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第6章 待ってる

【神的領域】

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 ここに来るようになってから
もう何度も何度もさりーと抱き合って
求め合っていると言うのに

俺はまだ一度として触れたことのない場所がある

ヘルスに行ったことのある人間なら
普通なら考えられないと思うが

4度目の来店にも関わらず俺は
まだ一度としてさりーの“秘部”を
直接見ることすらしなかった。

何故?と問われると初めてさりーと体を合わせた時
彼女の口の中に発射出来なかったのと同じ思い…

あまりにもさりーが神聖すぎて
美しいものを汚したくない、そんな思いから
躊躇が生まれたと言う理由。

そしてもうひとつは男女のたしなみとして
いきなりではなく段階を踏んでから
濃厚に触れ合いたいと言う思い。

 初めて求め合うカップルがいたとして
初回から秘部に指を入れこねくり回す…

そんなデリカシーのない男ではいたくないと言う
妙なプライドもあった。

お相手は風俗嬢だろ…やりたいことさせてもらって
すっきりヌイてもらってナンボじゃないのか?

そんなこと言う奴が目の前にいたら
それこそ前歯の2、3本へし折ってやろうか?

そんな怒りすら覚えるのだ。

 少なくとも俺はそんな気持ちになれない
だから何も出さなくてもエクスタシーに達した、

それは偽りのない事実で何の後悔もなかった。

少なくとも彼女と向き合った他の客は
おそらくそんなことは考えないだろう、

例え初対面であろうと遠慮なく指を入れたり
それこそ、どこもかしこも嬉々として
舐め回したりしているかも知れない。

それはそれで当然の行為かも知れないが、
俺には俺の考えやスタンスがある。

 しかしさりーの立場から考えると

“何故、光々は責めてくれないの?”
“もしかして私に原因があるのかな?”

そう思うかも知れない。

そして俺は気づいていた、さりーは決して自分から
“舐めて”とか“指を入れて”とは言わないであろうことも。

初回で俺が"責めてほしい"と言った
その言葉をきっと今も覚えていて

俺が“受け派”だから無理強いしたくない…
そんな風に思っているのかも知れない。

 何度か会うことで、トークでやり取りを続けることで
少しずつさりーの人となりがわかってきた、

だから前回俺が「次は責めるよ」と言ったのは

ーそうじゃないんだよ、さりーが好きだから
あんなことやこんなことしなくても俺はイケるから…

そんな思いと

「もう好きにしていいのかな?さりーのことを」

この2つの思いが交錯して“責め”と言う
選択肢に至ったからだ。

先日の帰り際に俺がこの言葉を告げた時
はにかむように微笑んださりーを見て確信した

ーいいよ…光々なら好きにして

さりーがそう告げたように感じたから
“そろそろ責めよう…さりーのことを”、と。


「私…横になるね」

俺はもう矢も盾もたまらず
仰向けになったさりーの胸に顔を埋め

その柔らかな乳首の先端を片手でなぞりながら
もう片方の乳首を優しく咥え込んだ。

「あ…あんっ…」

さりーから早くも淡い吐息が漏れる

俺は代わる代わるさりーの乳首を吸っては舐め、
舐めては吸い、いつものように軽く歯を立てる

その度さりーは
「あ…あ…いい…」

吐息交じりの小さな喘ぎ声を上げ俺を攻めを受け入れる
そしてその手は常に俺の“モノ”を軽く握りしめている

そして俺は片方の手をさりーの股間へと伸ばし
遂にその柔らかな肉襞を指でまさぐった。

「あ!あぁん!」

これまで小さく喘ぐさりーの声が一際大きくなる

 俺は手探りでさりーのク○トリスを指でなぞり
そのかわいらしい膨らみを揉みしだきながら
徐々に指を秘部の中心へと這わせた。

「あぁぁぁ…!」

少し湿り気を帯び始めたさりーの秘部は
俺の指で少しずつ開かれてゆく…

この時…ふと我に返ってこう思った。

さりー…あんまり濡れないんだな

俺の責めが下手だから?
さりーは責めながらでもそんなに興奮してなかった?
それともあまり濡れない体質?

過去に一度だけそんな女性と関係を持ったことがある

いくら指を入れようとも舌を這わせようとも
全く“濡れない”女性

だからと言って“感じていない”わけではない
むしろ挿入した後の乱れぶりは
指で責めた時の比ではなかった

“さりーもそんなタイプなのかな?”

そう思うと俺の指の動きは少しずつ鈍り始めた

ならば股間に顔を埋めて舌を使えば、と
思いはしたが

このご時世、その手の責めは
お店から制限があるのでは?と危惧した。

その理由は有料オプションの"ある用語"を見て
それを女性の秘部を口で責める行為なのでは?

そう勝手に思い込んでしまったのだ。

結局途中でやめる形となり攻守交代となった。

「ごめんねさりーあまり責めれなくて…」

「うぅん、全然…そんなことない…気持ちいいよ」

「何か痛かったら悪いな…なんて思うと」

「強くよりそっと触られるのが気持ちいいの…」

さりーはきっと不完全燃焼なのだろう、
そう思った俺は小言のひとつでも言われるかも…
そんな覚悟をしていた。

「ねぇ、光々…」

「え…?」

そして穏やかな笑顔でさりーはこう言った

「攻められないのは…優しいからだよ、光々が」

「え?」

「誰だって嫌だよね…痛いのは」

「う、うん」 

「でも…私はうれしいよ…光々が責めてくれたの…初めてだもん」

女神か…彼女は…?

まさか消極的な俺に対し
こんな感動的な言葉を投げ掛けられるなんて…

俺は深い感銘を覚えた。

 確かにさりーからはこれまでもトークの会話で
俺の心の琴線に触れるような言葉を
知らず知らずのうちに受け取っていた。

ここに来て、さりーに対する尊敬の念、
出会えたことへの畏敬の念が高まっていくのが

手に取るように強くなっていくのを覚えた。
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