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Ⅴ 王都での生活(後編)
④
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すっと姿勢を直したアウレンが、ウルイに対して微笑みを向けてくれる。
その様子から失敗しなかったのだと分かり安堵した。
優しそうなアウレンの雰囲気が嬉しくなり、ウルイもニコリと微笑みを返した。すると、アウレンが一瞬目を見開いて動きをとめた。
気を取り直したように微笑んでくれたが、アウレンの頬が紅かった。調子が悪いのか、とウルイは心配になった。
声をかけようとしたが、ライが視界を遮るように間に割り込んできた。
邪魔をされたような行動の意味が分からずウルイはライを見た。
ライは少し不機嫌そうな顔をしていた。ウルイの挨拶に失礼があったのだろうか。
どうしたのか聞きたかったが、聞けないうちに店員が案内を始めてしまった。歩きだすと急にライが肩に手を回してきた。
離れることが出来ない圧をライから感じた。怖いとか痛いほどではないけれど、ライの手に力が込められている。
密着して歩く意味が分からず、ウルイは首をかしげながら歩いた。これが高級店のマナーなのかもしれないと考えて、大人しくライに従った。
店の個室はアンティーク調ソファーに大理石のテーブルが置いてあり、貴族仕様だと思った。
ソファーに座るとすぐに紅茶と焼き菓子が用意される。出してもらったものは手を付けて良いのか、手を付けないほうが良いのか分からず、ライを見た。
ウルイの心を察してくれたようにライが「いただこうか」と声をかけてくれた。
「ライ伯爵様、こちらがご依頼いただきました品でございます。いかがでしょうか」
アウレンが布張りのトレーに乗せたものをライの前に置く。何だろうと気になりテーブルに置かれたトレーに注目した。
トレーには、黒い大きな粒がついたネックレスが一つあるだけ。ただの黒だ。
店内にはキラキラと光り輝く宝石ばかりなのに、それらと比べると、目の前にある宝石は地味だ。
この黒い丸玉のような石をライは好きなのだろうか。
「いや、想像以上だ。闇の様な黒が素晴らしい」
ライは満足そうに石に見入っている。
「そうでございましょう。海のないわが国では滅多に手に入らない最高級の黒真珠です。ライ伯爵様にご注文いただき、必死で隣国より入手いたしました。どうぞ、手に取ってご覧ください」
アウレンの言葉にライが「ありがとう」と述べてネックレスを手に取る。
ライがネックレスを持ち上げると黒い玉が照り輝いた。光を浴びると黒が深緑のように深く輝く。
その不思議な輝きにウルイは見惚れて、口を開けてしまった。こんな宝石見たことが無かった。
「ウルイ、真珠は初めて見る?」
「うん。僕は宝石そのものを近くで見ることも触れることも無かったから、凄いとしか言いようがないよ。すごく綺麗だ」
ライの手元の黒真珠を見つめたまま答えた。
「気に入ってくれたなら良かった。これはウルイの黒い瞳をイメージしたネックレスだよ。この黒に、俺は惹かれたから」
ライの視線を感じる。熱のこもった細い目がウルイを見つめている。ウルイの心がドキリとする。
急にウルイの頬が熱くなり手に汗が出てくる。息が上がりそうになり、誤魔化すようにライから目を逸らした。
「な、何を言っているんだよ。僕みたいな小汚い者にそんなこと、お世辞でも言うなよ」
「お世辞じゃないよ。ほら、輝きがそっくりだ」
ウルイの顎に大きな手が添えられる。優しい大きな手の動きに、ウルイの身体がビクリと反応する。急な接触には、なかなか慣れない。
ライの方にウルイの顔が向けられる。拒否できずにライを見つめた。ウルイの真横に黒真珠が掲げられる。
「美しい」
頬を染めて微笑むライが幸福そうで、ウルイは何も言えなかった。美しいのはライだと思った。
ライがとても神聖な、綺麗な存在に見えた。
その様子から失敗しなかったのだと分かり安堵した。
優しそうなアウレンの雰囲気が嬉しくなり、ウルイもニコリと微笑みを返した。すると、アウレンが一瞬目を見開いて動きをとめた。
気を取り直したように微笑んでくれたが、アウレンの頬が紅かった。調子が悪いのか、とウルイは心配になった。
声をかけようとしたが、ライが視界を遮るように間に割り込んできた。
邪魔をされたような行動の意味が分からずウルイはライを見た。
ライは少し不機嫌そうな顔をしていた。ウルイの挨拶に失礼があったのだろうか。
どうしたのか聞きたかったが、聞けないうちに店員が案内を始めてしまった。歩きだすと急にライが肩に手を回してきた。
離れることが出来ない圧をライから感じた。怖いとか痛いほどではないけれど、ライの手に力が込められている。
密着して歩く意味が分からず、ウルイは首をかしげながら歩いた。これが高級店のマナーなのかもしれないと考えて、大人しくライに従った。
店の個室はアンティーク調ソファーに大理石のテーブルが置いてあり、貴族仕様だと思った。
ソファーに座るとすぐに紅茶と焼き菓子が用意される。出してもらったものは手を付けて良いのか、手を付けないほうが良いのか分からず、ライを見た。
ウルイの心を察してくれたようにライが「いただこうか」と声をかけてくれた。
「ライ伯爵様、こちらがご依頼いただきました品でございます。いかがでしょうか」
アウレンが布張りのトレーに乗せたものをライの前に置く。何だろうと気になりテーブルに置かれたトレーに注目した。
トレーには、黒い大きな粒がついたネックレスが一つあるだけ。ただの黒だ。
店内にはキラキラと光り輝く宝石ばかりなのに、それらと比べると、目の前にある宝石は地味だ。
この黒い丸玉のような石をライは好きなのだろうか。
「いや、想像以上だ。闇の様な黒が素晴らしい」
ライは満足そうに石に見入っている。
「そうでございましょう。海のないわが国では滅多に手に入らない最高級の黒真珠です。ライ伯爵様にご注文いただき、必死で隣国より入手いたしました。どうぞ、手に取ってご覧ください」
アウレンの言葉にライが「ありがとう」と述べてネックレスを手に取る。
ライがネックレスを持ち上げると黒い玉が照り輝いた。光を浴びると黒が深緑のように深く輝く。
その不思議な輝きにウルイは見惚れて、口を開けてしまった。こんな宝石見たことが無かった。
「ウルイ、真珠は初めて見る?」
「うん。僕は宝石そのものを近くで見ることも触れることも無かったから、凄いとしか言いようがないよ。すごく綺麗だ」
ライの手元の黒真珠を見つめたまま答えた。
「気に入ってくれたなら良かった。これはウルイの黒い瞳をイメージしたネックレスだよ。この黒に、俺は惹かれたから」
ライの視線を感じる。熱のこもった細い目がウルイを見つめている。ウルイの心がドキリとする。
急にウルイの頬が熱くなり手に汗が出てくる。息が上がりそうになり、誤魔化すようにライから目を逸らした。
「な、何を言っているんだよ。僕みたいな小汚い者にそんなこと、お世辞でも言うなよ」
「お世辞じゃないよ。ほら、輝きがそっくりだ」
ウルイの顎に大きな手が添えられる。優しい大きな手の動きに、ウルイの身体がビクリと反応する。急な接触には、なかなか慣れない。
ライの方にウルイの顔が向けられる。拒否できずにライを見つめた。ウルイの真横に黒真珠が掲げられる。
「美しい」
頬を染めて微笑むライが幸福そうで、ウルイは何も言えなかった。美しいのはライだと思った。
ライがとても神聖な、綺麗な存在に見えた。
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