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第6章 待ってる

【百人百様】

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 攻守交代となりいつものようにさりーは
いつも以上に俺の股間を丹念に責めてくれる…

そしてそんな淫靡なやり取りの最中でも
会話が途切れることはない

「ねえ覚えてる?…?の話」

「老けてる…?と勘違いした時の…ははは」

「あの時、私、背中拭けてないのかー?って思わずタオル握りしめちゃった」

「俺は何で今さらそんなこと聞く?…って思った」

「でもね…あの時、光々は即答で『老けてないよ』て言ってくれて嬉しかったぁ」

「そりゃこんなにかわいいさりーが老けてるわけないから…ね」

「ふふ、ありがと」

こんな会話を続けながらでも俺たちは
何一つ憚ることなく激しく求め合っている。

「ねぇ…光々、ちょっと愚痴聞いてくれる?」

「いいよ…いくらでも」

ー少し前に口コミ書いてくれたお客さんなんだけどね

何か書くのが面倒くさかったらしくて
どこかの誰かの文章をそのままコピペして
投稿したんだよ!


その瞬間俺は何とも言えない怒りがこみ上げてきた。


俺は口コミを書く際は誠心誠意
さりーの人気が上がればと思い

心を込めて言葉を紡いできた。

なのに何だ?どこかの言葉を拾ってきて
それをコピペするだなんて…

その行為は明らかに
口コミのガイドラインに抵触している。

俺は口コミを書く時は規約違反にならないよう
ガイドラインに目を通しているから

承認されにくい“問題あり”な口コミの例も
それなりに把握している。


俺の書く口コミは
時にそのボーダーすれすれなこともあるが

基本、体験談をメインに
さりーをお薦めする内容を書いてきた。


「そこにね、"攻めたら大洪水…"て書いててさ」

「あ!それ知ってる!俺も読んだわ、書いてた女の子の名前も違ってたよね」

「そう!私も当たり障りなくお礼のメッセージ書いたんだけどね…そんなことしないから」


ー確かに今日の感じでは…そうだよな
大洪水どころか…

 その口コミは確かに俺も目にした
だからこそ今日どんなに責めてもあまり濡れない

それは自分の不甲斐なさのせいだと
さりーに対して申し訳なさすら感じていたと言うのに…

「その後、それ読んだ他の人から“潮吹きするんですか?”てトークで問い合わせ来たりして大変だったの!」

「あははは!そりゃ迷惑だね!」

「もう!笑い事じゃないよ!ほんと困ったんだから説明するのに…私ここではそんなに濡れないよ」

そうか!そう言うことか!

俺は何となく溜飲が下がる思いになった。

さりーがそこまで濡れずに
じんわり湿った感じだったのは…

そう言うことだったんだな…

「俺もその口コミ読んで…ちょっとイラっとしたんだよね」

「そうなの?代わりに怒ってくれたんだ」

ーだって、こんなさりーが攻められて
潮吹きするなんて考えたくないだろ…

その言葉は胸にしまい込んで

「今日はどうだった?」

「濡れてた…よ、気持ちよかったもん」

「なら、いいんだ、ま、次からはほんとのこと書いて、って言っておいたら?」

「そうだよね」

 さりーのプレイは正直とても優しい
本格的な濃い風俗プレイを望む客にとっては
少し物足りないかも知れない…が

醸し出す雰囲気や彼女感は半端なく凄まじい。

「でもさ、プレイありきで来る人にとっては大事なことなのかもね」

「そう言う人はね…一回来たら来なくなる…ふふっ」

「目的の違い、てとこかな?」

「そうかも、ふふ」

 風俗においてプレイと人間性
どちらが基準かと問われると
俺は間違いなく後者だと答えるだろう。

初めて行くお店で常に俺が希望すること…

「明るくて楽しい娘をお願いします」

いくらお金を払っているとは言え
大切なのはプレイスキルよりも気持ちの繋がり

そこに“業”が上乗せされれば
これ以上求めることは何もない

さりーはそのどちらも兼ね備えたハイブリッドな
この場において“絶対的彼女感覚”を持ち合わせた存在

そう確信した。
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