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Ⅳ 王都での生活(前編)
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王都に戻った翌日からライは王城に勤めに出ている。
朝食後に家を出て夕食時か寝る時間直前に戻る。
朝から晩まで働いていて、ライの仕事が大変なのだと分かった。ライの仕事は『国防軍参謀』という軍のトップだ。
国防軍の中でも、国内外の情報収集分析をする部門を担当しているらしい。
光エネルギーを利用した探査機開発を任されている、と聞いた。
話が難しすぎてウルイには細かいところまでは理解できなかった。それでもライは、アルファとして国のために尽力する信念を持っていると分かった。
国と人のために働く事を誇りに思うライを、ウルイは凄いと思った。そして、ライを知るほどに、番相手がウルイで申し訳なくなった。
伯爵の爵位を与えられ、各所への挨拶や手続き、その辺もライが忙しい要因のようだ。
本来ならウルイが手伝えればいいのだろうが、ウルイには何もできない。ウルイは簡単な読み書き程度しかできないから。
毎日帰宅したライの休息を邪魔しないように、心配かけないようにするしか出来なかった。
だから、昼間に起きていることはウルイが一人で我慢するしかなかった。
伯爵家に来て二週間が過ぎた。ライを仕事に送り出した後から、ウルイの『教育』が始まる。
「さあ、オメガ様。まずは挨拶から覚えていただきます。あなた様は番として社交界で挨拶することもあるでしょう。貴族の場合、相手の爵位が高い低いでお辞儀の角度が変わります。相手の爵位がライ様より高い時には相手の顔より低く、相手の爵位がライ様より低い時には相手の顔より下げずに行います。上体の角度が三十度以上あってはなりません。そのため足の角度が大切になります」
ウルイの教育係になった侍女のササラが早口で喋る。
ウルイは聞き逃さないように必死に頷いた。すると、ササラが大きくため息をついて言葉を止める。
「オメガ様はおバカ様ですか。貴族はそのように頷くだけの返事はしないと申したでしょう」
ウルイはハッとした。聞くことに精一杯になり忘れていた。
今日は失敗をしないようにと思っていたのに。コクコク頷くのは貴族では失礼に当たる、と教えられたばかりだ。
「も、申し訳、ありません」
ササラのご機嫌を損ねてしまっただろうか。怖くなって直ぐに謝る。
「人には立場がありますよね。私はあなたの教育係です。謝るのなら、誠心誠意の謝罪を教えたでしょう」
ササラと共に教育という名目で数名の侍女がいる。彼女たちから小さな笑いが聞こえてくる。
ウルイは床に膝をつき土下座をする。毎日強要されている謝罪の姿勢だ。
額をササラの靴近くの床につけてお決まりのセリフを吐く。
「僕が無教育な貧乏人ながら、図々しくもオメガとなったため、皆様にご負担をおかけして、申し訳ありません。本来ならば、僕は皆さまの足元にも及ばない、奴隷以下の存在です。ライ様のオメガになり申し訳ありません。どうか無知で汚い僕に教養を与えてください」
言い終わると侍女たちのクスクス笑いが大きくなった。平気なフリを装っていても恥ずかしくて逃げ出したい気持ちになった。
「そうですか。ですが、気持ちがこもっていませんね。やり直し。礼儀や謝罪は心が伴っていなくてはいけません。ま、あなたには分からないのかもしれませんが」
ササラの感情のない声が降ってくる。こうなるとササラが満足するまで繰り返さなくてはいけない。
「僕が無教育な貧乏人ながら、図々しくもオメガとなったため……」
土下座の姿勢のまま謝罪を繰り返した。何度も自分の事を汚い存在、奴隷以下と口にしていると、本当に自分がそうだ、と思えてくるから不思議だ。
最近は、全てにおいてウルイが悪い、と自分で納得している。ウルイにはこの屋敷以外に居場所が無いから、我慢するしかない。
(殴られているワケじゃない。まだ大丈夫だ)
そう自分に言い聞かせて日々を乗り越えている。
朝食後に家を出て夕食時か寝る時間直前に戻る。
朝から晩まで働いていて、ライの仕事が大変なのだと分かった。ライの仕事は『国防軍参謀』という軍のトップだ。
国防軍の中でも、国内外の情報収集分析をする部門を担当しているらしい。
光エネルギーを利用した探査機開発を任されている、と聞いた。
話が難しすぎてウルイには細かいところまでは理解できなかった。それでもライは、アルファとして国のために尽力する信念を持っていると分かった。
国と人のために働く事を誇りに思うライを、ウルイは凄いと思った。そして、ライを知るほどに、番相手がウルイで申し訳なくなった。
伯爵の爵位を与えられ、各所への挨拶や手続き、その辺もライが忙しい要因のようだ。
本来ならウルイが手伝えればいいのだろうが、ウルイには何もできない。ウルイは簡単な読み書き程度しかできないから。
毎日帰宅したライの休息を邪魔しないように、心配かけないようにするしか出来なかった。
だから、昼間に起きていることはウルイが一人で我慢するしかなかった。
伯爵家に来て二週間が過ぎた。ライを仕事に送り出した後から、ウルイの『教育』が始まる。
「さあ、オメガ様。まずは挨拶から覚えていただきます。あなた様は番として社交界で挨拶することもあるでしょう。貴族の場合、相手の爵位が高い低いでお辞儀の角度が変わります。相手の爵位がライ様より高い時には相手の顔より低く、相手の爵位がライ様より低い時には相手の顔より下げずに行います。上体の角度が三十度以上あってはなりません。そのため足の角度が大切になります」
ウルイの教育係になった侍女のササラが早口で喋る。
ウルイは聞き逃さないように必死に頷いた。すると、ササラが大きくため息をついて言葉を止める。
「オメガ様はおバカ様ですか。貴族はそのように頷くだけの返事はしないと申したでしょう」
ウルイはハッとした。聞くことに精一杯になり忘れていた。
今日は失敗をしないようにと思っていたのに。コクコク頷くのは貴族では失礼に当たる、と教えられたばかりだ。
「も、申し訳、ありません」
ササラのご機嫌を損ねてしまっただろうか。怖くなって直ぐに謝る。
「人には立場がありますよね。私はあなたの教育係です。謝るのなら、誠心誠意の謝罪を教えたでしょう」
ササラと共に教育という名目で数名の侍女がいる。彼女たちから小さな笑いが聞こえてくる。
ウルイは床に膝をつき土下座をする。毎日強要されている謝罪の姿勢だ。
額をササラの靴近くの床につけてお決まりのセリフを吐く。
「僕が無教育な貧乏人ながら、図々しくもオメガとなったため、皆様にご負担をおかけして、申し訳ありません。本来ならば、僕は皆さまの足元にも及ばない、奴隷以下の存在です。ライ様のオメガになり申し訳ありません。どうか無知で汚い僕に教養を与えてください」
言い終わると侍女たちのクスクス笑いが大きくなった。平気なフリを装っていても恥ずかしくて逃げ出したい気持ちになった。
「そうですか。ですが、気持ちがこもっていませんね。やり直し。礼儀や謝罪は心が伴っていなくてはいけません。ま、あなたには分からないのかもしれませんが」
ササラの感情のない声が降ってくる。こうなるとササラが満足するまで繰り返さなくてはいけない。
「僕が無教育な貧乏人ながら、図々しくもオメガとなったため……」
土下座の姿勢のまま謝罪を繰り返した。何度も自分の事を汚い存在、奴隷以下と口にしていると、本当に自分がそうだ、と思えてくるから不思議だ。
最近は、全てにおいてウルイが悪い、と自分で納得している。ウルイにはこの屋敷以外に居場所が無いから、我慢するしかない。
(殴られているワケじゃない。まだ大丈夫だ)
そう自分に言い聞かせて日々を乗り越えている。
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