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世界ツアー
異変
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ニューヨークのタイムズスクエアを見下ろすスタジオで、ニュースキャスターの声が響いた。
「今、世界中で躍進しているボーイズグループ『SPIRIT』。K-POPではなく、珍しくJ-POP出身の彼らですが、女性ファンが圧倒的に多いK-POP勢に比べて、ワイルドな見た目の彼らには熱狂的な男性ファンも多くついています。そんなSPIRITは今回、初の世界ツアーを行うことになりました。彼らは良い意味で『コア』なファンが多く、チケットは即席完売になったようです。これからの躍進に大いに期待です」
キャスターの言葉通り、世界ツアーの幕開けとなる東京ドームは、異様な熱気に包まれていた。
ステージ裏から漏れ聞こえる地鳴りのような歓声。5人のメンバーは、広大なドームの客席を見渡す位置に立っていた。
「やっと……やっとここまで来たね!!」
一番年下のソラネが、興奮を抑えきれずにその場ではしゃいだ。キラキラと輝く瞳で客席のペンライトの海を見つめている。
リーダーのT-レイもまた、震える手でマイクを握りしめ、まさか自分たちが本当にこの場所に立てるとは思えなかった。
レイはグループのリーダーであると同時に、彼らが身にまとう独特な衣装のデザイン、そして楽曲の作詞作曲までを手掛ける実質的なプロデューサーでもある。彼が寝る間も惜しんで作り上げた世界観が、今、5万人の観衆に受け入れられようとしているのだ。
「レイ、何泣きそうになってんだよ。まだ始まってないぜ」
ラップ担当のSA-RAが、レイの肩を強めに叩いた。
「痛いな。泣いてないよ。……ただ、この景色を僕たちが作ったんだって思うとさ」
「またレイの『プロデューサーモード』が入ったな。ほら、円陣組むぞ!」
そう声をかけたのは、メインボーカルのカイだ。ダンス担当のレンもニカッと笑ってレイの背中を支える。
「僕たちの音楽、世界にぶちかましてやろうぜ!」
5人は固く手を重ね合い、ステージへと飛び出した。
歌声、ダンス、そしてPがこだわった演出。すべてが完璧に噛み合い、東京ドーム公演は伝説的な大成功を収めたのだった。
それから数日後。
世界ツアーの準備期間の合間を縫って、レイはSA-RAと共にスーパーマーケットに来ていた。ツアー中の自炊用食材や日用品を買い込むためだ。
カートを押しながら陳列棚を眺めていたPは、ふと天井を見上げて眉をひそめた。
「なんかこのスーパー、すごいな」
「ん? 何が?」
豚肉のパックを手に取っていたSA-RAが不思議そうに振り返る。レイは眩しそうに目を細めて天井を指さした。
「いや、こんなに紫の照明をクラブみたいに発光させてて珍しいねって。野菜売り場なのにムーディーすぎない?」
レイの言葉に、SA-RAはきょとんとした顔で天井を見上げ、それからPの顔をまじまじと見た。
「ん? なんのこと」
「え? だって紫の照明が、そこら中で点滅してるじゃん」
「いや? ないよ? 普通の蛍光灯じゃん」
SA-RAの声は真剣だった。冗談を言っているようには見えない。
レイはもう一度周囲を見渡した。視界の端で、紫色の光が激しく明滅している。まるでライブハウスのストロボのように。しかし、通り過ぎる他の客も、店員も、誰も気にしていない。
(自分にだけ、見えている……?)
背筋に冷たいものが走った。連日の激務とプレッシャーのせいだろうか。しかし、光はあまりにもリアルで、レイの視界を侵食してくる。
不安に耐え切れなくなったレイは、後日、マネージャーにも内緒で一人、心療内科を受診することにした。
診察室の静けさが、ドームの歓声とは対照的に耳に痛かった。
いくつかの検査と問診を終え、医師が重い口を開く。
「レイさん貴方統合失調症の初期症状です」
「今、世界中で躍進しているボーイズグループ『SPIRIT』。K-POPではなく、珍しくJ-POP出身の彼らですが、女性ファンが圧倒的に多いK-POP勢に比べて、ワイルドな見た目の彼らには熱狂的な男性ファンも多くついています。そんなSPIRITは今回、初の世界ツアーを行うことになりました。彼らは良い意味で『コア』なファンが多く、チケットは即席完売になったようです。これからの躍進に大いに期待です」
キャスターの言葉通り、世界ツアーの幕開けとなる東京ドームは、異様な熱気に包まれていた。
ステージ裏から漏れ聞こえる地鳴りのような歓声。5人のメンバーは、広大なドームの客席を見渡す位置に立っていた。
「やっと……やっとここまで来たね!!」
一番年下のソラネが、興奮を抑えきれずにその場ではしゃいだ。キラキラと輝く瞳で客席のペンライトの海を見つめている。
リーダーのT-レイもまた、震える手でマイクを握りしめ、まさか自分たちが本当にこの場所に立てるとは思えなかった。
レイはグループのリーダーであると同時に、彼らが身にまとう独特な衣装のデザイン、そして楽曲の作詞作曲までを手掛ける実質的なプロデューサーでもある。彼が寝る間も惜しんで作り上げた世界観が、今、5万人の観衆に受け入れられようとしているのだ。
「レイ、何泣きそうになってんだよ。まだ始まってないぜ」
ラップ担当のSA-RAが、レイの肩を強めに叩いた。
「痛いな。泣いてないよ。……ただ、この景色を僕たちが作ったんだって思うとさ」
「またレイの『プロデューサーモード』が入ったな。ほら、円陣組むぞ!」
そう声をかけたのは、メインボーカルのカイだ。ダンス担当のレンもニカッと笑ってレイの背中を支える。
「僕たちの音楽、世界にぶちかましてやろうぜ!」
5人は固く手を重ね合い、ステージへと飛び出した。
歌声、ダンス、そしてPがこだわった演出。すべてが完璧に噛み合い、東京ドーム公演は伝説的な大成功を収めたのだった。
それから数日後。
世界ツアーの準備期間の合間を縫って、レイはSA-RAと共にスーパーマーケットに来ていた。ツアー中の自炊用食材や日用品を買い込むためだ。
カートを押しながら陳列棚を眺めていたPは、ふと天井を見上げて眉をひそめた。
「なんかこのスーパー、すごいな」
「ん? 何が?」
豚肉のパックを手に取っていたSA-RAが不思議そうに振り返る。レイは眩しそうに目を細めて天井を指さした。
「いや、こんなに紫の照明をクラブみたいに発光させてて珍しいねって。野菜売り場なのにムーディーすぎない?」
レイの言葉に、SA-RAはきょとんとした顔で天井を見上げ、それからPの顔をまじまじと見た。
「ん? なんのこと」
「え? だって紫の照明が、そこら中で点滅してるじゃん」
「いや? ないよ? 普通の蛍光灯じゃん」
SA-RAの声は真剣だった。冗談を言っているようには見えない。
レイはもう一度周囲を見渡した。視界の端で、紫色の光が激しく明滅している。まるでライブハウスのストロボのように。しかし、通り過ぎる他の客も、店員も、誰も気にしていない。
(自分にだけ、見えている……?)
背筋に冷たいものが走った。連日の激務とプレッシャーのせいだろうか。しかし、光はあまりにもリアルで、レイの視界を侵食してくる。
不安に耐え切れなくなったレイは、後日、マネージャーにも内緒で一人、心療内科を受診することにした。
診察室の静けさが、ドームの歓声とは対照的に耳に痛かった。
いくつかの検査と問診を終え、医師が重い口を開く。
「レイさん貴方統合失調症の初期症状です」
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