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しおりを挟む彼の無邪気に笑った顔が好きだった。
いつもは偉ぶってバカにするような口を叩いてきたり、ツンケンとした態度をとっていたりしたが、自分を取り繕っていた彼の、ふと気が緩みふわりと笑う彼の顔が好きだった。
それはいつも些細なことで、綺麗な蝶がひらひらと舞っているのを見つけた時だとか、小さな子供にかっこいい!と言われた時だとか。
心の底から嬉しそうに笑う彼を見て、ああ、本当はこんなにも真っ直ぐで優しい人間なのだろうな、と常々感じていた。
彼の偉そげに取り繕っている様は、どこか寂しげにも見えた。自ら人とあまり親密にならないようにしているようにも見えたので、人と関わるのが苦手なのだろうか、などと思ったが、しかし、人に話しかけられるとよく嬉しそうに笑い、会話をしている時などは彼の気が緩み本当の笑顔が垣間見えることが多かった。
察するに、彼は、元は人懐こい性格だったのだと思う。しかしそれを何かが、彼を変えてしまったのだろう。
そう思うと、心底そのことが悔やまれる。
きい……っと小さな音を立てて、白く塗られた扉を開ける。ここは落ち着く場所だ。生まれた国がない彼が、「この町は俺の第2の故郷なんですよ。」なんて少し嬉しそうに言っていたのを思い出す。彼は今、どうしているだろうか。天国では、心の底から笑えているといいな……。
そんなことを考え、歩みを進める───が、ふと、違和感に気づく。
(ん?棺の場所がズレてる……?)
少し胸騒ぎがして、小走りで棺の元へ駆け寄ると。
その棺の蓋は少しズレて外れており、中身は───もぬけの殻だった。
「……は?おい、嘘だろ?」
誰かに彼の死体が盗まれた……?
いや、そんなことをしてどうするんだ。確かに彼の人気は冒険者の間ではとても高いと言えるだろう。
しかし、そんなことをして何になる……?
……いや、魔術士の中にはネクロマンサーもいたりする。
死魔術を行い、死体を操ることが出来る術を使う奴らだ。死体に意志を持たせた上で、主人に従順にさせることもでき、奴隷に使われてたりもする。もちろん非合法だが。
よくあるのは、性奴隷だ。
従順にさせた死体に、奉仕をさせるのだ。なんとも卑劣なやり口だがそれがイイと、密かにネクロマンサーに依頼をする腐ったような奴もいる。やはり1度死んでいるため、よっぽど見目が良いやつじゃなきゃ術を使われ、奴隷として使われたりはしないのだが、彼となると…………。
グッと拳を握る。
まさか、と思う。
でも、他に彼を奪う理由も思いつかない。
もしそれが本当だと言うのなら、そんなことをするやつは、絶対に俺が許さない。
必ず、彼を盗んだやつを炙り出してやる。
ギラギラとした目つきで、犯人への恨みを1人募らせたのだった。
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