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Ⅲ アルファの番は誰?
①
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楽しい街中探検ごっこをして五日が過ぎ、ライが王都に戻っていった。
ライとの時間は夢の様な時間だった。
『水色キッチン』で食器を洗いながら、ウルイは思い出し笑いをした。
「おい、ウルイ。洗い物溜まってきているぞ。少しペース上げて」
キッチンスタッフから声がかかり、ウルイは背筋をビクリと伸ばす。
「はい! すみません!」
夢の時間は終わったのに思い出に浸ってしまった。ウルイは目の前の現実を見つめなくてはいけないのに。
ウルイは、ズキズキする心を持て余して溜め息をついた。自然と手が首後ろに伸びる。
最近、癖になった首後ろを触ること。薄っすらと噛み跡が触れる。
それに触れるたびにウルイはライを思い出す。鼻の奥がツンとするような感情が生まれる。
それらを全て心に隠して、ウルイは目の前の作業に向かう。
「とうとう明日だって。貴族アルファ様がこの田舎オアシスにいらっしゃるって!」
閉店後の片付け中にホールからスタッフの声が聞こえた。片付けのペースを落として、その声に聞き入った。
「国防軍情報局のトップ層にいる超エリート貴族だって! 機械工学が得意なアルファ様らしいよ」
「マジでアルファ様か。このオアシスにアルファ様が来るのは初じゃね?」
「そうなのよ。二十二歳の独身男性だって。番なし。絶対にオメガ様になるって街中の女性が息まいているわよ」
「とか言って、お前も狙っているんだろ。明日から休みだよな? アルファ追っかけするつもりだな?」
「うるさいわね! 夢見たって良いじゃないの!」
お前じゃ無理、無理~~、と笑い声が響く。
ウルイは心臓が高鳴っていた。アルファ様が来るのなら、付き人でライが来るかもしれない。
ライに会えるかも、と期待が生じて胸がドキドキする。
ライの包み込むような優しさを思い出し、ウルイの心が温まった。
(今頃、ライは何をしているのかな)
ライの事を考えると手が止まってしまう。最近よくある現象だ。
いけない、と自分を戒めて、ウルイは閉店後の処理に集中した。
「お疲れ様です」
残っている店員に声をかけて、ウルイは裏口から外に出た。すでに外照明は消えていて裏口通りは闇だ。
「ウルイ」
声を聞いてウルイの全身がビクっと震える。ウルイは動きを止めた。聞きたいと思っていた声がした。まさか、と思いながらも、会いに来てくれた、と喜ぶ自分がいる。
優しくウルイを包んでくれる温かさを思い出すと、目の奥がジンとする。聞き間違えるはずがない。
高鳴る心のままに、暗闇に立つ大男にウルイは抱きついた。
「ライ!」
「あぁ、ウルイ。会いたかった」
「ライ! 本物のライだ!」
喜びのままにウルイは逞しい身体にしがみ付いた。ライも優しく抱き返してくれる。
密着するライから嬉しそうに笑う振動が伝わってくる。ウルイの心がジンと熱くなった。
「ライ、本物? どうしたの? 明日のアルファ様の付き人? 下見?」
興奮してしまい、色々な質問が口から飛び出した。
「うん。そんなところ。明日が待てなくて、ウルイに会いたくて、先にオアシスに入ってしまった」
逞しい腕の中でウルイは笑う。ライの匂いを吸いこむと、ウルイの心がホワリと満たされる。
「それ、ダメじゃないのか? 怒られるぞ?」
「だろうな。見つかったら小言を言われそうだ」
「ライ、馬鹿だな。雇い主のご機嫌損ねるなんて。ちゃんと謝らないとクビになるぞ?」
「あはは。そうだよな。クビになったら困るな」
真剣に教えてあげたのに、ライは何故か可笑しそうに笑う。目尻に涙まで浮かべていて、少し腹が立つ反応だ。
「なんだよ。ライが困らないように教えてやったのに」
少しイラついてライから離れた。
「いや、分かっているよ。ゴメン。これまで俺にそんな風に言ってくれる人が居なかったから、嬉しくて新鮮で。やっぱりウルイは最高だ」
「なにが最高なのか分からないけれど、ライはもう少しちゃんとしないと生きていけないぞ?」
忠告したのに「さすがウルイだ! そうこなくっちゃ!」とライが笑う。
そんなライを見ていると、先ほどまでは『もうライと会えないかも』と沈んでいた自分がバカバカしくなった。
「笑っていろよ。僕は疲れているんだ」
ウルイは自宅に向けて歩き始めた。
「そうだった。仕事お疲れ様。夜道は危ないし送るよ」
すぐにライが隣に並んでくる。
「バカだな、ライ。毎日閉店してから帰っているから平気だよ。いつもの道だ」
「俺が送りたいの。せっかく会えたし、ウルイとの時間を大切にしたい」
口をとがらせるライが面白くて二人で笑った。
ライに会えただけでウルイの心が鳥のように舞い上がっている。嬉しくて頬が緩みっぱなしだ。
ライとの時間は夢の様な時間だった。
『水色キッチン』で食器を洗いながら、ウルイは思い出し笑いをした。
「おい、ウルイ。洗い物溜まってきているぞ。少しペース上げて」
キッチンスタッフから声がかかり、ウルイは背筋をビクリと伸ばす。
「はい! すみません!」
夢の時間は終わったのに思い出に浸ってしまった。ウルイは目の前の現実を見つめなくてはいけないのに。
ウルイは、ズキズキする心を持て余して溜め息をついた。自然と手が首後ろに伸びる。
最近、癖になった首後ろを触ること。薄っすらと噛み跡が触れる。
それに触れるたびにウルイはライを思い出す。鼻の奥がツンとするような感情が生まれる。
それらを全て心に隠して、ウルイは目の前の作業に向かう。
「とうとう明日だって。貴族アルファ様がこの田舎オアシスにいらっしゃるって!」
閉店後の片付け中にホールからスタッフの声が聞こえた。片付けのペースを落として、その声に聞き入った。
「国防軍情報局のトップ層にいる超エリート貴族だって! 機械工学が得意なアルファ様らしいよ」
「マジでアルファ様か。このオアシスにアルファ様が来るのは初じゃね?」
「そうなのよ。二十二歳の独身男性だって。番なし。絶対にオメガ様になるって街中の女性が息まいているわよ」
「とか言って、お前も狙っているんだろ。明日から休みだよな? アルファ追っかけするつもりだな?」
「うるさいわね! 夢見たって良いじゃないの!」
お前じゃ無理、無理~~、と笑い声が響く。
ウルイは心臓が高鳴っていた。アルファ様が来るのなら、付き人でライが来るかもしれない。
ライに会えるかも、と期待が生じて胸がドキドキする。
ライの包み込むような優しさを思い出し、ウルイの心が温まった。
(今頃、ライは何をしているのかな)
ライの事を考えると手が止まってしまう。最近よくある現象だ。
いけない、と自分を戒めて、ウルイは閉店後の処理に集中した。
「お疲れ様です」
残っている店員に声をかけて、ウルイは裏口から外に出た。すでに外照明は消えていて裏口通りは闇だ。
「ウルイ」
声を聞いてウルイの全身がビクっと震える。ウルイは動きを止めた。聞きたいと思っていた声がした。まさか、と思いながらも、会いに来てくれた、と喜ぶ自分がいる。
優しくウルイを包んでくれる温かさを思い出すと、目の奥がジンとする。聞き間違えるはずがない。
高鳴る心のままに、暗闇に立つ大男にウルイは抱きついた。
「ライ!」
「あぁ、ウルイ。会いたかった」
「ライ! 本物のライだ!」
喜びのままにウルイは逞しい身体にしがみ付いた。ライも優しく抱き返してくれる。
密着するライから嬉しそうに笑う振動が伝わってくる。ウルイの心がジンと熱くなった。
「ライ、本物? どうしたの? 明日のアルファ様の付き人? 下見?」
興奮してしまい、色々な質問が口から飛び出した。
「うん。そんなところ。明日が待てなくて、ウルイに会いたくて、先にオアシスに入ってしまった」
逞しい腕の中でウルイは笑う。ライの匂いを吸いこむと、ウルイの心がホワリと満たされる。
「それ、ダメじゃないのか? 怒られるぞ?」
「だろうな。見つかったら小言を言われそうだ」
「ライ、馬鹿だな。雇い主のご機嫌損ねるなんて。ちゃんと謝らないとクビになるぞ?」
「あはは。そうだよな。クビになったら困るな」
真剣に教えてあげたのに、ライは何故か可笑しそうに笑う。目尻に涙まで浮かべていて、少し腹が立つ反応だ。
「なんだよ。ライが困らないように教えてやったのに」
少しイラついてライから離れた。
「いや、分かっているよ。ゴメン。これまで俺にそんな風に言ってくれる人が居なかったから、嬉しくて新鮮で。やっぱりウルイは最高だ」
「なにが最高なのか分からないけれど、ライはもう少しちゃんとしないと生きていけないぞ?」
忠告したのに「さすがウルイだ! そうこなくっちゃ!」とライが笑う。
そんなライを見ていると、先ほどまでは『もうライと会えないかも』と沈んでいた自分がバカバカしくなった。
「笑っていろよ。僕は疲れているんだ」
ウルイは自宅に向けて歩き始めた。
「そうだった。仕事お疲れ様。夜道は危ないし送るよ」
すぐにライが隣に並んでくる。
「バカだな、ライ。毎日閉店してから帰っているから平気だよ。いつもの道だ」
「俺が送りたいの。せっかく会えたし、ウルイとの時間を大切にしたい」
口をとがらせるライが面白くて二人で笑った。
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