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26 一方的な死闘
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村の外に駆け出したリラは自らの危険も顧みず魔物の巣食う草原を走った。
必死に、最新の注意を払って注意深く周囲に耳を傾ける。
すると村から幾分か離れた所で僅かな振動を感じた。
「………! こっち!」
手がかりを捉えたリラは確かな確信を持って振動と音のする方角へと再び駆け出した。
どれだけ走ったのだろうか。時間にすればものの数分かもしれない。しかし、走り続けている間に響き渡るいくつもの轟音は時間を永遠に感じさせるのには十分だった。
——足が痛い。
——もう走るのをやめてしまおうか。
——だって、もう、きっと——。
いや。
「ッ! ううん、そんなことない!リンさんはきっとぶじよ!」
頬を叩いて暗い気持ちを吹き飛ばす。
「あの時リンさんはわたしをたすけてくれたんだもん…! だから次はわたしがたすけなきゃ…!!」
そう考えると不思議と活力が漲ってきていた。いつの間にか疲れも感じなくなっていた。そのお陰かリラの走る速度はどんどん上がってきていた。
もう目的の場所は近いはず。音がまるで直ぐそばで響いているような轟音がその証拠だ。
リラはもう考えることをやめていた。今はたった一つの目的を果たすため、ひたすら足を動かした。
「っはぁッ、はぁッ…! くっ…、つぅ…!」
肩を抑えて呼吸を落ち着かせ眼前の悪夢を体現したかのような怪物を見据える。
赤い巨人には目立った外傷はないが、所々拳型の擦り傷や打撲の跡が見受けられる。
「クソッ! 化け物め…!」
「オレノナマエハバケモノジャナイ」
「っち、うるせぇ馬鹿野郎!!」
「オレノナマエハバカヤロウジャナイ」
「だぁーもう!! なんなんだお前は!?」
「オレハクリムゾン、トヨバレテイル」
「誰にだよ!?」
「オレノアルジダ」
「主ぃ?」
「ソウダ」
「その主って誰だよ?」
「ソレハイエナイ」
「あ~あ~あ~、そうですかッ!」
素早く背後に回り全力の拳を後頭部に叩きつける。が。
「ヨワイナ」
「!? ごぁっ」
軽く薙いだ右腕に強打され吹っ飛ばされる。
殴られた筈のクリムゾンはあいもかわらず平然としていた。
「クソッ! てめぇそのレベル反則だろうが!!」
「ソレハオレノセリフダ。ナゼオレノコウゲキヲウケテタッテイラレル? オカシイ」
「んなもん根性に決まっているだろうが!!」
文句を言いながら改めてクリムゾンのステータスを確認した。
名前 クリムゾン(インフェルノギカンテス)
LV 197
性別 オス
攻 1209
守 578
「完全にブッ壊れだろうが!!」
「オマエノホウガオカシイ。ナンデソンナニツルツルシテイル? ソンナスキルハシラナイ」
「敵に教えるわけねぇだろ!」
「ム、ソレモソウカ」
俺が目の前にいるのにその場でポンッと手を打つクリムゾン。
(あ~マジでやりづれぇ…本当になんなんだよこいつ…)
正直これ以上戦いたくないというのが本音だ。しかし。
「ぐっ…うぉっと!」
「コンドハヨケタカ。ナカナカヤル」
「それはどうも…ありがとうッ!!」
俺は相手の脛に足を刈り取るつもりで下段蹴りを繰り出した。
バギィッ!
強烈な音を立てて技が決まる。だが。
「マダマダ」
「! うがっ!?」
クリムゾンは無造作に足を振り払う。それだけで俺はほとんどなす術なく再び吹っ飛ばされた。俺は背後の木に思い切り背中を叩きつけられて蹲る。
「~~~ッ、いってぇ……!」
殆ど満身創痍の全身を労わるようにさする。
「ヨシ。ソロソロオワラセヨウ」
「あ?」
「コレカラオレハオモイキリオマエヲナグル。タエタラオマエノカチ、シンダラオレノカチダ」
「は?は?おい、ちょっと待てよ! そんなん絶対死ぬだろうが!!」
「マタナイ」
「おい嘘だろざけんな!」
悪態をついている間にクリムゾンは得物を掴みその巨体に似合わぬスピードで殴りかかってきた!
「くっそぉ! 絶対死んでたまるか——あ?」
その時。俺は致命的なミスをした。命の危険が迫る中、絶対に余所見なんてしてはならない状況で、俺は、こちらに向かってくる小さな女の子に気を取られてしまった。
「ッリンさん逃げてぇっ!!」
「あ——」
刹那骨の砕ける音が聞こえる。血管が切れていく。皮膚が裂けていく。音は聞こえるが痛みはない。
そんな音を聞いた後強烈な睡魔に襲われた。どうやら抵抗は無駄らしい。
抵抗虚しく下ろされる瞼が完全に閉じる頃、俺の脳裏には涙を流してこちらに駆け寄ってくるリラの姿が妙に印象に残っていた。
「リンさぁああぁぁぁん!!!」
必死に、最新の注意を払って注意深く周囲に耳を傾ける。
すると村から幾分か離れた所で僅かな振動を感じた。
「………! こっち!」
手がかりを捉えたリラは確かな確信を持って振動と音のする方角へと再び駆け出した。
どれだけ走ったのだろうか。時間にすればものの数分かもしれない。しかし、走り続けている間に響き渡るいくつもの轟音は時間を永遠に感じさせるのには十分だった。
——足が痛い。
——もう走るのをやめてしまおうか。
——だって、もう、きっと——。
いや。
「ッ! ううん、そんなことない!リンさんはきっとぶじよ!」
頬を叩いて暗い気持ちを吹き飛ばす。
「あの時リンさんはわたしをたすけてくれたんだもん…! だから次はわたしがたすけなきゃ…!!」
そう考えると不思議と活力が漲ってきていた。いつの間にか疲れも感じなくなっていた。そのお陰かリラの走る速度はどんどん上がってきていた。
もう目的の場所は近いはず。音がまるで直ぐそばで響いているような轟音がその証拠だ。
リラはもう考えることをやめていた。今はたった一つの目的を果たすため、ひたすら足を動かした。
「っはぁッ、はぁッ…! くっ…、つぅ…!」
肩を抑えて呼吸を落ち着かせ眼前の悪夢を体現したかのような怪物を見据える。
赤い巨人には目立った外傷はないが、所々拳型の擦り傷や打撲の跡が見受けられる。
「クソッ! 化け物め…!」
「オレノナマエハバケモノジャナイ」
「っち、うるせぇ馬鹿野郎!!」
「オレノナマエハバカヤロウジャナイ」
「だぁーもう!! なんなんだお前は!?」
「オレハクリムゾン、トヨバレテイル」
「誰にだよ!?」
「オレノアルジダ」
「主ぃ?」
「ソウダ」
「その主って誰だよ?」
「ソレハイエナイ」
「あ~あ~あ~、そうですかッ!」
素早く背後に回り全力の拳を後頭部に叩きつける。が。
「ヨワイナ」
「!? ごぁっ」
軽く薙いだ右腕に強打され吹っ飛ばされる。
殴られた筈のクリムゾンはあいもかわらず平然としていた。
「クソッ! てめぇそのレベル反則だろうが!!」
「ソレハオレノセリフダ。ナゼオレノコウゲキヲウケテタッテイラレル? オカシイ」
「んなもん根性に決まっているだろうが!!」
文句を言いながら改めてクリムゾンのステータスを確認した。
名前 クリムゾン(インフェルノギカンテス)
LV 197
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攻 1209
守 578
「完全にブッ壊れだろうが!!」
「オマエノホウガオカシイ。ナンデソンナニツルツルシテイル? ソンナスキルハシラナイ」
「敵に教えるわけねぇだろ!」
「ム、ソレモソウカ」
俺が目の前にいるのにその場でポンッと手を打つクリムゾン。
(あ~マジでやりづれぇ…本当になんなんだよこいつ…)
正直これ以上戦いたくないというのが本音だ。しかし。
「ぐっ…うぉっと!」
「コンドハヨケタカ。ナカナカヤル」
「それはどうも…ありがとうッ!!」
俺は相手の脛に足を刈り取るつもりで下段蹴りを繰り出した。
バギィッ!
強烈な音を立てて技が決まる。だが。
「マダマダ」
「! うがっ!?」
クリムゾンは無造作に足を振り払う。それだけで俺はほとんどなす術なく再び吹っ飛ばされた。俺は背後の木に思い切り背中を叩きつけられて蹲る。
「~~~ッ、いってぇ……!」
殆ど満身創痍の全身を労わるようにさする。
「ヨシ。ソロソロオワラセヨウ」
「あ?」
「コレカラオレハオモイキリオマエヲナグル。タエタラオマエノカチ、シンダラオレノカチダ」
「は?は?おい、ちょっと待てよ! そんなん絶対死ぬだろうが!!」
「マタナイ」
「おい嘘だろざけんな!」
悪態をついている間にクリムゾンは得物を掴みその巨体に似合わぬスピードで殴りかかってきた!
「くっそぉ! 絶対死んでたまるか——あ?」
その時。俺は致命的なミスをした。命の危険が迫る中、絶対に余所見なんてしてはならない状況で、俺は、こちらに向かってくる小さな女の子に気を取られてしまった。
「ッリンさん逃げてぇっ!!」
「あ——」
刹那骨の砕ける音が聞こえる。血管が切れていく。皮膚が裂けていく。音は聞こえるが痛みはない。
そんな音を聞いた後強烈な睡魔に襲われた。どうやら抵抗は無駄らしい。
抵抗虚しく下ろされる瞼が完全に閉じる頃、俺の脳裏には涙を流してこちらに駆け寄ってくるリラの姿が妙に印象に残っていた。
「リンさぁああぁぁぁん!!!」
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