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Ⅴ 王都での生活(後編)
⑥
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「ウルイ、食べたいものはある? 黒真珠をプレゼントしたくて上流貴族ご用達の高級街に来たけれど、ここからは自由に行こうよ。市民街のほうには市場や露店の店が並ぶよ」
市場や露店と聞いてウルイの気持が動く。市場や露店はオアシスで馴染みがある。懐かしい雰囲気に触れたいと思う。
「僕は行ってみたいけど、いいの?」
「いいよ。じゃ、馬車で移動しよう」
乗って来た伯爵家の馬車に戻り、半刻ほど移動して馬車を降りた。
降りてみて雰囲気に驚いた。先ほどの煌びやかな街並みではなく、ざわざわと人々が行き交っている。
人々の様子から平民の街だとわかる。ウルイの想像通りでオアシスの雰囲気に似ている。
「わ、すっごく活気あるね」
人にぶつかりそうになりライを見上げた。
「ウルイ、気をつけて」
ライがそっと肩に手を回してくる。
守られている様でくすぐったい。少し嬉しいような気持ちになり顔が緩んでしまう。
その時、ウルイの鼻を独特な香りがかすめた。ウルイの脳がセンサーでキャッチしたかのように反応した。
「肉の匂いだ! 甘い匂いもする。な、露店の買い食いはしていいのか?」
「いいよ。金は俺が払うから、好きなのを食べていいよ」
「やった! この匂いは食べてみたいと思っていたステーキ串だ! 探すぞ。絶対に匂いの元まで行くからな!」
オアシスで眺めているだけだったステーキ串を食べられる、という期待で足が速くなる。
ライの腕を掴んで匂いを頼りに足を進めた。ライは「危ないよ」と言いながら、楽しそうに笑っていた。少し歩けば食品露店が並ぶ通りに出た。
「ほら! こっちだっただろ? さ、食べるぞ」
「あ、買ったら広場に行くのも良いよ。噴水公園のベンチで食べるのが恋人の流行りらしいよ」
恋人などとライが言うから、ウルイは思わずズッコケた。
「はぁ、恋人ね。ま、世間の恋人はそれが似合っているかもな」
ライに答えながら、(発情の性処理担当の僕に掛ける言葉かよ)と考えてしまう。
「だから、俺たちもそうしよう」
ライを見上げると嬉しそうに頬を染めている。出会った時の様な表情を今日は良く見る。
そう言えば、王都に来てからのライは感情の見えない表情を周囲に向けている。仕事が大変だから、ストレスが溜まっているのかもしれない。
「なぁ、王都の仕事って大変なのか?」
気になって聞いてみたのだが、思ったよりライが驚いた顔をする。
「どうして?」
ウルイが聞いたのに、逆に聞き返されてしまい返事に困る。
「いや、なんとなく、さ。僕には王都の事は分からないけれど、ライの顔がちょっと、さ」
「俺の顔? 初めて言われたかも。どう気になったのかウルイの感じたことを聞きたいな」
「えっと……、オアシスで会った時は、生き生きっていう感じの顔つきだった。王都に来てから毎日優しい顔だけど、違和感がある顔しているから。そう、作り物、みたいな感じの」
ライが細いたれ目を見開いてウルイを見てくる。
失礼なことを言ったのかもしれない。不安になって、ライから目線を外した。
「へぇ。ウルイは良く見てくれているなぁ。ちょっと聞いてくれるかな。俺は昔からアルファで違いないと言われていて、周囲の期待に添うように生きてきた。周囲もそれで喜んだからね。自分には華やかな道が開けていると思っていた。けれどね、通常十六歳過ぎに来るはずのアルファの発情期が来なくて。あ、露店街に着いたね。続きは食べ物買って公園で食べながら話そうかな」
中途半端な話の終わりで、先が気になって仕方がなかった。
市場や露店と聞いてウルイの気持が動く。市場や露店はオアシスで馴染みがある。懐かしい雰囲気に触れたいと思う。
「僕は行ってみたいけど、いいの?」
「いいよ。じゃ、馬車で移動しよう」
乗って来た伯爵家の馬車に戻り、半刻ほど移動して馬車を降りた。
降りてみて雰囲気に驚いた。先ほどの煌びやかな街並みではなく、ざわざわと人々が行き交っている。
人々の様子から平民の街だとわかる。ウルイの想像通りでオアシスの雰囲気に似ている。
「わ、すっごく活気あるね」
人にぶつかりそうになりライを見上げた。
「ウルイ、気をつけて」
ライがそっと肩に手を回してくる。
守られている様でくすぐったい。少し嬉しいような気持ちになり顔が緩んでしまう。
その時、ウルイの鼻を独特な香りがかすめた。ウルイの脳がセンサーでキャッチしたかのように反応した。
「肉の匂いだ! 甘い匂いもする。な、露店の買い食いはしていいのか?」
「いいよ。金は俺が払うから、好きなのを食べていいよ」
「やった! この匂いは食べてみたいと思っていたステーキ串だ! 探すぞ。絶対に匂いの元まで行くからな!」
オアシスで眺めているだけだったステーキ串を食べられる、という期待で足が速くなる。
ライの腕を掴んで匂いを頼りに足を進めた。ライは「危ないよ」と言いながら、楽しそうに笑っていた。少し歩けば食品露店が並ぶ通りに出た。
「ほら! こっちだっただろ? さ、食べるぞ」
「あ、買ったら広場に行くのも良いよ。噴水公園のベンチで食べるのが恋人の流行りらしいよ」
恋人などとライが言うから、ウルイは思わずズッコケた。
「はぁ、恋人ね。ま、世間の恋人はそれが似合っているかもな」
ライに答えながら、(発情の性処理担当の僕に掛ける言葉かよ)と考えてしまう。
「だから、俺たちもそうしよう」
ライを見上げると嬉しそうに頬を染めている。出会った時の様な表情を今日は良く見る。
そう言えば、王都に来てからのライは感情の見えない表情を周囲に向けている。仕事が大変だから、ストレスが溜まっているのかもしれない。
「なぁ、王都の仕事って大変なのか?」
気になって聞いてみたのだが、思ったよりライが驚いた顔をする。
「どうして?」
ウルイが聞いたのに、逆に聞き返されてしまい返事に困る。
「いや、なんとなく、さ。僕には王都の事は分からないけれど、ライの顔がちょっと、さ」
「俺の顔? 初めて言われたかも。どう気になったのかウルイの感じたことを聞きたいな」
「えっと……、オアシスで会った時は、生き生きっていう感じの顔つきだった。王都に来てから毎日優しい顔だけど、違和感がある顔しているから。そう、作り物、みたいな感じの」
ライが細いたれ目を見開いてウルイを見てくる。
失礼なことを言ったのかもしれない。不安になって、ライから目線を外した。
「へぇ。ウルイは良く見てくれているなぁ。ちょっと聞いてくれるかな。俺は昔からアルファで違いないと言われていて、周囲の期待に添うように生きてきた。周囲もそれで喜んだからね。自分には華やかな道が開けていると思っていた。けれどね、通常十六歳過ぎに来るはずのアルファの発情期が来なくて。あ、露店街に着いたね。続きは食べ物買って公園で食べながら話そうかな」
中途半端な話の終わりで、先が気になって仕方がなかった。
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