこか悲しい響きがあった。

 成功するのは一握りの人間に過ぎない。それは分かっている。脇役でも女優として名が知れたならそれはそれで幸せと言えるだろう。そこまで行くことすらできない人間が大半なのだから。

 主役となれなくとも、仕事にできるだけ幸せと思うか、主役でなければ意味がないと考えるかで人生は変わるだろう。

 洋史も当然、画家としての成功を夢見てはいるが、現状でも十分生活していけるだけは稼いでいるのでそれなりに満足している。

 細々とした活動ではあるが、八木のように自分を見つけてくれる人もいる。一人だろうと二人だろうと自分の絵を好んでくれる人がいれば、幸せには違いない。

 これから先もそう考えられるかどうかはわからぬが、蕗子よりは洋史の方が幸せであることだけは理解できた。

「気になるのはしゃあないが、あんま気にしない方がいいぜ。何しろ主義者だ。あんたになにかあっちゃ直通に合わせる顔がなくなっちまう」

「気を付けます。

 ただ、直通にとって特別な人であったのなら……」

「直通にとっちゃそうでも、蕗子にとっちゃそうでなかったかもしれん」

「かもしれませんが……」
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