用済みになった貴族の養子の子が本当の愛を知るまで

チョココロネ

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先生の号令が森に響き渡ると同時に、僕たちは一斉に木々が茂る奥へと踏み込んだ。制限時間は90分、目標は100枚ある赤い札をできるだけ多く回収する事だ。

(成績はお父様にも届くから、ちゃんとやらないと……)

生徒同士の協力が許可されているため、今回はレオン君とテルノ、そして弟のアランと一緒に団体行動することにした。いざ気合を入れて踏み込んだ森は、思ったより深く、頭上まで生い茂った木々が光を遮り、まるで夕方のように薄暗い。どこか湿っていて、不気味さすら感じさせた。

ひゅう、と冷たい風が枝を揺らすたび、葉っぱがガサガサと音を立てる。その音は、まるで誰かが背後から近づいてくるように聞こえて、自然と体が緊張した。

「よし、今回の作戦は、俺とアーヴェントが前に出てトラップを警戒し、その後ろでノア兄様とテルノが札を探す!これでいいんだよね?」

アランが振り向きながら僕たちに確認する。アランの表情は真剣そのものだ。

「うん、あってるよ!それと、他の生徒からの妨害は僕とノア君で警戒するからね!みんなで頑張ろう!……仲良くやろうね!」

そう言って、テルノはいつもの調子でにっこり笑った。

その後、その作戦通りに順調に森の探索を進めていくうちに、テルノが一枚の赤い札が岩場のくぼみに隠されているのを見つけた。

「あ、札あったよ!岩の隙間にちょうど一枚!」

「……ほんとだ!すごいテルノ!」

「ふふ、まあね。」

僕はテルノとハイタッチを交わした。掌が

「罠があるかもしれない。俺が行こう」

そう言うと、レオン君が用心深く岩場へ一歩足を踏み出す。レオン君の身のこなしはいつも安定していて、頼りになる。
───しかし、その瞬間だった。

ビュッ!

地面に這うように張られていた細いロープが、レオン君の足首にぐるりと二重に巻きつき、彼の身体がぐらりと傾いだ。ロープの先には、木の枝で隠された罠が設置されていたようだ。

「……危ない!」

僕とテルノが目を見開いたその時、倒れそうなレオン君を、横にいたアランが咄嗟に左腕で抱きとめ、何とかレオン君はバランスを保った。
レオン君の体はアランの胸に預けられる形になっている。

「……助かった」

レオン君は僅かに目を見開いた。
アランはすぐにレオン君から離れると、ロープに絡まれたレオン君の足元を睨みつけた。

「……しっかりしろよ、アーヴェント。こんな罠で足を取られるようじゃ、ノア兄様の隣に立つ資格はないからな」

「……俺がいつ、ノアの隣に立つことを望んだ……?それはお前の勝手な願望だろう。履き違えるなよ……!」

なぜかレオン君とアランは互いを睨みつけ、ピリピリとした空気が流れる。テルノは深いため息をついた。

「はいはい、もうわかったから。二人とも仲良くって言ったのに!……もう。それにいつになったらレオン君は素直になるんだか……。」

ブツブツと文句を言うテルノの横で、レオン君は携帯していたナイフでロープを切りさいた。そのロープの張りが緩んだのを見計らい、レオン君は手で奥の仕掛けを引っ張った。すると、そこには最初に発見した札とは別に、さらに二枚の赤い札が隠されていた。

「お、ラッキーだな。二枚もあったぞ」

「え、ほんとに!?やった~!これで3枚だね!」

「この調子で行けそうだね、頑張ろう!」

「……うん!」

その後もしばらく進み、岩場の偽装トラップや、地面に掘られた浅い落とし穴など、いくつかの罠をかわしながらも順調に札を回収していった。

しかし、突然、前を進むレオン君とアランが落ち葉を踏みしめた途端、乾燥した植物の粉末が一気に噴き上がり、周囲が濃い色の煙幕に包まれた。視界を遮るための、妨害トラップが発動したのだ。

「くそっ、見えない!」

「うわあ、なにこれ最悪!……って、ちょっと!!」

突然、テルノが煙の中で大声をだした。

「おい、大丈夫かテルノ!何があった!」レオン君が叫ぶ。

「……最悪、誰かに僕が持ってた札、ほとんど取られちゃった……!誰かにポケットに手を突っ込まれた……!」

「なんだと!?」

煙が段々と薄まり、みんなの姿がだんだん見えてくる。そこには、ポケットを抑えながら青い顔をしたテルノがいた。

「みんな、ごめん……」

「いや……きっとこの罠を使って他人から札を奪う作戦を立てていたんだろう。テルノに責任はない。罠に気づけなかった俺達も悪い。……すまなかった」

レオン君がテルノの肩を力強く叩く。

「……また、札たくさん見つけよう。まだ時間あるから!」

しょんぼりとするテルノに僕は時計を見せる。
残された時間はあと、約30分。

「まあ、これはみんなの責任だな。こっからハイペースで進んでじゃんじゃん札見つけよう」

「うん、そうだね……アラン君。みんな、ありがとう」

テルノが立ち直る。

「ここからは時間がないし、小走りで進もう。少し危険かもだが、ペースを上げるぞ。いいよな?」

「うん、そうしよう!」

みんなの意見が固まったところで、また探索を始める。残りの時間を意識しながら、僕たちは一気に速度を上げた。
みんなで声を掛け合い、次々と札を回収していく。そしてついに、残すところあと10分というところまで来たその時。

「……あっ、あそこに札が!」

「ナイス、ノア君!よく気づいたね!」

茂みの中に、札が落ちているのを見つけた。

回収しようと思ったその時───横から、他の生徒たちが現れる。

「あ、札だぞ!……って、お前ら……」

その生徒たちは、僕たちを見て、足を止めた。

「悪いが、その札は俺たちが先に見つけていた。譲って貰えないか?」

レオン君が冷たい目で一歩前に出て牽制するが、相手はそれで引き下がらない。

「そんな理由で俺らが札を譲るわけないだろ!どいてもらおうか!」

そう叫ぶと、なんとその生徒はナイフをレオン君に向けた。
あのナイフは、罠を解除する時などに使う用で、人に向けるのはこのゲームでは厳禁とされている。

「……それは、ルール違反だろ」

レオン君は声を低くする。

「……はは。関係ない!悔しかったらお前もナイフを出すんだな、ほら!早くしろよ!」

そう言いながら、こっちにナイフを向けたまま向かってくる生徒。
危ない、このままじゃレオン君が……!

そう思ったのも束の間、視界の端で他の生徒が別の方向の茂みに忍び寄るのが見えた。

(ナイフの攻撃は囮か!レオン君たちを釘付けにして、その隙に札を盗む作戦だったんだ!)

それに気づいた僕は、そうはさせまいとレオン君を追い越して茂みに向かって走った。
しかし、茂みにいた生徒に、僕は勢いよく突き飛ばされる。

「邪魔だ!こっち来んなよ!」

「……えっ、うわあっ!」

ガタイの良い生徒に思い切り突き飛ばされ、僕はすぐ側の崖の上でぐらりと身体が傾いてしまう。

「……ノア兄様!危ない!」

アランが僕に向かって手を伸ばしたが、僕の身体はすでに崖の外側に大きく傾いていた。アランに腕を掴まれるが、そのまま耐えることが出来なかった。
僕を助けようとしたアランも、その勢いに引っ張られて、二人で崖を転がり落ちていった。


崖の上では、呆然としたライバル生徒と、僕たちの名前を叫ぶレオン君とテルノが残されていた。


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