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Ⅱ 貴族アルファが来る
③
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どう反応していいのか分からず膝を抱えた。ウルイの顔が、また熱くなる。変な汗が出て困ってしまった。
「ふはは。君、可愛いね」
彼の笑い声と『可愛い』などと言う言葉に、恥ずかしさがピークになった。
抱えた膝に顔を埋めるようにすると、ウルイのうなじを湿った何かが触れる。
「ひゃぁっ」
急な刺激に高い悲鳴がウルイの口から漏れた。
訳が分からず彼を見た。首後ろを手で押さえながら、ウルイの口がパクパク動いた。
何をするんだ、とか言おうとしたのに、混乱で言葉にならない。
「いや、ごめん。あ~~、俺、何やっているんだ。本当、ごめん。ちょっと君が美味しそうで味見を、じゃない、舐めてみたくて。じゃなくて」
彼が頭に手を当て、真っ赤になって言い訳をしている。ウルイは警戒して少し距離をとった。
彼は顔から汗が噴き出そうになっている。大きな彼がウルイの前で慌てているから、笑いがこみ上げた。
「……あはは」
ウルイにつられて彼が笑った。
「……ふはは」
「あはははは! 真っ赤じゃんか!」
「ふはは! 君こそアワアワしていた!」
よく分からないまま、草の上で転がり回って笑った。じゃれ合う犬のようだった。
ウルイはいつの間にか、彼の腕の中に抱きしめられていた。彼の逞しい胸筋に顔を埋める。
ウルイがすっぽり入ってしまう大きな身体だ。包み込まれる安心感がある。
「あ~~、笑ったぁ」
「僕も。人生でこんなに笑ったのは初めてだ」
ウルイの発言に彼が驚いた顔をした。至近距離で顔を覗き込まれる。
「笑うこと、あまりない?」
「無いよ。いつも貧しさに押しつぶされそうで、空腹に唇噛むしかなくて。ほら、こうしていて分かっただろ? 服だってしっかり洗えなくて臭い。風呂は三日に一回だ。生きていく苦しさに押しつぶされそうな日々だ。笑うことなんてないよ」
笑った後で、心のドアが自然と開いてしまったようだ。ウルイの本心が漏れ出た。
「今日だって何も食べていない。これから仕事なのにな。お兄さんは、こんな最下層の僕たちとは無縁な暮らしだろうな。そんな立派な野菜、食べていられるんだろ?」
先ほど持たされた袋に視線を向けた。なぜか彼が申し訳なさそうな顔をする。
「これ、馬の餌だよ。ごめん」
ウルイは目を見開いた。途端にウルイの心が苦しさで満ちてくる。馬の餌を羨ましく思っていたなんて。恥ずかしさで消えてしまいたくなる。
この人は貧乏とは無縁の人だ。下を向きウルイは立ち上がった。
パンパンと草を払い、ハンカチを返した。
「まって。ねぇ、待ってよ。ほら、一緒にご飯食べない? サンドイッチを持っているから」
「……いいです。僕のことは、もう構わないでください」
「いや、君の心を傷つけてごめんね。お詫びに一緒に食べてくれるかな?」
断ろうとしたのにウルイの腹が『グ~~』と盛大に鳴る。
「ほら、絶対食べた方が良いって」
彼がリュックから、綺麗に包まれたボックスを取り出した。ウルイの目の前で蓋を開ける。途端にウルイの目は釘付けになった。
はみ出すほどのハムと野菜、グリルチキンにたっぷりのトマトがパンに挟まっている。贅沢だ。ゴクリとウルイの喉が鳴る。
「まだ、時間はあるのかな?」
ウルイは豪華なサンドイッチを見たままコクリと頷いた。
「座って。好きなのをどうぞ。全部食べても良いよ」
彼の言葉に、迷いながらもウルイは腰をおろした。
「金、払えない」
「もちろん、お金なんていらないよ。一つ選んでくれる?」
彼の言葉に恐る恐るウルイはチキン野菜サンドを手にした。手に取ると、ズッシリとした重みに心がわくわくする。
「じゃ、俺はハムにしよう。俺たちの出会いに乾杯!」
ウルイは少し笑う。
「乾杯って食べ物じゃ、やらないんだよ。なんだよ、金持ちっぽいのに知らないのかよ。乾杯は酒でやるんだ」
仕事先で人々がグラスを掲げて乾杯するのをウルイは見ている。食べ物を掲げる人はいない。
こいつは大した金持ちでは無いのかも、とウルイは思った。
「そうか。そう言われればそうだな。無作法で申し訳ない」
照れたように彼が笑うから、ウルイの気持ちが凪いだ。
ウルイを蔑む人々と彼は違う。彼からは高圧的な感じがしない。彼を見れば、垂れ目の目尻が更に下がった。
「ふはは。君、可愛いね」
彼の笑い声と『可愛い』などと言う言葉に、恥ずかしさがピークになった。
抱えた膝に顔を埋めるようにすると、ウルイのうなじを湿った何かが触れる。
「ひゃぁっ」
急な刺激に高い悲鳴がウルイの口から漏れた。
訳が分からず彼を見た。首後ろを手で押さえながら、ウルイの口がパクパク動いた。
何をするんだ、とか言おうとしたのに、混乱で言葉にならない。
「いや、ごめん。あ~~、俺、何やっているんだ。本当、ごめん。ちょっと君が美味しそうで味見を、じゃない、舐めてみたくて。じゃなくて」
彼が頭に手を当て、真っ赤になって言い訳をしている。ウルイは警戒して少し距離をとった。
彼は顔から汗が噴き出そうになっている。大きな彼がウルイの前で慌てているから、笑いがこみ上げた。
「……あはは」
ウルイにつられて彼が笑った。
「……ふはは」
「あはははは! 真っ赤じゃんか!」
「ふはは! 君こそアワアワしていた!」
よく分からないまま、草の上で転がり回って笑った。じゃれ合う犬のようだった。
ウルイはいつの間にか、彼の腕の中に抱きしめられていた。彼の逞しい胸筋に顔を埋める。
ウルイがすっぽり入ってしまう大きな身体だ。包み込まれる安心感がある。
「あ~~、笑ったぁ」
「僕も。人生でこんなに笑ったのは初めてだ」
ウルイの発言に彼が驚いた顔をした。至近距離で顔を覗き込まれる。
「笑うこと、あまりない?」
「無いよ。いつも貧しさに押しつぶされそうで、空腹に唇噛むしかなくて。ほら、こうしていて分かっただろ? 服だってしっかり洗えなくて臭い。風呂は三日に一回だ。生きていく苦しさに押しつぶされそうな日々だ。笑うことなんてないよ」
笑った後で、心のドアが自然と開いてしまったようだ。ウルイの本心が漏れ出た。
「今日だって何も食べていない。これから仕事なのにな。お兄さんは、こんな最下層の僕たちとは無縁な暮らしだろうな。そんな立派な野菜、食べていられるんだろ?」
先ほど持たされた袋に視線を向けた。なぜか彼が申し訳なさそうな顔をする。
「これ、馬の餌だよ。ごめん」
ウルイは目を見開いた。途端にウルイの心が苦しさで満ちてくる。馬の餌を羨ましく思っていたなんて。恥ずかしさで消えてしまいたくなる。
この人は貧乏とは無縁の人だ。下を向きウルイは立ち上がった。
パンパンと草を払い、ハンカチを返した。
「まって。ねぇ、待ってよ。ほら、一緒にご飯食べない? サンドイッチを持っているから」
「……いいです。僕のことは、もう構わないでください」
「いや、君の心を傷つけてごめんね。お詫びに一緒に食べてくれるかな?」
断ろうとしたのにウルイの腹が『グ~~』と盛大に鳴る。
「ほら、絶対食べた方が良いって」
彼がリュックから、綺麗に包まれたボックスを取り出した。ウルイの目の前で蓋を開ける。途端にウルイの目は釘付けになった。
はみ出すほどのハムと野菜、グリルチキンにたっぷりのトマトがパンに挟まっている。贅沢だ。ゴクリとウルイの喉が鳴る。
「まだ、時間はあるのかな?」
ウルイは豪華なサンドイッチを見たままコクリと頷いた。
「座って。好きなのをどうぞ。全部食べても良いよ」
彼の言葉に、迷いながらもウルイは腰をおろした。
「金、払えない」
「もちろん、お金なんていらないよ。一つ選んでくれる?」
彼の言葉に恐る恐るウルイはチキン野菜サンドを手にした。手に取ると、ズッシリとした重みに心がわくわくする。
「じゃ、俺はハムにしよう。俺たちの出会いに乾杯!」
ウルイは少し笑う。
「乾杯って食べ物じゃ、やらないんだよ。なんだよ、金持ちっぽいのに知らないのかよ。乾杯は酒でやるんだ」
仕事先で人々がグラスを掲げて乾杯するのをウルイは見ている。食べ物を掲げる人はいない。
こいつは大した金持ちでは無いのかも、とウルイは思った。
「そうか。そう言われればそうだな。無作法で申し訳ない」
照れたように彼が笑うから、ウルイの気持ちが凪いだ。
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