発情期アルファ貴族にオメガの導きをどうぞ

小池 月

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Ⅲ アルファの番は誰?

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「ここでいいよ。あの三軒のボロ屋が僕の住む集落。見て分かるだろ? 貧乏暮らしが。ほら、ここから見ると砂漠の暗闇にオアシスが明るく浮き上がって見える。幸福という光に満たされたオアシスだ。そしてこっちを向けば、僕たちの住む暗闇の小屋。携帯ランタンだけで、暗闇に溶け込むように暮らしている、惨めな存在」

 説明しながらウルイは溜息をついた。ここまでライを連れてくるつもりは無かった。

 けれど、ライとの時間が惜しくて、つい集落間近まで来てしまった。貧しさを見せたくなかったのに。

 少し落ち込んだウルイの肩をライが優しく抱きしめた。

「ウルイ、ここは君たちが必死で生きている大切な場所だ。ほら、生きるための工夫が見える。畑があって獣除けも。ここで生きる人を護りたいって思いが見えるよ。ウルイだって家族のために働きに出ているじゃないか。互いが思いやって生きている、誇らしい所だね」

 ライの言葉が優しくウルイに染み込んでいく。

 貧しさは恥ずかしくて苦しいものだ、とウルイは思う。バカにされるものだと思っている。

 でも、ライは違う。集落の人たちの優しさを、支え合う心を見てくれる。ウルイの生き方を蔑まずに受け入れてくれる。

 喉元まで何かがこみ上げる。ウルイの目から熱い涙がこぼれた。胸が温かい。

「ライ、ありがとう」
「え? あれ? なんで、泣いているの? ちょっと、ウルイ?」

 ウルイの涙に気が付いて、ライがオロオロと慌てる。

「何でもないよ。これまでライのように言ってくれる人が居なくて、ライの言葉が嬉しかっただけ」
 素直にウルイの気持ちを伝えた。

「そっか。ほら、泣き止め~~」
 ライがウルイを自分のマントの中に閉じ込めてくる。
 大きなライに包み込まれて「温かい」とウルイは笑った。
 照れくさい様な、変な気持ちだった。
 ウルイの心臓がドキドキと存在を主張していた。

 オアシスと月が闇夜に煌いて綺麗だった。ライの温かい鼓動が心に焼き付く夜だった。




 その翌日。アルファ様ご一行がオアシスに訪れた。

 街中が騒ぎになっているけれど、ウルイは仕事が忙しくて、アルファ様を見ることすら出来なかった。

 ライには会えなかった。アルファ様の傍に居るのなら、ライは自由に動けないのだろう。

 昨日会えたのがライにとっての精一杯だったのだ。また会いたい、などとウルイが考えてはいけない。

 この視察が終わったら、ライがオアシスに来る用事はなくなる。もうウルイがライに会うことは無いだろう。

 洗い場で汚れ物に向かいながら、悲しみにウルイの心が押しつぶされそうになる。そんな苦しい気持ちを必死で自分の中に抑え込んだ。
 
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