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Ⅱ 貴族アルファが来る
⑥
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目が覚めるとウルイはフカフカのベッドの上だった。見たことも無い上質な部屋だ。
上体を起こすと額から濡れタオルが落ちる。
「ウルイ。起きた?」
傍には昨日の彼がいる。彼を見つめているとウルイの首筋をそっと触れてくる。
「熱は下がってきたかな。だけど下がりきっていないね。まだ無理しないほうが良い」
彼がウルイを布団の中に戻してくる。優しいその手をやんわり断った。
「何? ここ、どこ?」
「俺が泊っている宿だよ。もう、大丈夫だからね」
彼が悲しそうな顔をしてウルイを見てくる。何度も聞いた彼からの『怖かったね、もう大丈夫だよ』の言葉を思い出す。
意味が分からなくて彼に聞いた。
「大丈夫って何が?」
「いいよ。辛いことは考えなくていい。ウルイに怖いことをした奴らは絶対に見つけてやるから。安心していいよ」
「怖い事をした奴らって何?」
「え? ウルイ、襲われたんじゃないのか?」
「はい? 男の僕が?」
「え?」
彼と見つめ合って沈黙が流れた。突然、その場に彼が崩れ落ちる。
座り込んで、顔を手で覆い隠す彼を見守った。
「はぁ~~。良かったぁ。襲われたわけじゃないのか! 本当に良かったぁ。朝から裸で湖にいるし、服は急遽洗ったみたいだし、性的な暴行でも受けたのかと思って、心臓が怒りで止まるかと思った……」
彼の言葉にウルイは驚いた。
そう言われればウルイの行動は、隠れて事後の処理をしているように見えたかもしれない。
「あぁ、勘違いさせてごめんなさい! 襲われたとか無い、です。今日は、僕自身が単純に臭いかなって気になって洗っていたんだ」
「臭い? ウルイが?」
「うん。よく、言われるし」
恥ずかしくて小さな声で答える。すると彼に優しく抱きしめられた。ウルイの心臓が急に速くなる。
そのまま首の匂いを嗅がれて、ウルイの身体がビクリと震えた。
「ウルイは良い匂いだよ。今日は石鹸の香りもする。昨日はもっと魅力的なウルイの匂いだった。もちろん今日も魅力的だ。俺の心臓に突き刺さる素敵な匂いだ」
首後ろに顔を近づけて匂いを嗅がれる刺激に、ウルイの全身がビクビク反応する。変な気分になりそうで、首後ろを手で覆って隠した。
「そんなこと言うの、あんたくらいだ。あ、そうだ。名前は何?」
「ライ・ドラール。ライって呼んで」
「ライ」
呼んでと言われて、意味もなくウルイがライの名を呼んだ。
するとライが抱き締める腕の力を強くしてきた。密着すると、ライが嬉しそうに笑ったのが呼吸で分かる。
「ウルイ、なに?」
ウルイの耳元で低い声が響いた。背筋がゾクリとして、ウルイの心臓がバクバク鳴り出す。
「……耳元、やめろよ」
「ん? 嫌だった? ごめんね」
ワザとウルイの耳元で謝ってくる。ウルイは耳を手で覆い、火照った顔でライを睨んだ。
「あははは。可愛いな。ね、どうして早朝の寒い時間に水浴びしていたの?」
「いや、だって……。僕が臭いと、嫌かなって思ったから。見られるとは思っていなかったし」
「そうか。だけど、ウルイは砂漠の民だろう? 寒い時間の水浴びは命に関わる行動だって分かっているよね? 現に今だって熱が出ている」
分かり切っていることを言われて、ウルイはムッとする。それでも清潔にしたかったからじゃないか。
「俺がたまたま見つけたから良かったけれど、危ない行動はしないでくれ。気候だけじゃない。人さらいとか危険な人に会うことだって考えて欲しい。俺の心臓が止まりそうになったよ」
お説教かと思っていたのに、ライはウルイをポンポンと撫でる。優しい動きに拍子抜けをして、ライを見上げた。
「怒るんじゃないのか?」
「怒らないよ。心配しただけだ」
その言葉にウルイの心が温かくなる。ライの優しさにウルイの気持ちがホロリと零れる。
「嫌われたく、なかったから。ライが『また会おう』って言ってくれたし。街の誰も僕と仲良くしないのに、初めてライが普通に話してくれて、嬉しかったんだ」
ウルイは本当の心を話してみた。何故か恥ずかしくて、小さなボソボソした声になってしまった。
ライは「そうか。俺のため、か。ありがとう」と言い、またウルイの首後ろを嗅いできた。
そうして抱き締められているうちに、ウルイはまた眠ってしまった。
上体を起こすと額から濡れタオルが落ちる。
「ウルイ。起きた?」
傍には昨日の彼がいる。彼を見つめているとウルイの首筋をそっと触れてくる。
「熱は下がってきたかな。だけど下がりきっていないね。まだ無理しないほうが良い」
彼がウルイを布団の中に戻してくる。優しいその手をやんわり断った。
「何? ここ、どこ?」
「俺が泊っている宿だよ。もう、大丈夫だからね」
彼が悲しそうな顔をしてウルイを見てくる。何度も聞いた彼からの『怖かったね、もう大丈夫だよ』の言葉を思い出す。
意味が分からなくて彼に聞いた。
「大丈夫って何が?」
「いいよ。辛いことは考えなくていい。ウルイに怖いことをした奴らは絶対に見つけてやるから。安心していいよ」
「怖い事をした奴らって何?」
「え? ウルイ、襲われたんじゃないのか?」
「はい? 男の僕が?」
「え?」
彼と見つめ合って沈黙が流れた。突然、その場に彼が崩れ落ちる。
座り込んで、顔を手で覆い隠す彼を見守った。
「はぁ~~。良かったぁ。襲われたわけじゃないのか! 本当に良かったぁ。朝から裸で湖にいるし、服は急遽洗ったみたいだし、性的な暴行でも受けたのかと思って、心臓が怒りで止まるかと思った……」
彼の言葉にウルイは驚いた。
そう言われればウルイの行動は、隠れて事後の処理をしているように見えたかもしれない。
「あぁ、勘違いさせてごめんなさい! 襲われたとか無い、です。今日は、僕自身が単純に臭いかなって気になって洗っていたんだ」
「臭い? ウルイが?」
「うん。よく、言われるし」
恥ずかしくて小さな声で答える。すると彼に優しく抱きしめられた。ウルイの心臓が急に速くなる。
そのまま首の匂いを嗅がれて、ウルイの身体がビクリと震えた。
「ウルイは良い匂いだよ。今日は石鹸の香りもする。昨日はもっと魅力的なウルイの匂いだった。もちろん今日も魅力的だ。俺の心臓に突き刺さる素敵な匂いだ」
首後ろに顔を近づけて匂いを嗅がれる刺激に、ウルイの全身がビクビク反応する。変な気分になりそうで、首後ろを手で覆って隠した。
「そんなこと言うの、あんたくらいだ。あ、そうだ。名前は何?」
「ライ・ドラール。ライって呼んで」
「ライ」
呼んでと言われて、意味もなくウルイがライの名を呼んだ。
するとライが抱き締める腕の力を強くしてきた。密着すると、ライが嬉しそうに笑ったのが呼吸で分かる。
「ウルイ、なに?」
ウルイの耳元で低い声が響いた。背筋がゾクリとして、ウルイの心臓がバクバク鳴り出す。
「……耳元、やめろよ」
「ん? 嫌だった? ごめんね」
ワザとウルイの耳元で謝ってくる。ウルイは耳を手で覆い、火照った顔でライを睨んだ。
「あははは。可愛いな。ね、どうして早朝の寒い時間に水浴びしていたの?」
「いや、だって……。僕が臭いと、嫌かなって思ったから。見られるとは思っていなかったし」
「そうか。だけど、ウルイは砂漠の民だろう? 寒い時間の水浴びは命に関わる行動だって分かっているよね? 現に今だって熱が出ている」
分かり切っていることを言われて、ウルイはムッとする。それでも清潔にしたかったからじゃないか。
「俺がたまたま見つけたから良かったけれど、危ない行動はしないでくれ。気候だけじゃない。人さらいとか危険な人に会うことだって考えて欲しい。俺の心臓が止まりそうになったよ」
お説教かと思っていたのに、ライはウルイをポンポンと撫でる。優しい動きに拍子抜けをして、ライを見上げた。
「怒るんじゃないのか?」
「怒らないよ。心配しただけだ」
その言葉にウルイの心が温かくなる。ライの優しさにウルイの気持ちがホロリと零れる。
「嫌われたく、なかったから。ライが『また会おう』って言ってくれたし。街の誰も僕と仲良くしないのに、初めてライが普通に話してくれて、嬉しかったんだ」
ウルイは本当の心を話してみた。何故か恥ずかしくて、小さなボソボソした声になってしまった。
ライは「そうか。俺のため、か。ありがとう」と言い、またウルイの首後ろを嗅いできた。
そうして抱き締められているうちに、ウルイはまた眠ってしまった。
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